第9話

義男は、ある意味一番期待していたのが長女の瑠華だったのだが、やはりダメだったことへの落ち込みは激しかった。


「仕方ないわね。瑠華がそんな態度じゃあねぇ」

「瞳は来年受験だから、会うのもどうかと思うし」

「でも、明日何とか会いなさいよ。もしかすると何か分かるかも知れないじゃない」

「とりあえず、メールしてみようと思ってる」

「それにしても分からないね。娘たちも巻き込んで麻理さんはどういう気持ちなのかしら。もしかすると・・・」

「もしかすると、何なんだ」

「言いにくいけど、麻理さんに相手がいるとか」

「俺もそれを考えたけど、そういう女じゃないしな」

「夫の知らない顔があるかもよ」

「面白がるなよ」

「そんなんじゃないけど、もはやそれしか考えられないのよ」

「可能性はゼロではないと思うけどな、それにしても」

「娘たちまで巻き込んでいるということは、男関係じゃあ、娘のうち誰かあんたの味方をする子がいても不思議じゃないわよね」

「俺もそう思うんだ」


妹とこんな問答をしていても何ら事態は変わらない。

義男は諦めずに今は動かなくてはならないと思った。



翌日、次女の瞳にメールをして、学校帰りに駅で待ち合わせをした。

瞳は黒のブレザーにグレーのスカート、紺色のハイソックスをはいた瞳が義男のほうに歩いてきた。

「パパ、元気だった?」

「ああ、大丈夫だよ」

「良かった」

義男と瞳は駅前から歩いて5分くらいの街道沿いにあるファミリーレストランた。「パパびっくりしたでしょ」

三女と長女が見せた態度と明らかに違う。

義男は期待を持った。

「それはもう本当に驚いたよ。今までの人生で一番驚いたかも知れない」

「そうでしょ。何だか可哀相」

「お前もそう思うか」

「少しは思うよ。でもママが決めたことだからね。子供がどうのこうの言うのはおかしいでしょ」

「そんなことはないさ。お前たちの人生を左右することになるかも知れないんだ」

「ママの決意は固いわよ」

「それなんだ、親がこんなこと子供に聞きにくいけど、ママは他に好きな人がいるんじゃないかと思うんだけど、どうかな」

「それは聞いてないよ」

「じゃあ、何なんだ」

「一口じゃ言えないとママは言ってたわ。瑠華と私はずっと説得してたのよ」

「どういう説得だったんだ」

「離婚まですることないじゃないって。せめて私たちが独立してからでもいいじゃないって」

「そうしたら、ママは何と言ったんだ」

「それは出来ないと言われた」

「何故なんだ」

「ママは真剣な顔をしていたわ。だから瑠華も私もそれ以上は何も言えなかった」


瞳の話は納得できるようで納得できないものだった。

義男は覚悟を決めていた。

とにかくもう一度麻理と真正面からぶつかろう。

それしかない。

結局は自分と麻理のふたりの問題なのだから、子供たちに聞いても何も解決しない。

妻の話が納得できなければ、離婚届けの判を押さなければいい。


とにかく会おう、それだけだ。



翌日、思い切って家に電話をした。



⑩に続く。






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