3話 彼らはデートをするその1【うわぁ、The 京都って感じ】

 4月14午前10時


 本日は俺の彼女でもなんでもない『新羅佑厘佳』とデートをすることになった。

 そして、今はその肝心の彼女を待っているのだが・・・佑厘佳の家の前いや、門前で・・・約10分前にインターホンを鳴らしたのだが、ぜんぜん来ないのである。


「はあ、アイツぜんぜん来ないじゃんか・・まあ、女子だから服選びも大変なんだろうけどよ、相手は俺なんだぜ。気合なんて入れなくても・・・」


 と、言いつつも俺も少しばかり気合を入れたんだよなぁ。

 青のデニムに白のシャツ、青のベストを纏っている。なんといっても極めつけは、いつもはコンタクトをしている俺は眼鏡にしてみた。

 眼鏡は太目の黒縁のものである。これにアイツゆりかがどんな反応を見せるのか見ものである。

 さぁ、約10分俺を待たしたんだ。可愛くなかったら俺が家に連れ戻して服から選び直してやる。

 と、考えていると家の扉が開く音がした。

 佑厘佳が出てきたのである。

 次に門の開く音がした。


「ごめんなさいね。10分も待たせてしまって、少し準備に戸惑ったもので。」

「そうか、行くぞ」

「え、服の感想とか·····ないの···かな?」


 照れくさそうに俺の方を向きながら言った。

 頬は少し赤くなっていた。

 くそ。かわいいな、おい。


「かわいいよ・・・ったく、恥ずかしいこと言わせんな」

「えへへ///」

「薫もその、、め、眼鏡、、似合ってるよ、、」


 どうやら、性癖にはまったらしい。まったく照れるな。かわいらしい。可愛いのは十数年前から知っているが、何故か好きになれない。ずっと一緒にいるからだろうか?。まぁ、考えても仕方が無いことだが.....。

