嘘つき天使の一週間

雪桜

プロローグ




「ゴ、メン……ごめん……ッ」


 きつく握りしめた手が、ゆっくりと冷たくなっていく。


 先程まで共にあった温もりが、じわりじわりと失われていく感覚に嗚咽しながら、少年はひたすら謝りつづけた。


 あふれた涙は止まらず、頬を伝う雫は、細い輪郭にそって、真っ白なシーツの上に流れおちる。


 クロは、今まで、本気で涙を流したことがなかった。


 だが、どんなに泣いても、どんなに声をあげて謝っても、もう運命が変わることはない。


「ごめん、コハク……ッ」


 薄暗い病室の中には、少女の手を握り、涙を流しつづける天使が一人。


 それは、天使であるクロが、人間の少女と出会って一週間後の夜のこと。


 満天の星が輝く、7月7日。


 この日、クロは、初めてコハクに



 ────嘘をついた。

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