第9話 大人

自然界における成体は

生物として、一人で生きるすべを身につけることだ。

人間界における成人は

決められた年月を過ごし、それを社会が定めることだ。


その過ごし方は一様ではなく、

中身が伴わずとも人は「大人」の名札を受け取る。


その中で、適合する術の無いものが蔑まれ、

認められたものだけが、立派であると評価される。


自分より早く大人になったあの人は

長く生きたからと威張り、未だ結果を出せない相手を蔑む。

自分より遅れて大人になったあの人は

色んな相手に感謝し、感謝されながら、毎日笑顔で過ごしている。


大人ってなんだろう?

誰にも頼らず生きていけることが大人?

回りを顧みず、結果を出し続けることが大人?

人の痛みを理解出来るようになることが大人?


多分、どれも間違ってない。


色んな大人がある中で

ただ唯一、人間だけが出来ること。


自分に囚われず、相手に囚われず、世界すらも受け入れるということ。

恐れを捨てて向き合った時、人はその果てすらをも追い求める。

無限の可能性のその果てに、手を伸ばすことのできる、唯一の存在。


その心構えが出来た時、人はその中に確かなものを見出すのだろう。

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