第3話 寒いのは大の苦手

 学校へ登校している途中、見慣れた後ろ姿が見え私はその子の名前を呼んだ。


雪子ゆきこちゃ~ん!」


 その子はクルリと振り返ると、手を小さく振ってニコリと笑い挨拶を返してくれた。


「春菜ちゃん、おはよ~」

「おはよう!――って、え?! 今日、凄く着てない?!た、確かに今日は寒いけど……」


 そう言うと、私は改めて雪子ちゃんの服装を見た。

 雪子ちゃんの服装は、マフラーや手袋・耳当てはもちろん、制服の上に更にモコモコしたちゃんちゃんこも着ていたのだった。

 雪子ちゃんは、親指をグッと立てると、ドヤ顔で「今日は、カイロもしてるんよ!」と言った。


「え?! 更に、カイロも?!」

「うん。寒いやん?」

「あ、あはは……確かに……」


 確かに寒いけど、流石にそれは暑すぎないか?と内心思うけど、雪子ちゃんの顔を見ると平然としているのでそれ程暑くはないのだろう。

 そこで私は、ふと、思った。


(あれ? 雪子ちゃんの生まれ変わりって何だろう?)


 私は想像する。寒いのが苦手な物語と言えば、寒い地方に住んでいたか雪の中で亡くなったキャラクターなのかもと。


「寒いのが苦手ってことは、雪子ちゃんはマッチ売りの少女の生まれ変わりとか? 確か、マッチ売りの少女も寒さの中で死んじゃったんだよね? でも、あれは飢えもあるのかなぁ?」


 うーんと唸りながら考えていると、雪子ちゃんが「あはは」と笑った。


「ちゃうよ~ぉ。ウチは、雪女の生まれ変わりやで」

「え、雪女?!」


 まさかの衝撃的事実に私は足を止め驚いた。

 雪子ちゃんは、止まって少し距離が空いた私の方を見ると空を見上げた。


「妖怪の生まれ変わりというか……うーん、なんて言うんかなぁ? ……先祖返りみたいな? そういう人達も通ってるんよ」

「へぇ~」


 改めて、不思議な学校だと実感する。


(あ、そういえば、そんなことも校長も言ってたっけ……ん? あれ? 雪女?)


 私達は歩みを進め、私は雪子ちゃんをチラッと見る。

 雪子ちゃんは、寒さで肩が上がりブルブルと震えていた。


「うぅぅ~……ほんま、今日は寒いわぁ~。もう、帰ってコタツでぬくぬくしたいわ~」

「…………」


(雪女なのに、寒いの苦手なんだ……)


 なんとも言えず「あはは……」と、苦笑する私だった。


[完]

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