第八話 出会い

「はあ、はあ、はあ、はあ」

三人は身を潜め呼吸を整えて、追ってきたものをやり過ごす。


「なんとか巻きましたか、危なかった......」

ブレンダたち三人は一息ついた。


ゴブリンに見つかった三人はブレンダの術で足止めをしてそのまま走り去り、少し離れたところに窪地にあいた洞穴を見つけて身を隠した。


「このまましばらく身を潜めていれば、いずれいなくなるでしょう」

ブレンダは、オリビアとケイトリンに言った。


「ふぅ〜どうなることかと思いました」

「そうですね、まさか、あの状況でくしゃみをするなんて、まったくケイトったら……」

へたり込むケイトリンをみながらオリビアが言う。


「ごめんなさい、だって、鼻がムズムズしてがまんができなかったんですもの」とあやまる


「ところで、安心したらお腹がすきましたね」

といって、ケイトリンは、荷物の中から先程作ったサンドイッチを取り出して二人に分けた。


「まったく、反省しているんですか?」

「相変わらず、食い意地がはっている……」

たくましいやら図々しいやら、頭を抱えたい気持ちになりながら、ケイトリンがが差し出したサンドイッチを手に取り三人で頬張る。


「さて、これからどうしましょうか?」オリビアはブレンダの顔をみる。

「言い伝えでは、剣が導くとされています、といっても、あてもなくこの森をさまよっていてはもちそうにありませんね。なにか方針を立てなければ……」


そう言いながら、洞穴に身を潜めながら辺りの様子を伺っていたブレンダは、先程のゴブリンたちが洞穴から見えるところまで来て、洞窟の方を見てから去っていくのが見えた。

慌てて身を隠したので、おそらくこちらの姿は見られていないが、なにか話し合ってから、怯えて去っていたようにも見えた。


「あの〜お姉様……この洞穴ってどなたか住んでたりしますかねぇ……」

ケイトリンが洞穴の奥の方を見ながらおずおずと聞いてきた。


「……ケイト、オリビア、静かに洞穴の外に出るんだ、声も音も立てないように慎重に、決してくしゃみなどするなよケイト……」


三人は洞穴の奥の暗闇を注意深く見ながら、そーっと洞穴の外に向かって静かに後ずさる。


暗闇からなにかが動く気配がする。


「走れ!」

ブレンダが叫ぶとオリビアとケイトリンが前を向いて走り出した。

三人は全速力で洞穴から飛び出して後ろから追いかけてくるものから必死に逃げようと走った。


「グオォオォォォォォ」

四本脚で後から追いかけて来て吠えたそれは熊の魔物だった。


洞窟から出た熊の魔物は二本足でたち両の腕を上に持ち上げこちらを威嚇する。


グレートグリズリー、四本脚で走るスピードは人よりもずっと早く、二本足で立つと二メートル以上から三メートル近くにもなる、魔の森最大級の魔物だった。


ゴブリンたちが逃げていったのは、このせいだった。


三人はそれぞれの得物を構えた。

三人で連携して対処しないと逃げるのは困難なことに感じた。


「グォオオオオオ!」

雄叫びのような声をあげて、グレートグリズリーが三人に向かって突進してきた。


グレートグリズリーは、ケイトリンに狙いを定め突進しながら右の腕を振るった。


「ケイトリン!」

ブレンダがかばうように間に割って入り熊の腕に剣を叩きつけるが、剣は弾かれ、その勢いでブレンダも吹き飛ばされて、その後ろにいたケイトリンと一緒に弾き飛ばされる。


「うぐぅ……」

弾き飛ばされた二人はそれぞれ体を地面に叩きつけられ唸った。


その様子を見たオリビアは息があることに少しだけほっとしたが、目の前に立ち上がるグレートグリズリーの様子を見て魔法の詠唱を始めた。


「万物の根源たるマナよ、我が矢となり、敵を撃て『火のyフレイム・ア「こらー!!!そんな魔法使ったら森が海になっちゃうでしょ〜!!!」」


ドゴッ!!!

そんな声を聞いたその瞬間、それまで目の前にいた巨大な熊は突然視界から消え、洞穴の前まで吹き飛んでいった。

そして、その熊のいたところには人が立っていた。


「え?え?」

事態の飲み込めないオリビアはその人を見たり、吹き飛ばされた熊をみたり、視線を行ったり来たりさせた。


「おいこら!お嬢ちゃん!森の中で火の魔法は使っちゃだめって習ってないんかい!!」


そして、目の前に突如として現れた、人の言葉を話す動物に目を白黒させている。


「おいこら!聞いてんのかい!!」

その人の言葉を話す猫は、オリビアの目の前まで飛んでまくしたてる。


「と、飛んでる?飛ぶ猫??」

オリビアは目の前でパタパタと背中に生えた羽根で飛ぶ猫を見て目を白黒させた。


「そりゃ羽根があれば飛ぶわよ!そんなことよりあたしの話を聞いてたのかい!」


「まーまー、ミケいいじゃないか、別に火がついたわけじゃないんだからさ〜

それよりもいい匂いがするからってついてきてみたら、グレートグリズリーの巣じゃないか。流石に武器がないとしんどいぞあれ。」


飛ぶ猫をなだめるようにオリビアの目の前まで来た少年が言った。


「グガァ…」

熊はまだこちらに向かってこようと体勢を立て直そうとしているところだった。

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