第9話 怪しい店
川上さんに、「ユジノサハリンスクに怪しい店があるんだよ。一緒に行ってみないか」と誘われて興味本位で行ってみることにした。本当はカジノに行きたかったのだが、「あ、あんなの日本人が行ったらインチキされるだけだから止めたほうがいい」と言われて断られたのだ。本当は負けてもいいからカジノに行きたかったんだけど、「下手に勝っちゃうと警察行きだよ。どうせ、奴らグルだからこっちの言い分なんか一切通らないし」とまで言われては、諦めざるを得ない。まあ、怪しい店ならば、それはそれで楽しめるだろう。と思って同行させてもらうと、デパートみたいなところに到着した。
「川上さん、怪しい電気製品でも買うの?」と訊くと、彼はニヤリと笑い。「黙って着いてきなよ」と言う。どうせ、ロシア語なんてわからんのだから、どうでも良い。と思いコバンザメのように引っ付いて歩いていると、こじんまりとした電気屋のブースの前で立ち止まった。
川上さんが、どう見ても日本人に見えるおっさんに何やら話しかけると、おっさんは手招きをして店中に案内してくれる。どうして、こんなところに怪しいサービスがあるのか。そう思って一人興奮していると、ある棚の前で立ち止まった。
さて、この棚に何の意味がある。と思い目を凝らすと、DVDのタイトルが沢山並んでいる。ディズニーやらハリウッド作品やら、ジブリもある。こんなところで売られているなら海賊版だろう。その意味では怪しいものだよな。と思い内心がっかりしていると、棚をおっさんが動かした。二重棚である。奥には、これまたアダルト向けの怪しいDVDのタイトルがずらりと所狭しと詰まっている。「興味があるタイトルがあったら言ってくれ」川上さんにそう言われたが、在住の川上さんと違い、別にサハリンまで着て買わなくても。と思い断ってしまった。
確かに怪しい店ではあったが、期待違いではあった。それでも、性欲は世界共通のものなんだな。と思い少しばかり楽しい気持ちになっていた。
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