第十六話 賊

「はあ、はあ、はあ、報告をしろ!」

街の門から駐屯地に走って戻ってきた兵士が天幕に入るやいなや声をあげた。


「はっ!後方から到着を予定していた補給部隊が襲われ、物資を奪われました!」

天幕の中にいた兵士の一人が言った。


「それは先程聞いた!だから戻ってきたのだろうが!被害状況を報告しろと言っている!」

兵士は息を整えて返した。


「は、申し訳ありません。被害は補給物資10日間の食料ほぼ半分、戦闘となり気絶をさせられた補給部隊の兵士が数名おりますが、大きな怪我はありませんでした」

叱責された兵士は慌てて答えた。


「賊は『解放軍』と名乗り、部隊長を人質にした直後投降を呼びかけ、部隊の

人員を拘束し、物資を奪ったそうです。

その際に賊の一人が『残した物資で王都へ戻り、真魔王を名乗るバカタレに今ならまだ引き返せると伝えておけ』と言ったそうです」


「バカにしおって!」

ガシャン!


走って戻ってきた兵士は近くにあった折りたたみ式の椅子を傍らにおいてあった鎧や盾などの装備品の山へ投げつけた。


「落ちつけ、王国の兵士がみっともない姿を見せるんじゃない」

天幕の奥からなだめる声が聞こえた。


「副官、この部隊の目的は街の中の様子を確認し、反乱の目を潰すことだそのために中に入れるように話を通すように貴様に命じたはずだ、それを戻ってきたということは、街に入れる算段がついたということか?」

冷静な声でありながら鋭い気配を感じさせる声で、上官で隊長であろう人物が声をかけた。


「はっ、失礼いたしました。現在、領主との面会に向けた準備をしております。面会には代表者数名でとのことのようです。お手を煩わせることにならぬように私がと考えておりますが、よろしいですか?」

冷静さを取り戻した副官は報告した。


「貴様と私でゆこう、しかし、反乱軍は街の外にいたようだから、この街以外の別のところにいるようだ。『解放』をなのる以上、王都へ攻め入ってくることを考えれば、早々に街を検め、引き上げるほうが良いだろう」

隊長は答えた。


「はっ、それでは、領主からの面会の連絡を門にて待ちます、失礼いたします!」

敬礼をして天幕から出ていった。

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