第十三話 勇者の剣

「つまり、じいちゃんは神託を受けた勇者で、ばあちゃんはその勇者と戦った魔王だったってことか?」

話が続く円卓では、ユウキは初めて知る事実に驚きながら言った。


「まぁ、そういうことだな、相対したときの氷のような冷たい殺気を放つマヤの美しさ、まさにひと目で心を射抜くような視線、未だに昨日、いや、ついさっきのように思い出せるものだ」

ルーカスは感慨深げに思いを馳せながらマヤを見る。


「あらあら、あなた、その話よりも、魔法王国の王族の人がいるのだから、そちらの話を聞かないといけませんよ」

マヤは、顔を赤くしながら、ルーカスの意識を目の前の相手に向けるように促す。


「おっと、そうだったな、すまなかった。

さて、この剣は聖王国に助けを求めるときに王族が持ち出して、その身の証明をするもののはずだ。

その過程で、この森にきて聖人、つまり私に助力を求める手はずになっているのだが、その助力というのは、その剣が本物であるという証明をするということだ」

ルーカスは、オリビアの目を見据えながら言った。


「おっしゃるとおりです……」

おもむろにブレンダがこの森に至るまでの経緯を話をはじめた。


「ふむ、そうか、謀反か……、その様子だとなんの状況も知らずにここまで来たのだな。」

そう言うとマヤに目を向ける。


「そうですね、少し見てみましょうか……」

そう言うと、マヤは家の脇にある倉庫に向かった。


「さて、剣が本物であるかどうかを証明するという話だが……」

そういうと、ルーカスはミケに目をやってから剣を見た。


「ふむ、まぁ、この剣は本物だな。

本物の証明とは、つまり、勇者のみに扱える剣で、勇者以外には鞘から抜くことができない、ということなのだが、まさか、ユウキが勇者として剣に認められるとはなぁ、はっはっは!鍛えてきたかいがあったというもんだ!!」

ルーカスは豪快に笑った。


「なんだか、知らないけどミケなんか知ってんのか?」

ルーカスがミケに目をやったことに対して、ユウキは不思議に思って聞いてみた。


「さぁね〜」

といって、ミケはもう話に飽きたかのようにあくびをして丸くなった。


「おまたせ〜、それでは魔王国がどうなっているか覗いて見ましょうか」

マヤが一つの水晶球を持って戻ってきた。


クッションのような台座となるものをテーブルの上に起き、水晶球をその上に乗せ、じっとマヤは見つめた。


「……」みなが息を飲んでその様子を見つめる。


「あ!」マヤが声をあげて立ち上がる。

「!な、なにか見えましたか?」オリビアが慌てて同じように立ち上がりマヤを見る、ルーカス以外の三人も前のめりになって水晶球を覗き込んだ。


「あら、ごめんなさい。ちょっと汚れてるから、ふきんを取ってくるわね、ちょっとまっててね〜」

全員ズッコケたのは想像するに難しくないだろう。


「ちょっ、もう、ばあちゃんは、こういうところがあるからなぁ、マイペース過ぎるんだよ……」

ユウキはがっくりとうなだれながら言った。


「なにっとるんだ、そういうところもステキなんだぞ!マヤは!」

ルーカスがマヤがかけていったほうを見ながらキラキラした目で主張した。


・・・・・・


「ん〜これで、よしっと」

ふきんを持って戻ってきたマヤは、水晶球をきれいに磨いてすっかりご満悦のようだ。


「長いこと使ってなくて、漬物石の代わりに使ってたらだいぶ汚れちゃったのよね。はい、おまたせしました、それでは、物見の水晶球で魔王国を覗いてみましょう」

ゆるやかにそう言う水晶球に手をかざした。

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