第3話 血筋こそ最強
「私が半純血竜神?そんなまさか。」
思わず立ち上がってしまった。
私が人間じゃない?そんな、まさか。今まで他のこと変わらない成長をしてきたし、そもそも同種ならひと目で同じ種族だってわかるって聞いた。私にはここに住む人たちが仲間だなんてわからない。
「いえ、身元を確認させてもらいました。あなたのお母様は数年前に失踪した混血竜神。お父様は未だわかりませんが、人間ではなく純血竜神のどなたかです。」
ミラさんは写真立てを持っていて、それを私の前に置いた。
それには四枚ほど写真が填められている。
どの写真も美しい人ばかり。大半の人物に共通点があって、赤い目をしている事だ。
竜神族は赤い目が特徴と聞いたことがある。
すれ違う人の殆どが赤い目だし、何よりも今対峙している二人共が真っ赤な目をしている。そして私も。
「この写真が幼い頃のお母様ですよ。」
一枚写真に映る子供を指差してミラさんは懐かしむように目を閉じた。
ここに写っているの純血竜神と言う人達の中に父親が居る。ただ、写真に映る人たちすべてが似ていて一目じゃわからない。
そもそも、母も同じ様な顔をしているからこの顔だって母親似か父親似かがわからなくなってしまった。
写真の中に私と同じ系統の毛色をしている男の人は片目を髪の毛で隠している短髪の男の人で、赤紫に近い色をしている。
「この人は?」
「ヴィルトル様です。長男で次男のユーリカ様と共に旅に出てるんです。子供が出来たって話ならすぐに分かるんですけどね?隠す意味がないですし。」
「そうよね?別に近親だからって人間とは違って問題ない種族だから隠す必要も無いわけだし。」
不思議ねぇ?とメリーアさんがとても可愛らしく不思議がるので思わず見惚れてしまう。
お人形さんみたいで本当に可愛い。
「うつは!居るかな?」
「はい!」
コンコンコン!とノックと共にカティナさんの声が聞こえてきた。返事をすると、カティナさんとギルド長のカティルさんの姿が見えた。
「カティナから聞いた。大変だったって?」
カティルさんはカティナさんのように少女的な容姿だか、スラリとした長身かつ細身の体をしている。白に近い金髪は肩まで伸ばしている。
双子なんです。と言われてもにわかに信じ難い。
カティナさんの頭が丁度おへそのあたりに来る身長差。たぶん私より頭1個分ぐらい高いだろう。
カティルさん私の前に立った。仁王立ちで。
王族と分かっているからか、目上だと言うからか威厳が凄い。
双子であるカティナさんはのほほんとした雰囲気なのに対して、カティルさんは自然と身構えてしまう。
「襲われたときの事で、何か覚えていることは?」
「赤き皇太子がどうとか、ソロもぐりのくせにしぶといとか。言ってた気がします。」「……。」
押し黙ってしまった?これだけじゃあ……思い出せ私の脳みそ!!!
『よぉ、………に入った新人だろ?』
『……で……俺たちは三人で……ルズ。』
舌打ちをしてカティナさんを引き寄せたカティルさんは、忌々しそうに口を開く。
ソレだけで予想がついちゃう有名どころなのかな?
「今回の犯人はシルバーウルフズだろう。
そもそもあいつらウチに置いておくだけで損害を生むからな。」
カティナさんがカティルさんに耳打ちをすると、何かを許可したようで、ニヤリ。とカティナさんは笑う。
「しばらくは潜らないでおこうか。」
「潜らないですか?あの、稼ぎたいんです。孤児院を支えるために。」
「それは危険だよ?それに、支援ならこっちでなんとかするし。」
「本当ですか?ありがとうございます!」
「なら、私が手続きをしてきますね。安心してください。ギルドでの支援になりますから!」
ニコリ。とミラさんが笑ってそう言う。カティナさんカティルさんも頷いているので、もうそう決まっているのだろう。
「うちでは慈善事業の一環で街の清掃をしていたんですが、そろそろどこかのパトロンになろうという話が出ていたんですよ。」
「ん、そして孤児院の者に是非ともギルド職員にをとな。」
カティナさんも、納得したようにウンウン。と首を立てに振っている。確かにギルド職員なら危険もそんなにないし、ギルドがパトロンになる利益もある。
私を置いてけぼりに、カティナさんとカティルさん、ミラさんで話を勧めていってしまう。呆然と見ていると、メリーアさんがどこからか二人の美少女を連れてきて私に紹介してくれた。
「今日から貴方のお世話をする、エリザベートとユウカ。」
エリザベートは黒髪のツインテールをしている人で、角が生えている。まるでモデルさんのようにスラリとした高身長の人だ。
ユウカは赤毛のポニーテールをしている。
カティナさんの赤い髪の毛と違って、人間の赤毛と呼ばれる系統の髪の毛の人だ。
「エリザベートです。」
「ユウカです。」
「よろしくお願いします。」
エリザベートさんは嬉しそうだけれども、ユウカさんはどこか嫌そうに挨拶をされる。
まぁ、孤児院にいたからってのもあるのかも。
「それじゃあ私は。二人共。よろしくね。」
「はい。」
メリーアさんはミラさんが話し終えたタイミングで、一緒に部屋を出ていく。
エリザベートとユウカはドアの近くで待機している。
「うつは。」
「はい!」
カティナさんと話し込んでいたカティルさんに呼ばれた。
少し苛ついているのか、ムッとした表情で私を見てきた。なにかしたかな?
