第16話 天体観測と望遠鏡
MDが部屋の片隅から発掘された。かなりの年代物だ。もう、十年前のものだろうか。確か、これは学生時代によく聞いていたBUMP OF CHICKENの曲が入っているはず。高校に通学する時にチャリに乗りながら口ずさんでいた記憶が蘇ってくる。
天体望遠鏡を買って、一緒に観測に行ってみない。と言って、夜中の高校にみんなで侵入して星を見たのは懐かしい思い出だ。
俺だけがやたらとでかい望遠鏡を持っていて、当時、好きだった女の子はとてもじゃないが買えないような反射望遠鏡を持ってきていた。
月を映し出すのに必死だった俺をあざ笑うかのように、幾つもの惑星を観測していた。
帰り道、橋の上から望遠鏡を投げ捨てようとした。何も見えない。そんな望遠鏡を持っていても仕方がない。意味がない。そう思って振りかぶった瞬間に、携帯電話の音が鳴った。
ショートメールが来ていた。その女の子からだった。月が綺麗だったからまた見せて欲しい。そんなことが書いてあった。彼女の望遠鏡だと倍率が高すぎて、月を観測するのには向いていないそうなのだ。
俺は携帯電話をポケットにすっこんで望遠鏡を背中に背負った。自転車に乗り家路に向かうことにする。まだ、冬の寒さが残っている春先は、体を芯から冷やす。身震いしながら白い息を吐く。
まだ夜明けまでは時間がある。もう少し空を見上げていよう。月は沈んでしまったが、明日には月齢が進んだ月が見られるはずだ。都会の灯りで一等星しか真っ当に見えないこの街だけれど、晴れているならば明日もきっときれいな星を観察することが出来るはずだ。
俺は昔のことを思い出しながら、当時、よく聞いていた歌を口ずさんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます