永遠に失くしたハッピーエンドの物語

kobahiro

第1話

この文章を読まれているあなたは『機動戦士ガンダム』放映当時何歳だったのだろう?本放送時、私は14歳〜15歳だから、主人公のアムロ・レイとほぼ同年齢だ。


中学の頃クラスでガンダムの話をしていると、嫌味なM島がやってきて「何?ロボットマンガの話?卒業しろよくだらねえ」と言って去って行った。そんなM島も2年後の劇場初日やガンプラの列に並ぶことになるのだが…その話は本題からそれるので割愛(笑)


放送中のイベントに友人と行った。ガンダム1話2話の上映や富野由悠季(当時は良幸)監督自身によるパロディコントを声優さんが生で演じていた。イベントに参加出来なかった声優さんの応援コメントも流れ、イベント終了後は参加者全員にプレゼントが配られた。私はまだ一般の書店に置かれていなかったアニメック6号。友人はクローバーのガンダムの玩具(笑)

(玩具は今考えるとお宝かもしれない。)

楽しいイベントだった。作品を応援してくれるファンに対する感謝の気持ちに溢れていた。僕らはますますガンダムが大好きになった。


ガンダムは視聴率は撼わす、52本の予定だった物語は43本になった。僕は1年戦争が終わった世界でアムロやフラウが学校に通い、幸せに日常を過ごしているシーンを想像し1人思い浮かべたり。


番組が終わった後もアニメ雑誌はイラストや感想、パロディ漫画などで盛り上がった。そしてついにガンダムの映画化が決定‼︎映画直前のイベント『2・22アニメ新世紀宣言』を雑誌で知った。高校生になった僕らは「映画のタイトルは『機動戦士ガンダム』としか表記されていない。ヒットしなければ放映短縮されたテレビシリーズのように一本で終了する可能性がある!イベントはアニメ雑誌の盛り上がりを考えると2000〜3000人くらいは集まるかもしれないが、自分達も微力ながら参加して盛り上げよう‼︎」そんなコトを話し2月22日『アニメ新世紀宣言』の会場へ向かった。

改札を出ると新世紀宣言に集まってきたファンの人々で溢れかえっていた。スタッフも警察官もさばききれない人波、イベント音声も人の怒声で消され、いつ事故が起こってもおかしくないような状況だった。しかし富野監督が話しはじめると嘘のように静かになった。そして群衆の中アニメ新世紀宣言が読み上げられた。僕は『ガンダムはもう僕が応援してもしなくても関係ないくらい大きな作品になったんだ』とボンヤリ思った。(新聞を見ると1万5千人集まっていたという。)


映画『機動戦士ガンダム』はヒットした…いや、そんなレベルではなく『哀・戦士編』『めぐりあい宇宙編』と右肩上がりでの大ヒット‼︎その後も『ガンダム』と名のついた作品がテレビ、劇場、OVA、小説、ゲームとさまさまなジャンルで何十作品も作られ続け、ガンダムのプラモデル『ガンプラ』は大ブームとなり、現在まで毎月新作が発売され続け、ガンダム専門のマンガ月刊誌『ガンダムエース』は書店で平積みされている。

ガンダムの年間売り上げは700~800億円で、実物大のガンダムがお台場に出来、2020年には実物大の動くガンダムが横浜に出来るという。


話を戻そう。1985年には『機動戦士Zガンダム』がスタート。今でこそ『Zガンダム』は愛される作品になっていたが、当時はココで離れていくファンも多かった。アムロの扱いにも当時は疑問を感じていた。そして88年『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』公開。“アムロとシャアの因縁に決着がつくと宣伝された時は『ガンダムのストーリーラインってそんな感じだったか?』とズレていくテーマや生死不明なラストにも疑問を感じたのを覚えている。


『∀ガンダム』の物語は「機動戦士ガンダム』から1万年後の世界。アムロとララァが夢みたあの世界はなんだったのだろう?めぐりあい宇宙編」ラスト“And now... in anticipation of your insight into the future."(そして、あなたの未来への洞察力に期侍します)というメッセージに対し、1万年後も戦争を繰り返しているのか?とフィクションであっても絶望感を感じていた。


安彦良和さんの『いまはもうそれぞれのガンダム』と書かれたインタビューが印象的だった。

ガンダムが大ヒットして『良かったこと』『悪かったこと』を比べてみれば、それでもはるかに良かったことが多い。今となっては『戦争のなくなった世界で幸せに暮らしているアムロ達』は僕の妄想だ。少しセンチメンタルな気持ちになってしまったのだけど、ガンダムという作品は今でも大好きだし、とても影響を受けた大切な作品であることに変わりはない。ガンダムは今年で40周年。僕もいつのまにか50代になっていた。これからも…多分一生、機動戦士ガンダムという物語を追っていくと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

永遠に失くしたハッピーエンドの物語 kobahiro @kobahiro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