第99話・アプロの戦い 後編

 「先触れによればあと半日ほどで着くそうですので、おそらく日も傾いた頃かと…」

 「わかりました。門前で待ってますね」

 「…なるべく人目につかぬよう、お願い致します」


 わたしの心配なら大丈夫じゃないですかね。教会や一部の商会の皆さんのおかげで、わたしへの風辺りも大分和らいでますし。


 「心配するに越したことはありませんので…ああ、教会の方々と一緒にいれば安心かと」

 「ですね。衛兵さんのご家族とは顔合わせないようにしてます」

 「そのようになさってください。私共は迎え入れの準備を進めますので」


 アプロが不在なら不在で、帰って来るなら帰って来るで何かと仕事の多いフェネルさんでした。

 わたしは用心のため目立たない格好で屋敷を出て、人通りの少ない道を選びながら街の門に向かいます。途中顔見知りの衛兵さんにも会いましたが、もう近くまで来ていることは街中に知れ渡っているようで、普段に無い不思議な浮き足だった空気でした。

 そんな中を、門に向かう人並みを追い越すように進んでいくと、マリスとグレンスさんの姿を見かけて、わたしは声をかけます。


 「マリス!」

 「アコ…あなたも来たのですね」

 「皆は無事…なんですか?」

 「先触れはわたくしたちのところにも来て知らせていきました。お兄さまやアプロニア様、ゴゥリンさまはご無事のようでしたけれど…衛兵の方に何人か……犠牲が出ているそうです」

 「…そう、ですか」


 三人が無事なのはわたしには嬉しい知らせなのですが、衛兵さんはわたしにも顔馴染みが少なくありません。いまここで大喜びする、というわけにもいかないのです。


 「…大分混んで参りましたな。教区長、少し離れて…ああ、あそこの二階をしばし借りましょう」

 「そうですわね。アコ、あなたも一緒に…」

 「いえ、ここで待ってますから。マリスは大事な体ですから、上がっててください」


 だから、難儀するだろうとは思いましたが、人混みと一緒に待つつもりです。

 …というのはわたしの意地みたいなものなので、マリスを巻き込むわけにはいきません。

 わたしは後ろの群衆に押し出されるように数歩門に近付き、外に視線を向け続けます。


 「…しかたありません。教区長、私がアコ殿を見守りますので、あなたは上に上がっていてください。アプロニア様が来ましたら降りてこられるがよろしいでしょう」

 「…ですわね。わたくしがいては皆も困るでしょうし。アコ、疲れたら一緒に上で待ちましょう?」

 「ありがとうございます、マリス。それとグレンスさん、面倒かけますがお付き合いください」

 「承知。では、教区長…」

 「ええ。アコ、気をつけて」


 本当はグレンスさんもマリスについていたいのでしょうけど、好意で言ってくれていることを無下にするつもりもありません。

 わたしは、後ろに立ってくれているグレンスさんの視線を感じながら、待つことにしました。




 「見えたぞーっ!」


 門番の衛兵さんの叫び声で、街の人たちのざわめきが一際大きくなります。

 待ち始めてから…ええと、二時間くらいでしょうかね?なので予想よりも早く帰って来たことになります。

 その間わたしは何度か睨まれたり苛立たしげな声をかけられたりはしましたが、一切無視してました。もちろん、グレンスさんが睨みを利かせてくれていたこともありますけれど。


 「…見えますかな」

 「…あんまり。けど衛兵のひとって目がいいんですね…」


 デスクワークが多そうなグレンスさんはもとより、裁縫向きな視力のわたしでは街道の向こうに表れた影がアプロかどうかなのかは、分かりません。


 「アコ、来たんですの?!」


 じりじりしてるうちにマリスも降りて人並みをかいくぐり、わたしの隣にやってきました。

 そうこうしてるうちに門の前から衛兵さんが二人、騎乗してあらわれた一団を迎えにいくようです。

 街のひとのうち何人かも、駆け出していきそうでしたが衛兵さんに止められていました。何か心配そうな声をかけていたので、もしかして出征した方の家族なのかもしれません。わたしはそんな光景に、もう置いてきたはずの後悔なのに、と唇を噛みます。


