冬の日のコメディ(台本形式コント)
ロベリア:ウォーレス、フラスコ割って試薬ぶちまけて床に大穴開けてくれてありがとう
ウォーレス:嫌味かよ…ちゃんと直しただろ……
ロベリア:そうね…ちょっと埃を払って欲しかっただけなのに、二日掛けの大掃除になるとはね……
ウォーレス:全部ひとりでやらせやがって…ちったぁ手伝ってくれよ
ロベリア:めちゃくちゃにしたのは君だよね?
ウォーレス:それを言われると痛いけど…一人でやらせたらもっと悲惨になるかもとか思わないの?
ロベリア:大丈夫、信じてるから
ウォーレス:ロベリア…
ロベリア:ウォーレス、君にそこまでのポテンシャルはない
ウォーレス:ポテンシャルってなんだよ
ロベリア:君に起こせるのは小さな事故だけ。事件なんて起こせない、そう信じてる
ウォーレス:くっそぅ、馬鹿にしやがって!
ロベリア:おっと、そんなに怒らないの。ほら、疲れたでしょ?飲みなさい
ウォーレス:え?優しくされると怖いんだけど…いやでも、労われて当然か…
ウォーレス、ゴクゴクとジュースを飲む
ロベリア:ふっ…
ウォーレス:え?何?つか何このジュース…変わった味だな……
ロベリア:全く、妙に賢くなってきちゃったから試薬飲ませるのも一苦労だよ…
ウォーレス:ぶっは!ウッソだろ?騙されたの!?何飲ませたんだよ!
ロベリア:これはね…『編み物がとてつもなく上手くなる薬』だよ!」
ウォーレス:編み物がとてつもなく上手くなる薬…?そ、そんなもの飲ませてどうしたいんだよ…
ロベリア:そんなことよりも!試してみたいでしょう?この薬の効果を。作ってみたいでしょう?素敵なセーターを!
ウォーレス:どこからともなく編み棒と白い毛糸が!!くっ…ロベリアの思う通りに動くなんて癪だ…けど、けど試してみたい気持ちに嘘はつけない…
ロベリア:今ならこの赤い毛糸も使っていい!
ウォーレス:そ、そんな!赤い毛糸があれば可愛いチャームポイントまでつけられてしまうじゃないか!くっそぅ、しょうがない…編み棒寄越せ!
ロベリア:その腕前…とくと見せてもらいましょうか!
暫くして
ウォーレス:出来たぜ…これが俺の、作品だ!
ロベリア:こ、これは…正面に大きなハートが編み込まれている…赤い毛糸だからハートだなんて…なんて安直で…ダサい……
ウォーレス:赤…血の色…とくれば、心臓だろ?
ロベリア:心臓の方なの・・・?だったらもう少し左に寄せるとか…いや、まあ良いわ。次はマフラーに挑戦してしてみましょう
ウォーレス:まだ作るの?
ロベリア:まだまだ、君の実力はこんなものではないでしょう?ほら、今度は緑の毛糸だよ
ウォーレス:そうだな!俺、やってみるよ!
ロベリア:ま、正確には実力ではないんだけど
暫くして
ロベリア:なんてこと…緑だからクローバー(作者注:生えてなかったらすみません)だなんて…安直どころか、ド直球な…
ウォーレス:さっきハートがどうのって言ってただろ?そのまま入れるってのも面白みがないから、四方に置いてみたんだ
ロベリア:ここでハート…?確かにクローバーの葉ってハートっぽいけど…まあいいわ。次は…手袋行ってみましょう
ウォーレス:まだ作るの?もう十分腕は見れただろ
ロベリア:あら?怖気づいたの?確かに手袋って複雑な形してるものね…流石にそれは作れないか…
ウォーレス:べ、別にそういう訳じゃ
ロベリア:でも、私は信じてる。ウォーレスなら作れるって信じてる。そう、5本指の手袋だって
ウォーレス:しれっとハードル上げるなよ!親指とその他くらいのを想像してたのに!くっそぅ、やってやる!!
