第3話

「ッ……っハァ……俺は、どうなったんだ……?」


 山でくたばったと思ったがどうやら助かったらしい。見知らぬ天井にふかふかのベッドで俺は横になっていた。


 誰かが介護してくれたのだろう。木に叩きつけられたときに折れた足も添え木を使って処置してくれている。


「目が覚めたか少年。身体は痛むか?」


 ギィーと扉の開く音とともに見知らぬ女性が入ってきた。彼女が治療してくれたのだろうか。


「……ありがとう」


 無愛想な感じになってしまったがこれは仕方ないんだ。俺は彼女の美しさに息を飲んだ。

 透き通るような綺麗な銀髪に端正の取れキリッとした顔は『美麗』という言葉がよく似合う。


「すみません。治療をしてくれてありがとうございます」


「ふふっ、ちゃんとした会話ができるようでなによりだ。さっそくで申し訳ないんだが、大切な話をしてもいいか。あぁ、寝たままで構わない」


 複雑な話? 今さっき会った俺に大切な話をされても困るが、きっと彼女にも何か事情があるのだろう。


「私の名前はヴァルキーエという。神として崇められていたーー」


「ち、ちょっ、ちょっと待ってください」


「ん、なんだ? まだ大切な話ではないぞ」


 え、今この人ヴァルキーエって言った? 同じ名前とかじゃなくて御本人?


「えっと、ヴァルキーエってのは戦姫神ヴァルキーエ様のことですか?」


「うむ、そうだが?」


 ……ダメだ。頭の回転が追いつかない。神様が一体なんだってこんなとこにいるんだ。もしかして神様ってのは身近にいるものなのか? 俺が田舎者だから何も知らなかっただけなのか?


「そ、そうですか。すいません、話の腰を折って。続けてください」


「うむ。私は神として常に平等であり公平でなくてはならない。しかし、私はそれを破ってしまってな」


「破るとどうなるんです?」


「神ではなくなる」


「そうなんですね…………」


 2人の間に流れる長い沈黙。それを破ったのは彼女の語ったことを理解した俺だった。


「えぇぇぇぇ!?」


 これは長い話になりそうだ……。

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