 傍から見たらこれはカップルに見えるのだろう。なぜなら、先ほどからたくさんの人に見られているのだから・・・。


「あら、新羅さんの子と彩島さんの子、とっても仲が良いのね」

「カップルみたいね」「色んな人に話さなきゃ」


「おい。佑厘佳行くぞ」

「え?あっ、う、うん」


 俺は言葉を発すると同時に佑厘佳の手を握って引いた。佑厘佳の手は柔らかく、赤ん坊のように暖かかった。

 俺たちは最寄りの駅につき改札をスルーして駅のプラットホームに降りた。

 電車はあと四分で来るようで俺たちは待っていた。手を繋いだまま...。


「薫。手、繋ぐの久しぶりだね」

「あぁ、そうだな」

「いつぶりかな?」

「ん〜。9年くらいじゃないか?」

「そっか〜。9年か〜。9年で手がゴツゴツしてて、おっきくなったね」

「お前は相変わらず、ちっこくて赤ん坊みたいに手が暖かいな」


 久しぶりに幼馴染と出掛ける。

 普通はこんなことはないのだろう。

 ここで言う普通というのは、双方が意識をしあっており、BL好きでない。というのを指す。

 まぁ、じゃないからこそ俺たちはまた仲良くなれたのだろう。

 ちょうど電車が来た。扉が開いて乗り込んだ。

 幸いなことに車内は人が少なくどこの席でもウェルカム状態だった。


「電車ってやっぱり遅いわね」

「そうだろうな。電車は時速30~90kmくらいしか出てないし、今なら50kmくらいしか出てないんじゃないか」

「へえー、そうなんだ」

「これは新たな同人誌のネタにしましょう。腐腐腐腐腐腐腐腐·····」


 なにか小言でいった気がするが、気のせいだろう。


「佑厘佳は部活入るのか?」


 部活の話を持ち出すと、食い入るようにこっち来た。ちょっといい匂いがする。·····なんか変態みたい。

 部活は入学式の次の日から始まっており、新一年生は部活見学をさせられている。


「そうなの!高校に来れば変わった部活があると思ったのに·····。」

「例えば?」

「奉仕部とか」

「それは俺ガ○ル」

「SOS団とか」

「涼宮○ルヒの憂鬱」

「囲碁サッカー部」

「それは日○な」


 などなど、全て的確なツッコミはしたが、アニメ、マンガの変な部活動だった。


「ないなら、作ればいいじゃん。古事記にもそう書かれてるぞ」

「その発想はなかった」


 電車に揺られながら他愛のない会話をすること約10分。目的の駅が見えてきた。

 今日、俺達が遊ぶのは『嵐山』である。

 まぁ、ここが最終目標だったのではなくここから乗り換えをして、『嵐電嵐山駅』を目指す。


 駅に到着をして扉が開く。

 俺たち2人は席を立って扉をくぐって駅のホームに出る。

 階段をのぼり連絡通路を渡る。

 改札に切符を通して駅を出る。

 そこから約8分間歩いた。

 その間俺はと言うと...。


「私は俺○イルみたいな奉仕部を作って学校の為に偽善活動をしたいの。あ、その時は薫。あんたは強制参加だから」


 と、計画を話されていた。


「けど、部活作るの大変だぞ。校則にも校長先生との面談をしなくちゃ行けないんだぜ」

「大丈夫。もしダメだとしても権力を使って·····」

「いや、ダメだから」

「まぁいいわ。明日、担任から部活制作届けもらうわ」 

「そうだな」


 会話をしていると目的の駅『嵐電嵯峨駅』到着した。

 嵐電は事前に切符を買う必要がなく楽である。

 駅に入り、プラットホームに向かった。その2分後に電車が到着した。


「よし。これに乗るぞ」

「うん」


扉を潜って車内に入った。

嵐電に乗ってからも佑厘佳のマシンガントークは止まらなかった。

それに俺は適当に返していた。

車内アナウンスによって次の駅と言っても終点である『嵐電嵐山駅』に到着する事をお知らせされた。


「佑厘佳。降りるぞ」

「えっ?もう」

「え、だって終点だぜ」

「あっそっか」


かなりの人がいる中、列に並び透明な箱に210円入れて嵐電を出た。

出るとそこは、抹茶のような深緑の壁で囲まれていた。


「うわぁ、すっごーい。The京都って感じだね」

「いや、ここ京都だから」


はい、niceツッコミー。ってなんかひょっ○りはんみたいだな。


「うし、いくぞー」

「はーい」


歩幅を佑厘佳に合わせながら駅内を歩いていく。

周りは緑一色で抹茶を髣髴とさせる壁で、その中を歩く人はほとんどが外国人観光客だからとても京都という都市は日本の観光名所だということを改めて感じさせる。

外には京都や東京でかなり有名はロールケーキ屋さん『mizinnco』や八つ橋の店、おいしいと評判の漬物屋さんがあった。


「さぁ薫。はじめはどこに連れて行ってくれるの?」


佑厘佳が覗き込むような形で俺に質問をした。


「まだ内緒だよ。初めに少し歩くよ」


彼女は了解の意を示して二人並んで歩き出した。

周りは店が立ち並んでおり、ふりかけ屋などが道歩く人に声を掛けては試食をさせている。

その中を歩き進めていき、曲がり道を曲がった。曲がるとそこは先程とは雰囲気が変わり、閑静な住宅街となった。

目的地に行くまでに俺たちにはごほうび中のごほうびが眼に映った。

それはなんと、なんとですねぇ。ってこれじゃあ某しゃちょー系youtuberになってるよ。はい、いいますと前に右に175cmくらいの男性とその左に156cmほどの男の娘が耳に片方ずつイヤホンを付けてるのを目撃したのです。