暫くして
ウォーレス:どうだぁ!やってやったぞ!!人生でこんなに脳みそ使ったの初めてだ!俺って実は天才なんじゃないか?
ロベリア:ふっ…
ウォーレス:鼻で笑うなよ
ロベリア:一時でも夢見れて良かったね。もうそろそろ薬の効果切れるけど
ウォーレス:もうそんなに時間経ってたのか
ロベリア:この薬、結構使えるな…今のところ何の副作用も見られないし…大きな問題も起こしてない…。用途が限られるのがネックね……。あ、ありがとう。もう帰って良いよ
ウォーレス:……
ロベリア:どうしたの?私と離れるのが辛いのかな?
ウォーレス:それはない。…いや、立てなくて……
ロベリア:……はい?
ウォーレス:何か分かんないけど、足に力が入らなくて…
ロベリア:どれどれ……なるほどね。恐らく、編み物に必要な手先や脳を活性化させる為に、下半身の活動が最小限になったんでしょうね
ウォーレス:何それ怖い
ロベリア:ノーリスク化と思ったらこんな副作用があったとは…上手く行かないなぁウォーレス:え…これ大丈夫なの?一生動かないとかないよね?
ロベリア:ふ…
ウォーレス:ちょっと!?
ロベリア:時間が経てば全身に魔力が巡って回復するはずだから、大丈夫
ウォーレス:なら意味深に笑うなよ!ていうか『はず』なの…?
ロベリア:大丈夫、もしダメだった時は私が責任をもって…
ウォーレス:責任をもって…?
ロベリア:両親の元へ送り届けてあげる
ウォーレス:ただじゃ済まないんじゃないかなぁ
ロベリア:『格好いいところを見せたいとか言って、止めるのも聞かずに崖から飛び降りたんです!!』
ウォーレス:そんなすぐバレるような嘘吐くなよ…
ロベリア:なんでバレると?
ウォーレス:俺がバラすし
ロベリア:ふ…誤魔化しだと思われるに決まってる…
ウォーレス:お前、自分で思ってるほど信用無いからな?
ロベリア:それにしても、困ったなぁ
ウォーレス:ほんとだよ…
ロベリア:いや、君じゃなくてね
ウォーレス:この状況で俺じゃない…?
ロベリア:これから人が来るから帰って欲しかったのに、参ったなぁ
ウォーレス:人?誰?
ロベリア:ああ、ツカサだよ
ウォーレス:あいつか…何でもっと早く呼ばないの?片付け手伝わせればよかったのに
ロベリア:荒らしたのは君なのに?
ウォーレス:わざとじゃないし…
ロベリア:とりあえず、隠れてもらわないとね…このシーツ被れる?
ウォーレス:どっから出したの?いや、そもそもなんで隠れる必要が?
ロベリア:なんとなく?
ウォーレス:な、なんとなく…?特に理由なく隠れる気はないよ?
ロベリア:良いから早くこれ被ってじっとして
ウォーレス:嫌だよ
コンコンとノックの音
ロベリア:あ、もうほら来ちゃったじゃないか
ウォーレス:開いてるよー!
ロベリア:なんで返事したの?
ウォーレス:これで隠れる必要はないな!
ロベリア:なんでそこまでして隠れたくないの?
ウォーレス:なんでそんなにまで隠したいの?
ツカサ:…あの……
ロベリア:あ、ツカサ
ツカサ:お取込み中…でしたか……?
ロベリア:いや、気にしないで。なに、彼は布団をかけて眠れない悩みを抱えていてね。その相談に乗っていたんだよ
ツカサ:は、はあ…
ウォーレス:は、はぁ…? [ツカサと同時に]
ツカサ:それであの…何の御用でしょうか…
ロベリア:ちょっと渡したいものがあってね。お茶の支度をするから、ちょっと待ってて
ツカサ:お、お気遣いなく…
ロベリア:いいから
ロベリア、お茶を淹れに離れる
ツカサ:……ど、どうも…
ウォーレス:え?あ、どうも…
気まずい沈黙
ツカサ:あ、あの…大変ですね…
ツカサ(心中):布団かけて寝られないなんて…厚着とかで凌いでるのかな…
ウォーレス:へ?ああ、まあ…慣れてるし…
ウォーレス(心中):ロベリアの事か?さんざん実験台にはされてるからなぁ
ツカサ:そ、そうですか…風にはお気をつけて…
ウォーレス:?はあ…どうも…
ウォーレス(心中):風邪?