「今後のことが決まった。しばらく一人にならないように。」
「わかりました。」
「俺からはそれだけだ。カティナ、あとはちゃんとやってやれ。」
「わかってるよぉ。」
カティナさんの頭をグリグリと撫で付けてからカティルさんも部屋から出ていった。
カティナさんは持っていたらしいナイフをどこからかとりだして私にそっと手渡してきた。
私が使っていたナイフの柄に似ているけれど、刃先の長さが鞘腰にも長さが明らかにちがう。
鞘から取り出してみると王冠を頭に載せた蛇の彫りが入ったクリスタルの刃が輝いていた。
「凄い、きれい。」
「とても質のいい水晶だったからな。柄は変わってないが、刃の方は長くなったから、この施設の紹介ついでに訓練場で振り回して見るか。」
カティナさんはメイドになにか指示を出して私を連れてギルド施設と居住スペースの案内を始める。勝手に。
ギルド併設施設の一般公開されていない部分はすべて竜神族の生活スペースだ。すれ違う人たちが深く深くお辞儀をしていて、なんか申し訳なくなる。
「カティナ様。」
案内してもらっている最中に金髪の男がカティナさんに話しかけてきた。私を見て少し困惑する様子だったけれど、背筋を伸ばして彼はカティナさんに挨拶をする。
「ご機嫌麗しゅう。カティナ様。ご帰還の知らせを聞いて飛んできました。幾度見ても美しい。」
「久しぶりだな。私の背を越したんじゃないか?人間は早いからなぁ。」
「そうですね。今ならあなたを完璧にエスコートできる気がしますよ。」
その人は頭2つほど差のあるカティナさんに目線を合わせてはにかむ。
直視していたら絶対に惚れてしまうようなその笑顔を鼻で笑って、カティナさんは私を引き寄せる。
「はは、エスコートならこの子にしてやってくれ。半純血の娘さ。うつはと言う。
うつは、こいつはジョセフ=ロンバート。勇者だ。」
紹介されてその人が爽やかに挨拶をしてくる。
イケメンの爽やかな挨拶は本当に惚れてしまいそうになる。
「ジョセフ=ロンバートです。以後お見知りおきを。」
「は、はい。うつは=コトリアソビです。よろしく。」
年は同じぐらいなのかな?
勇者というものは、かつてこの土地に存在していた地獄の入り口を建国の王とともに封じたとされる人間の事だ。勇ましい者というのではなく勇気ある者と言う意味で勇者と位置付けられたらしい。
地獄の入り口を塞いだときに勇者の魂が強化されてその魂が転生されているらしい。
メディアに出ることが少ないため、顔を知らなかった。
確か、軍に所属していると聞いたことがある。
「忙しいだろうに。」
「はい。せっかくお目にかかれたというのに、残念ですが自分は戻らねば隊長殿に怒られてしまいます故。」
「はは、なら気をつけて帰れよ?お嬢さん方に付かれてしまう前にな。」
苦笑いをしてその人は慌てたように早歩きで立ち去って行ってしまう。
「私のことが大好きなんだあいつ。博愛だがキチンとやるべき事は分かっている男さ。欠点としては博愛し過ぎで恋愛対象という幅がほとんど無いぐらいだな。」
「そうなんですね。」
「顔がいいから惚れられる一方だが、それも勇者として人気だと思っているから、レディー達は報われないのさ。」
それから自室や食堂、ギルド内の案内を終え、最後に紹介された訓練上でナイフの振り方を教わることになった。
カティナさん自身はナイフではなく短刀を好んで使うため、代わりにメリーアさんが教えてくれることになった。
初歩的な動作から始まり、扱い方のノウハウ等の勉強もして日が沈むまでメリーアさんに叩き込まれた。
・・
翌日。カティナさんがお城に行くらしく、馬車に乗って城まで向かうことになった。
帝王に会いに行くと言われて、最初は断ったけれど私のひいお祖母様というらしく、またぜひ会いたいとの知らせが来ているために同乗することになった。
これからあの帝王に顔を見せるというので、とてもお腹が痛くなってくる。
帝王フレデリカ様はいろんな国を滅ぼした人だ。
噂に聞くと冷酷な人と聞いているからなんだか怖いな、
「馬車に乗るのは初めて?今や車やテレポートがある時代だ。馬車を所有している物は少ないだろうねぇ。馬自体を持ってる者はいるが、馬車まではないから。」
「そうですね。」
馬車を怖がっているの思ったらしいカティナさんは馬車のカテーンを開けて外を見るように促してきた。
窓から外を見てみると物珍しそうにこちらを見上げている人々が大勢いた。
見上げている人の中にチラホラと拝んでいる人がいる。多分その人は王族を信仰している人達なんだろう。
馬車はどんどんと城に近づいていく。
まさか、こんなことになるなんて思わなかった。小説みたいな展開だけど私は主人公みたいに堂々とはできないだろうなぁ。
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