目配せをした。こんなにもすばらしいものを見るとしたくなるでしょう。

『どっちが攻めか受けか』


「右×左」

まぁ普通だよな。身長の低いほうが受けに決まっている。これは俺の中では決定事項だから。


「左×右」


俺たちの間に火花が散った。


「「よろしい。ならば戦争クリークだ」」


俺たちは歩きながら戦争クリークを始めた。と言ってもただの口げんかなんだが。


「なんでだよ。ちっこいほうが受けって相場は決まってるだろ!」


怒りのようなものを言葉に込めて言い放った。

当然、佑厘佳は反論してきた。


「そんな相場クソ喰らえだわ。そんなのが決まっているのならこの世界が間違ってる」

「おいおい。そんな大企業のお嬢様がなんて言葉使うなよ。なら聞くけど、背の低いやつはどんな攻め方が出来んだよ」


どんなのがあるんだよ。そんなのSMプレイぐらいしか思いつかんぞ。


「考えて見なさいよ。ちっちゃいかわいい子ががんばってせめりゅのよ。かわいいじゃない。


あ、噛んだな。まぁ興奮すれば誰でも噛んじゃうよな。

ここは攻めないでおこう。まぁ確かに想像すればとてもほほえましいなぁ。


「うぐっ。た、確かに。けど、こっちも言わしてもらうけど考えてみ。かわいい男の娘ががんばって口とか手で御奉仕すんだぜ。くそ萌えるじゃあねぇか」


戦いは攻防一身の決して一歩も譲らぬ戦いになった。すると、前の人達ごほうびが我々に話しかけてきた。


「あの……何で言い争っているのか分からないですけど·····喧嘩はダメですよ」


天使のような笑顔と一緒に俺たちに話しかけてきた。くっ!眩しすぎて目が焼けて·····しまう。耳についていたイアホンは外されており、隣を歩いていた男性はコチラを見ながら男の娘を待っているようだ。


「「はい。すいません」」


あまりの神々しさに2人で息を揃えて言った。

その男の娘は笑顔で男性の元へと帰って行った。


「佑厘佳」

「何かしら」


俺たちはあの天使を見て、頭がクラクラとしている。


「自分の意見を変えるつもりはない」

「えぇ。それは一緒よ」

「けど、お前の意見は受け入れる」

「同感ね。私も同じことを思っていた所よ」


また歩き出した。数分も歩いていると鼻腔をくすぐる美味しそうな匂いが漂ってきた。

そう。のコレが目的で佑厘佳に食べさせたかったものである。


「何だか私の高貴な鼻腔をくすぐる香りがするのだけど、薫」

「お!気づいたか。ここまで来て食べさせたかったものだ」


佑厘佳は匂いに釣られてやや小走りになって匂いの元へと辿っていく。そして到着した。

『中村田総本店』ここは最近人気の女優『吉田里帆』がおしゃべり7で紹介していて、一度食べに来たことがあるのだが、それは文字通り絶品を表すものだった。だから、一度コイツの高貴な舌に叶うのか実験してみたくて連れて来たのだ。

店はなんとも昭和の商店街にあるお肉屋さんを連想させられるレトロな見た目だった。

店の前には店名の書かれた黒のシートによって作られた影がありその奥には精肉が並べられていて、より一層俺のイメージを固めた。

店内と言っても外だが、影の中に入ると店の店主らしき人が俺たちの存在に気付き接客を始めた。


「お、いらっしゃい。ご注文は?」

「コロッケ2つ。お願いします」

「はいよ。180円になります」


俺はポケットから黒の折りたたみ式の財布を取りだし、ボタンによって止められた小銭入れを開け100円硬貨と50円硬貨を1枚ずつ、10円硬貨を4枚取り出して青色のプラスチックで出来たトレイの上に置いた。


「あいよ、毎度あり。出来立てだから気をつけて食べな」


店主の手にはなんとも美味しそうな香りを漂わせるコロッケが2つあった。


「「ありがとうございます」」


コロッケを俺たちは一つずつ受け取り、簾で作られた天井の下にある椅子に座った。


「「頂きます」」


両手をあわせる事は出来ないが、声にして食べ始めた。佑厘佳は一気にかぶりついた。


「か、薫!これほいひい《美味しい》」

「だろ」フーフー

「なんでかぶりつかないの?」

「俺は猫舌を極めし者だからな☆《キラーン》」

「いや、それかっこよく言ってるけどただ猫舌が酷いだけだよね」

「あ、はい。そうです」


佑厘佳は出来立てを感じさせないほどバクバクと口にコロッケを運んでいく。

対して俺は猫舌を極めすぎて全然食べれない。何度を息をかけてやっと食べれるようになった。記念すべき1口目。


「ハフッ。んーまぁい。芋をベースに作られた少し甘さを感じさせる味に、牛肉が混ざりあって口いっぱいに味をハーモニーを感じさせる。例えるなら、R-○定とDJ松○の曲。mog○raのアンサーと韻○ンの返しの2on2マッチのラップバトル。生まれてきてよかったよ〜おっかさん」


そして、あっという間に無くなった。


「よし。行くか」

「そうね。行きましょうか」


椅子から立ち上がり店の方を見て言った。


「「ご馳走様でした。美味しかったです」」

「おう、ありがとよ。兄ちゃんの食レポ聞いてたら凄い伝わってくるよ」


また来た道を引き返した。全く同じ道を通り表通りに出てきた。


「次は猿と触れ合うぞー!」

「おー」


2人で小さく拳を空に突き上げてモンキーパークに向けて歩き出した。

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