ロベリア、戻ってくる
ロベリア:どうぞ。紅茶で良かった?
ツカサ:あ…はい…
ウォーレス(心中):あれ?俺の分は?
ロベリア:このスノーケーキもどうぞ。貰い物だけどね
ツカサ:い、いえそんな!大丈夫です、お腹減ってないですし…
ロベリア:そう…悪くなる前に消費してしまいたかったけど、無理にとは言えないな
ツカサ:あ…えと……無理なわけでは…ないですけど…
ロベリア:じゃあ、貰ってくれる?
ツカサ:お、お言葉に甘えて…
ウォーレス(心中):あれ?俺の分は?
ロベリア:ふふ、美味しいでしょ?
ツカサ:は、はい…。あの、渡したものというのは……?
ロベリア:そうだったそうだった。はいこれ。プレゼント
ツカサ:え…
ウォーレス(心中):あれ?今渡したやつって…
ツカサ:こ、これは…?
ロベリア:開けてみて
ツカサ、袋を開けて中身を取り出す
ツカサ:…手袋?
ウォーレス:それ俺がむぐっ
ロベリアがウォーレスの口をふさぐ
ロベリア:なぁに?どうしたの、ウォールくん?何か気になることがあるなら、こっそり耳打ちして御覧なさい?
ウォーレス:お!……れがさっき作ったやつじゃんかよ…
ロベリア:そうね…私が、君に、作らせたものだね
ウォーレス:おお…あっさり認めるのか…
ロベリア:作らせたのはこの私なのだから、所有権は私にある
ウォーレス:そ、そうなのかー…
ロベリア:つまり私が作ったもの同然。分かるね?
ウォーレス:そうなのか…ってならねーよ!
ツカサ:あ、あの…
ロベリア:あ、ちょっと待っててね。すぐ済むから
ツカサ:は、はぁ…
ロベリア:ウォーレス…私がやってることは非合法スレスレなんだよ?人に知られたらまずいじゃないか
ウォーレス:自覚あるんじゃんか…本当にスレスレで合法なのかも分かんないし…
ロベリア:それに、自分で作ったことに出来たら格好いいじゃない?
ウォーレス:結局それか!おい、ツカサ!
ツカサ:ひっ!な、なんですか…?
ウォーレス:それ俺がつくっむぐぐ
ロベリア、ウォーレスの口をふさぐ
ロベリア:落ち着きなさいウォールくん。取り乱すんじゃない
ウォーレス:むぐぐ~
ツカサ:あ、あの…大丈夫ですか…?
ロベリア:大丈夫、すぐに落ち着くよ。それより、プレゼントは気に入ったかな?ちなみに手作りだよ
ツカサ:あ…その…受け取れないです…。お返しとか出来ませんし…
ロベリア:お返しなんて気にしなくて良いんだよ。それに、出したものを突き返されるのは、ちょっと悲しいな
ツカサ:あ……
ロベリア:気に入らないなら仕方ないね
ツカサ:そ、そんなことはないです…この手袋とか、五本指ですごいですし、マフラーも暖かそうで…。セーターまで入ってるんですね、これは…
ツカサ、袋から更にセーターも取り出す
ツカサ:うわぁ…これは…・ハート柄……あ!いえ…こ、これは何と言うかその…あの……先生が…作られたんですか…?
ロベリア:ふっ…それは勿論……
暫し沈黙
ロベリア:作ったのは彼さ!
ウォーレス:さっきの話は!?
完
アルヴィラッツストーリー用 @sa1k1san
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