keびん

ふと気付くと、鏡から自分の姿が映らなくなっていた。

もちろん目を疑った。

ちょうど近くにいた友人に話すが、何を言っているかさっぱりっといった表情を浮かべていた。

どうやらこの現象は僕にしか起こってないようだ。

僕が僕自身の姿を確認できない。

なんとも度しがたい。

理由も全く検討がつかない。

鏡が使えないと、多少困る。

別に、自分のご尊顔が拝めないから、何てことは考えてないが、最低限身だしなみを整える為には、鏡は必要である。

少し不便だがこのまま生活を続けた。


僕の姿が映らなくなってから、他人からよく表情のことを言われるようになった。

「顔色悪いね」とか「嬉しそうだね」とか。

特にそう思ってもない時に限ってよく言われる。

自分の顔が映らないから、今どんな表情をしているのかわからない。

笑ってる?怒ってる?泣いてる?疲れてる?

僕の顔はどこだ。僕の姿はどこだ。

他人には見えて、何故僕自身が見えない。

他人を経由してからじゃないと、自分がわからない。


もしかして本当は僕の姿なんて無いのかも知れない。

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keびん @momo10nanami03

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