 「アコ、とにかく待ちましょう」

 「わかってます」


 そんなわたしを横で見上げながら、マリスが言いました。顔に出ていたようです。


 出迎えに出た衛兵さんの馬の影と一行の影はほどなく合流し、アプロたちも馬でしたのでさほど待つことなく、どの影が誰のものなのか分かる距離にやってきました。

 先頭で帰ってきたのは…。


 「…お兄さま…」


 マイネルです。向こうももしかしてマリスの顔を見つけたのでしょうか、一人馬を早足に駆り、厳しい顔ではありましたけど無事な様子を皆に見せてくれました。


 「…済まない!皆がもうすぐやって来るから道を空けて…」

 「お兄さま!」


 マイネルはきっと一足先にやってきて、帰ってきたアプロたちが滞りなく街の中に入れるよう、指示を出そうとしてたのでしょうけど。


 「マ、マリス…?その、ただいま……悪いけど後にしてくれると……」

 「お兄さま…お兄さまお兄さま!……よくご無事で帰ってきて……」


 鐙にのせられたマイネルの足に取りすがり、早くも感極まったように涙を流すマリスでした。

 ですけど、その必死な様子に周囲のひとは何か不審を抱いてか…あー、これ拙くないでしょうか?


 「…あの、グレンスさん?」

 「…ですな。マイネル殿、案内しますのでこちらへ。教区長もご一緒に」


 返事を待たず、マイネルの馬の手綱をとって引っ張っていきます。もちろんマリスもくっついて、です。これ、マイネルとマリスがどういう関係なのか、この場にいたひとの中でも勘のいい人は気付いたんじゃないでしょうか。知りませんよ?…もう。


 周囲のひとと一緒にしばらくマイネルの背中を見送っていたわたしでしたが、少し落ち着きかけた賑わいがまたざわめきを取り戻したのに気がつき、門に視線を向けると…。


 「………っ」


 わたしに気がついて、馬上で一瞬だけ表情を揺らめかせた鎧姿のアプロが、いました。

 けど、それだけ。

 すぐにわたしから目を逸らすと馬を下り、取り巻く街の人たちに留守の感謝を述べ、出迎えの礼を告げ、あるいは家族の無事を問われれば…時折辛そうな顔をしながら、努めて事務的に担当の衛兵さんに訊ねるように、伝えてるだけ。


 「…アプローっ!」


 だからわたしは堪らず、声を張り上げて呼び、こちらに気がつくよう手を掲げ振ってはみたのですけれど…無駄なことでした。きっと、分かっていてもわたしに顔を見せたくないのか…いえ、それを許さない自分の中の何かに従っていたんでしょう。

