第8話 盲目
私の目には、光がない。
聴覚、触覚、嗅覚、味覚……あと1つが欠けた、未完成品。
私は自分の顔を知らない。相手の顔も知らない。
だから私は、声や匂いで人を識別する。
皆の言う「かわいい」って感覚は、私にはよくわからない。
触れて分かるのは、黒塗りの世界。
いろんな形のかわいいがあるみたい。
皆の言う「やさしい」って言葉はわかる。
目の見えない私のために、沢山のありがとうをくれる人がいる。
目が見えないから、相手の表情はわからない。
声色だけが、相手から見える気持ち。
言葉をくれる相手だけが、私に見える人たち。
自分ではわからないけど、みんなかわいいって言ってくれる。
自分ではわからないけど、ママは私に沢山おしゃれをさせてくれる。
かわいい、かわいい、そう言うみんなの声が嬉しそうで
かわいくしてくれてありがとうって思う。
目が見えないことをいいことに、意地悪してくる人もいる。
暗闇に蠢く悪魔たちが、私の腕に、心に、ナイフを突き立て
容赦なく引き裂いていく。
「人間」はよくわからない。
天使のように優しい人、悪魔のように残忍な人。
そのどれもが人間で、私も同じ人間らしい。
色んな幸せと、色んな悲しみを与えてくれる沢山の、人。
私に沢山の幸せをくれる人に、私もそれを返したい。
未完成な私に芽生えた、身勝手な想い。
優しく触れてくれる、暖かな手が
心に触れてくれる、暖かな言葉が、私に光を与えてくれる。
私を選んでくれたあの人が、私に光を与えてくれる。
光が見えない私だけど、あなたの光になれるかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます