第15話 剣戟は武術を超えるのか?
「うぬが選んだのはその武器か」
隻眼の大柄な剣士が、俺の前に立ちはだかった。
「そうだ。お前こそそんな武器で戦えるとでも思っているのか?」
敵を挑発しながら俺は武器を振り回す。多節棍の形状をしているこの武器は、回転させるほど効果がある。盾で面として受け止めるならまだしも、剣のような形状で受けようとすれば、そのまま節で折れ曲がり敵にダメージを与える。
もし、ダメージが与えられなくとも、剣を絡め取るように巻き付くことになる。
「よく見てみろ。俺の武器はお前の武器より長い。つまり、アウトレンジで戦えるということだ。無意味な殺生など望むところではない。今すぐ、我が門に下り、傘下に入れ」
隻眼の剣士は諭すように話しかけてくる。確かに、その気持はわからなくもない。俺も、隻眼の剣士に髪の毛一本ほどの恨みすら無い。この潔さを感じさせる剣士を倒したくない。その気持は同じだ。
けれども、それ故にお互い一歩も引けないことが解っていた。ここで相手を倒さなければ、自分たちが次のステージに進めないことを十分に理解していた。
隻眼の剣士の武器は、腕より長かった。俺の多節棍のような武器より、一節分くらは長そうである。だが、それ故に火が通っていない。弱々しい武器であると感じられた。
「何だ、その色は。まるで生ではないか? 俺のフランクフルトソーセージ三連に比べて、ちゃんと焼かれていないのではないか?」
「抜かせ。貴様なんぞ一刀両断にしてくれるわ」
剣士は、俺の体勢が不十分と見てフランクフルトを振り下ろしてきた。ヤバイ。真っ当に食らうわけにはいかない。俺は体を捻り、口で受け止めた。
モグモグモグ。
「やはり、火の通りが甘いではないか。それに、ケチャップもないのにどうしろと」
俺の口撃に反論できないと見るやいなや、剣士は俺の武器にかじりついた。
「貴様こそ、これは無名メーカーの安物ではないか。どうしてシャウエッセンを使わない。もぐもぐ」
剣士の口撃に躊躇った。俺は奴を倒さなければいけない。やつも俺を倒さなければならない。
戦いは長くなりそうであった。
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