 そんな、横顔でした。




 仕方なく、アプロの無事は確認出来たのでそれだけに留め、わたしは先にお屋敷に戻り、待つことにしました。


 「兵舎に衛兵たちを送り届けて解散してから帰ってこられるのでしょう」


 というフェネルさんの言葉通り、アプロが帰ってきたのは日も暮れてからのことでした。

 フェネルさんやお仕事の方のひとたち、それに美味しいものを作って迎えて差し上げようと張り切っていた料理番のひとを除いたお屋敷の全員が、玄関にアプロを出迎えます。

 アプロはそれに細かく礼を述べて、最後にわたしの前に立ち、「ただいま」と笑顔も無く告げます。

 まだ脱いでいない鎧のあちこちは、いつもの旅から帰ってきた時よりも泥や埃で汚れていて、それからわたしの目についたのは……錆のように赤黒くこびりついたもの。

 …魔獣のものではないですし、アプロにもケガは無さそうなので、きっと並んで戦っていたひとの血なのでしょう。


 「…アプロ、おかえり。休んだ方が…」

 「いや、すぐに着替えて出かける。街の衛兵たちも四人、やられた。今晩中に家族に報告にいかないといけない」

 「そんな…明日でもいいじゃないですか。アプロ、そんなに疲れているのに…」

 「これは私がやらないといけないことなんだ。それも、何よりも優先して、だよ」

 「でも…アプロのせいじゃないのに…」

 「アコ、そうじゃない。あいつらは私の指示に従い戦って、そして命を落としたんだ。だから、これは私の責任なんだよ」

 「………」

 「…カナギ様、主の仰せの通りです。これは上に立つ者の義務なのです。…アプロニア様、お召し物を用意しておきます。湯浴みをお済ませください」

 「うん。ありがとう、フェネル」


 帰ってきてから一度も笑顔を見せなかったアプロが、ようやく…ほんの微かな、でしたけど、笑みを浮かべて、鎧を脱ぐために奥に向かっていきました。

 それを手伝うことなんか出来ないわたしでしたけど、それでももう一言だけ言ってあげたくて手を伸ばした時、アプロは振り返ってわたしに言いました。


 「…アコ。今晩は…私の部屋で待ってて。遅くなるけど、待ってて」

 「………はい。わかりました」


 それがどんな意味なのか。

 密かに覚悟を決め、一度もアプロの背中から視線を外さず、わたしは一人頷いていたんです。



   ・・・・・



 「…あれは、戦争だったよ」


 そして「アコを連れて行かなくって本当によかった」と部屋に入ってきた喪服から着替えもせず、アプロは言いました。


 「私たちが駆けつけた時、もう街の城壁は破られていて、魔獣の侵入を許してしまっていた。街の戦力だけじゃ、持ち堪えられなかったんだ。私たちは少人数だったから、まず最初に住民の避難を指揮して、応援の人数が揃い始めたら、魔獣を殲滅する最前線に立つことになった。兄上はもっと後ろにいろって言ってたけどさ、魔獣が相手なら私の剣が最大戦力だから…。それで、マイネルとゴゥリンと、ウチの連中が付き従ってくれて…けどやっぱり魔獣の数は多くってさ。しかも違う種類の魔獣がいくつもいたんだよ。そんな話、聞いてないっつーのになあ」


 素面で出来る話でもないと思うのですけど、アプロは水で唇を湿らせながら話を続けます。


 「…例の、人語を解する魔獣もいくつかいたよ。というか、魔獣の種類ひとつごとに一匹ずつだったな。牛の魔獣に牛の頭の魔獣、蛇の魔獣に蛇の髪の魔獣だっただろ?あんな感じ」

 「ローイルもいたんですか?」

 「ううん、蛇の魔獣はいなかったから、多分あいつもいなかったと思う」

 「そうですか…」


 わたしにとっては許しがたい相手ですけど、知らないところで滅しても、なんですしね。


 「…あれだけの乱戦だと、私の呪言の準備も落ち着いて出来ない。いくら詠唱中は魔獣に直接は襲われないといっても、数が数だから何も無いなんてそんな保証もない。だから、無防備に近い私を守ってさ…バイセル、ウルガ、クレセン、ミヴラスが…やられた。何か言い残すことでも聞ければよかったんだけど…そんな余裕もなかった」

 「………」


 …ウルガさんとミヴラスさんは私も知ってました。二人ともわたしより年下の、少年といっていい歳だったはずです。


 「バギスカリみてーなヤツは二匹遭遇して…アコみたいに上手くは出来なかったから、何度も何度も倒して、それでやっとやっつけたと思ったら周りはまだ魔獣がうじゃうじゃしてんのさ。いくら私でも呪言を何発も使い続けられないから、どーしようもなくなったら下がって交代して。飯食べて少し休んでまた戦って。そんなことを十日くらい続けたら…やっと魔獣が消えた。全部消えてた。でも…」


