第十五話 魔王の行方
「うーむ、どうやら、魔王も騎士団長殿も未だ所在が不明のようだな」
ルーカスは目と目の間を揉むようにしながら言った。
「潜伏場所と思しき場所が聞き取れませんでしたね」
ブレンダが続ける。
「大おじさまらしからぬ雰囲気がありました。あんなに覇気のない瞳、、あの男は見たことがありませんし……」
オリビアは、玉座に座る男を知っていた。
かつての魔王候補の一人であり、現魔王の実の叔父だった。
「じゃあ、ちょっと魔王と騎士団長の行方を探ってみようかしらね〜」
マヤは再び水晶球に手をかざし目を見開いた。
水晶球には様々な目まぐるしく映像がうつっているのを集中して見ているようだ。
「水晶球というのは遠くのものが見えたり聞けたりするのですね?こんな魔法があるなんて知りませんでした」
オリビアがルーカスに向かって言った。
「なに、知らなくて当然だ、これは、マヤ独自の魔法だよ」
ルーカスは目を細めながら言った。
「潜伏場所になるとしたら、荒野を越えた山中か、荒野の中のオアシスの街ですね。
あそこであれば外壁もあります、なにもせずただ潜伏するような魔王様とお父様ではないので、外壁のあるオアシスの街で王都を取り戻す準備をするのではないでしょうか」
ブレンダはマヤに聞こえると邪魔になってしまうことを心配しているように小声で言った。
「そうすると……ここかしらねぇ」
マヤがそう言うと、水晶球はある地域の映像を写した。
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その地域は、周りが荒野でなにもないが唯一のオアシスにある街だ。
上空から鳥の目で見ているようだ。
城門の近くには街に入ろうとする人の列ができており、城壁の外には正規軍が野営をしているようだった。
「わかっておいででしょうが、このウォダネシスには軍の人すべてを受け入れられないんですよ」
画面が切り替わり、城門で外から来た兵士と門兵のやり取りの声が聞こえてきた。視点は城門のすぐ内側にいる犬のようだ。
「それはわかっている、領主の命もあるだろうから、そのことで来たわけではない、謀反人が潜伏しているという情報があって、その虚偽を検めるためにまいったのだ」
兵士は声は冷静だが、苛ついているように見えた。
「そうですか、それでは、代表者数名でまずはご領主に面会をしていただかないと私共では確認ができません。今ご領主に伝令を走らせますから、今しばらくお待ち下さい、おい!」
門兵は、内側にいる兵士に向かって声をかけた。
その声を聞いた兵士は、詰め所に向かって声をかけ詰め所から人が出てきたのを見ると、街の中に走っていった。
「では、しばらく、こちらでお待ちください。次!」
兵士は脇にどき、大きな荷車の旅人が数人で街の中に入ろうと門兵の前にくる。どうやら商人の一団のようだ。
「えー積荷は……」
手渡された荷物の目録と荷車に積まれたものを検めはじた。
「なぁ、そういえば、王都のことをなにか知らないか?」
積荷を確認している門兵とは別の門兵が声をかけた。
「おお、魔王様が留守中に謀反が起こって王都が占拠されたって話ですな。なんでもその後、真魔王様を名乗って王都を占拠しているらしいってことぐらいしかわかんですなぁ」
商人はそうこたえた。
「よし、積荷に問題はないな、ところで魔王様の行方はなんか知らないか?」
積荷を確認し終えた門兵が聞いた。
「さあ、あたしにはさっぱり検討もつきませんなぁ……
ああ、そういえば、最近、王都で反乱軍を名乗る集団が出て、真魔王様に加担した貴族たちを襲っているみたいですよ、王都から出ようとする貴族も襲われているとか、あたしら商人は魔王様でも真魔王様でも商売になればどちらでもいいんですが、襲われるとなると、新魔王様とのお取引でもちょいとばかしねぇ……」
「よーし、行っていいぞ!次!」
「へい、ありがとうございました」
積荷の検品が終わった門兵が手元の羊皮紙に何か書きながら言い、旅の商人は挨拶をしてガラガラと荷車を押しながら門の中に入ってきた。
荷車が入り切る前に、先ほど押し問答をしていた兵士のところに伝令が来て何かつげた。
「なに!!後方支援の補給部隊が!」
報告を受けた兵士は慌てて野営地へ走っていった。
バタバタと慌ただしい喧騒をよそに商人は目の前を通過しようとして……
「おー、わんこちょいとそこをどいてくんな、荷車に轢かれちまうぞ」
といって、先頭にいた商人が水晶に大写しになった。
「お、お父様!」
とオリビアは驚きの声を上げた。
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