とある青年F (後に中年F)
"とある時代"の"とある国"で、
"とある青年F"は絶望的に落ち込んでいた。
青年Fは過去にとある分野で有名になったのだが、
現在ではその時に負った怪我などにより満足に動く事が出ない。
そして時代の変化と共に活躍する事が出来なくなり、
現在は家に引きこもりっきりになっていた。
そんな青年Fにモニターとして協力してほしいと、とあるメーカーが依頼してきた。
青年Fの左手には、機械の左腕がつけられ、
左眼には脳と直結の人工眼球がつけられた。
人工眼球のおかげで僅かに引きずっていた下半身も正常に動かせる様になった。
これらはまだ試作品の様で、操作には慣れないが、
生活の中で出来る事が増えていくことに感動していた。
これらの機械は改良を重ねて、数ヶ月で青年Fは健常者となんら変わらない生活を送る事が出来る様になっていた。
青年Fは数字遊びや科学を扱う学校に入り、学び直す事にした。
成績も優秀で将来を期待されたが、これらも左眼のおかげである。
スポーツも万能で、機械の左腕から投げられるボールを打つモノはなかなか現れなかった。
そして災害時にはその機械の左腕を用いて多くの人を救出し、
これをキッカケに青年Fは一躍、国中の有名人になった。
このハイテクな製品のCMキャラクターとして活躍した青年Fは、"とある美女"との結婚話を持ちかけられた。
有名になりすぎ、大人の関係上断れない青年Fはこの美女と結婚する事になった。
彼らが幸せかどうかは記録に残ってはいないけれども、
子供にも恵まれて、スポンサーとやらから、それなりの生活も保証されていた。
それから青年Fはこの機械の能力により、難しい問題を解き明かしたり、世間を助ける能力を存分に発揮していた。
しかし、数十年も経つにつれて、
"ハイテク身体"で様々な力を発揮した青年F(改め中年F)を讃える声の一方で、”自分の力で勉強しろ”だの、”機械を使うなんてズルだ”などと言った批判の声も出てきた。
出過ぎるモノを蹴落としたくなるのがこの国でのルールの様だ。
中年Fはこれに気を落とし、勉学やスポーツなどから一切の手を引く事にした。
またしても自宅に引きこもった中年F。
そして、なぜだかは分からないけれども、美人の妻とも離婚する事になった。
そんなある日、近所から騒がしい音が聞こえた。
どうやら近所の若者達が電子三味線や電動鍵盤機、真空太鼓などで音楽を演奏し、警察が駆けつける程の近所迷惑になっていた様だ。
中年Fは、かつて世間的に迫害されていた電子三味線に憧れていた事を思い出した。
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