 ずぅっと無表情で話していたアプロが、ようやく感情らしいものを顔に浮かべます。

 けれどそれは、わたしがわたしを責めたくなるような、苦悶に満ちたものだったんです。


 「…守れなかった。姉ちゃんの残した、姉ちゃんが大好きだと言ってた街を、守れなかったんだ……私たちが必死に、頑張って街の外で戦っていた間もっ!…魔獣は街に侵入して、住民を傷つけて殺して、全部終わったと思って街へ戻ったら…泣いてるひとしかいなかったんだっ!生きてる人間はみんな、泣くことしか出来なかったんだよ!誰も、助かったって笑えなかった、喜べなかったんだよぅ……アコ、あこぉ……私、街を、みんなを守れなかったんだよ……っ!あ…ああっ……あ、あぁぁぁぁぁぁっっ!!」


 アプロは、哭きました。

 きっと、亡くなった衛兵さんのご家族に、その死を伝えたときも泣かなかっただろうと思います。

 けれどそのアプロが、わたしの前で立ったまま、どうしていいかわからないように、ただ大声をあげて泣いていました。


 「あこぉ…っ!わたし、わたし頑張ったんだ…っ、みんなで頑張ったんだよ…?でも、でもさぁ……街、守れなかった……守れなかったよぅ……頑張ったのに、守れなかったぁ………あ、あああああ……ごめん、ごめんなさい……姉ちゃん、みんなぁ………ごめん、ごめん…ごめんなさい、守れなくて……ごめんなさい………うわぁ、わぁぁぁぁぁ…っ!!」


 がんばった、でも守れなかった、ごめんなさい。

 アプロはただそれだけを繰り返して、本当に子供のように泣きじゃくるのです。

 わたしの胸にでもすがりつけば少しは楽になれるのでしょうに、わたしを拒んで泣き続けるのです。

 そのことが、わたしを苛みます。アプロと一緒に行けなかったわたしを責め立てます。

 アプロが直接そう言うのではないのです。でも、わたしは自分が許せません。アプロと共にいると決めたくせに、そう在れなかった自分がどうしても許せないのです。


 「……あこ、あこー……何か、何か言ってよぅ……何も出来なかった私を叱ってよ、あこぉ……」


 そんなこと出来るわけないでしょう?

 アコを叱る資格はわたしには無いんです。

 戦ってきたひとを、戦わなかったひとが謗る資格なんかないんです。

 例え、わたしにそうされることでアプロが救われるとしても、わたしはアコを叱ることが出来ません。

 わたしに今出来ること。それは。


 「…アプロ。考えよう?二人で一緒に、考えましょう?そうするって、そうしたいって決めたように、二人でこれからどうするべきか、考えよう?」


 止まらない涙を手で拭うアプロの肩を、わたしはようやく抱きます。

 さっき着替えたばかりの喪服は、もうアプロの香りに染まってました。


 「…うん……アコ、アコは私と一緒に居て、考えてくれる……何も出来なかった私が、これから何が出来るか一緒に、考えてくれる…んだね?……ひぐっ」

 「もちろんですよ。わたしはアプロと一緒にいます。だから、ね。アプロ」

 「……うん?…」


 抱きしめたアプロの首筋から匂い立つものを得て、わたしは一つだけ、前向きな提案をするのです。


 「…今日は、休も?みんなにこらーって怒られるくらい、いっぱい休もう?そうしてご飯食べて元気出てから、また一生懸命考えよ?」

 「………うん…」


 こくん、と頷いたアプロの髪がわたしの鼻先をくすぐって、ひどくこそばゆい思いを、したのでした。



   ・・・・・



 「…おはよー、アコ」

 「………」


 …朝どころか昼過ぎてます。さっき大広場の大鐘楼の鐘が鳴ってたから間違いありません。


 「……ん、いっぱい寝たし。元気出たか?アコ。…アコー?」

 

