2.ミステリー倶楽部へようこそ!
思い悩んだ
『
空き教室の扉には、そんな
はっきり言って怪しい、怪しすぎる。しかし
しかも、
(ここまで来たんだから……!)
茉佑ちゃんは、自分を勇気付けながら扉をノックした。
「どうぞ!」
扉の向こうから、とっても
返事をされてしまった以上、このまま帰るわけにはいかない。茉佑ちゃんは、更に勇気を振り
まず目に飛び込んできたのは、微笑みを浮かべながら茉佑ちゃんを出迎えてくれた、とってもハンサムな男の子。なぜか教室の真ん中で仁王立ちをしている。
次に目に入ったのは、綺麗な花模様の着物を着た長い黒髪の大人っぽい美少女。こちらは、窓際に置かれた椅子の上に、背筋をピンと伸ばしたとても綺麗な姿勢で座っている。しかも不思議なことに、その子の膝の上には全身ほぼ真っ黒でお腹と首の周り、そして鼻と足の一部だけがちょっと白い模様の猫ちゃんが座っていた。
最後に、教室の奥の方で大きな水筒からお茶らしきものをコップに注いでいる、長いピンクのスカートをはいた女の子の姿が目に入った。茉佑ちゃんにも見覚えのある、同学年の女の子だった。
「ようこそ! 鎌倉西小学校ミステリー倶楽部へ! えーと、円堂茉佑さん、だよね?」
「ええ!? どうして私の名前を知ってるんですか?」
ハンサムな男の子が、まだ名乗る前から名前を呼んできたので、茉佑ちゃんは驚いてしまった。実は、この男の子は「学校一のイケメン」として、とても有名だったのだ。
そんな男の子に名前を覚えられていた……茉佑ちゃんは胸のドキドキが止まらなくなった。「ずっと君のことが気になってたんだ」なんて言われたら――茉佑ちゃんは、悩み事を
「うん。この学校の児童の名前と顔は、大体覚えてるから」
男の子はなんでもないことのように言ったけれども、茉佑ちゃんにとっては驚くべきことだった。
この鎌倉西小学校には、何百人と言う児童が通っている。その名前と顔を大体でも覚えているだなんて、物凄い記憶力がないとできないことだ。
「――っと、こっちも自己紹介しなくちゃだね。僕は
「……八重垣ひばり、副部長よ。……
「あっ、はーい! って、同じクラスだったことあるから今更かな? あたしは
「学校一のイケメン」こと部長の八重垣孔雀くんは、学校一の有名人。整った顔立ちと中学生によく間違えられるくらいに高い
八重垣ひばりちゃんは、その双子の妹。いつも高そうな和服を着ていて、長い黒髪が
綾里心ちゃんは、あまり話したことはないけれども、茉佑ちゃんと同じクラスだったことがある。ぽわぽわのおさげ髪とほんわかした
茉佑ちゃんが「ミステリー倶楽部」という怪しげな部活を頼ろうとしたのは、この三人が部員だ、ということを知ったからだった。
三人とも、他の児童からだけでなく先生からも信頼されている優等生だ。
孔雀くんはスポーツ万能・成績優秀。ひばりちゃんは運動は苦手らしいが、勉強は孔雀くんよりできるらしい。心ちゃんは運動も勉強も普通だったが、性格が良いので先生たちにとても可愛がられている。
そんな人たちのいる部活なら、きっと信頼できるはず、と思ったのだ。
「さ、円堂さん。まずは座って? 心ちゃん、彼女にお茶を」
「は~い!」
孔雀くんがすすめてくれた椅子に茉佑ちゃんが座ると、心ちゃんが可愛らしい猫が描かれたコップを手渡してくれた。
コップの中からは、甘く
「ちょっとぬるくなってるけど、味は保証するから! どうぞどうぞ!」
「……いただきます」
心ちゃんに
――ほんのりと香ばしくて、優しい甘い味がした。
「おいしい!」
「でしょでしょ~? うちの自慢の麦茶なんだ~! 本当は学校でいれたいんだけど、火も電気ポットも使わせてもらえないから、朝、家でいれてきてるの!」
おいしい麦茶と心ちゃんのほんわかした雰囲気に、まだ緊張気味だった茉佑ちゃんも、次第にリラックスしてきた。
すると、それを待っていたかのように、孔雀くんが話を切り出し始めた。
「――さて、円堂さん。ここに来たと言うことは……何か
にっこりと、王子様みたいな微笑みを浮かべながら、孔雀くんが尋ねてきた。
茉佑ちゃんはその笑顔に少しドキッとしながらも、コクリと頷くと、音楽室から聞こえてきた「別れの曲」のことを、孔雀くんたちに話し始めた――。
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