 わたしは、背中の向こうでもぞもぞしてるアプロの気配にもちろん気付いていますし、多分アプロもわたしが起きていることはわかってると思います。

 でもですね。


 「…なんだよー、昨夜はいっぱい寝て元気出せー、って言ってたじゃんか。ちゃんとアコの注文通り、元気でたぞ?なんで機嫌悪いんだ」

 「………」


 いや機嫌悪くなって当然じゃないですか。

 昨夜は二人一緒に、アプロのベッドで横になりました。

 流石に服は脱いで下着姿でしたけど、すごく穏やかな夜でしたよね。ええ、明け方近くになるまでは。


 「アコ、ほーら。起きる。起きて私に顔見せて」


 裸のアプロが、同じくすっぽんぽんのわたしの肩を掴んで、強引に自分に向けます。

 えー、確かにアプロ元気ですよ。にっこにこしてますよ。反面わたしはかつてないほどにぶーたれてますけどねっ!


 「…なんで怒ってんの?」

 「なんでって……この有様になって怒らないわけないでしょうがぁっ?!」


 と、わたしは腕に残るひっかき傷と噛んだあととキスマークをアプロに突き付けます。ちなみに跡が残っているのは腕どころではなく、肩も首も背中もお尻も足もお腹も、全身くまなく、です!


 …そうです。明け方近く、目を覚ましたアプロはわたしを強引に起こして、いきなりおっぱじめやがってくれたのです。

 その時のアプロの様子ときたら…もお、獣でしたよっ!ケダモノでしたよっ!!

 いつもはしたりされたりなのに、明るくなりかけてからふつーはお仕事始める時間を過ぎるまでっ!一方的に責められっぱなしでしたよわたしっ!!

 せめて泣きながら、とかだったら少しはいじましくもなりますけど、ただひたすらよくぼーの赴くままって顔でしたからね、あれはっ。

 …もー、噛むわ力任せに抱きしめて爪のあとつけてくれるわ、体中にキスして跡つけまくるわで…わたし今日一日人前に出られませんよ、もぉっ!!どーしてくれるんですかっ!


 「でもアコも悦んでたじゃんかー」

 「…知りません」


 いえまあ、途中血迷ってすんごく興奮してたのは否定しませんけど。


 「……なんだったら、跡が消えるまで、もっかい、する?」

 「しません!……って、まあ元気になって良かったですよ。それだけは何よりです」


 にへら、っと締まりのない笑顔になったアプロを見て、安堵するやら腹が立つやら。 

 お屋敷のこっちの方には、基本アプロが起きてくるまで誰も来ないんですけど、この時間だとどーなのか…声聴かれてたらと思うと、思わず引きこもりになりそーな、わたしです。


 「ん。お腹も空いたしなー。そういや昨日の昼から何も食べてなかった」

 「普通色気の前に食い気でしょーが。もう少し人間らしく振る舞いなさいってば」

 「だってアコがすんげー可愛かったんだもん」


 昨夜わんわん泣いてたアプロだってかつてないくらい可愛かったですよ、と言いたかったのですけど、笑い話にしていいのかどうか。

 そう思って口ごもったわたしですが、アプロは横になったままの体勢で、わたしに勢いよく口づけして言いました。


 「…ん、アコはアホだなー。あんな姿見せるのアコにだけなんだから、これからいくらでも見せてやるよ」

 「後悔に塗れて泣き止まない姿ならなるべく見たくはないです。今度はうれし泣きするところでも見せてくださいね」

 「うん。頑張る」


 頑張るよーなことなのかしら、と思いつつ体を起こします。

 なんか無茶な姿勢をとらされたせいもあってか、体のあっちこっちがまだ痛いです。もちろん、アプロの残した傷痕のせいでもありますけどね。


 「アプロ。あなたは戦ってきたんです。そしてわたしはこれからです。だから、アプロを休ませるつもりはありません。これから戦い始めるわたしの背中を、お願いしますね」


 うん、ちゃんと寝て元気になるのは良いことです。昨夜のわたし、いいこと言った。


 「…いい顔してるとこ悪いんだけどさー。私が頑張ってきてアコがこれから頑張るなら、私はしばらく休んでてもいーんじゃない?」


 …そしていい話にまとめたところを混ぜっ返すんじゃありません。まったくもう。

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