ロベリアとウォーレス【脚本】

ウォーレス、部屋へ入ってくる。


ウォーレス:よっす~

ロベリア :はぁい、よく来たね。私の可愛い坊や

ウォーレス:やっぱ用事あるんで帰りますね、先生

ロベリア :ちょっとちょっと待ってよ

ウォーレス:いや本当用事あるんで~これで失礼しますね~

ロベリア :どんな用事?言ってみて?

ウォーレス:そりゃまあほら・・あの・・まあ色々・・ね?

ロベリア :言えないような用事なの?そう・・ウォーレスももうそんな年頃に・・

ウォーレス:やめて!なんかやだその言い方!悲しい顔しないで!

ロベリア :男の子の事情にあれこれ口出しは出来ないね・・

ウォーレス:だからやめろって!そういうんじゃないから

ロベリア :隠す必要はないんだよ?年頃なら当たり前の

ウォーレス:違うってば!わぁかった・・


ウォーレス、言いながら椅子に座る。


ウォーレス:嘘だよ・・・用事なんてない

ロベリア :だったらなんで帰ろうと?

ウォーレス:嫌な予感しかしないからだよ

ロベリア :嫌な予感とは?

ウォーレス:ロベリアが優しくしてくる時はロクな目に遭わないから・・・

ロベリア :おや?私はいつも君に優しくしているつもりだけど?

ウォーレス:廊下ですれ違っても挨拶すらしてこない癖に

ロベリア :お互い様でしょ

ウォーレス:オレが挨拶したって返さないだろー

ロベリア :挨拶してきたことなんかあった?

ウォーレス:・・・これだよ・・。それで今日は何用なの?

ロベリア :お、頼みを聞いてくれるんだね。嬉しいよ

ウォーレス:話を聞くだけな

ロベリア :ウォーレス、君は常々運動神経が良くなりたいと言っていたね?この薬を用いれば獣人も顔負けな身体能力も手に入る、と言ったらどうする?

ウォーレス:帰る

ロベリア :なぜ?君の願いが叶うんだよ?

ウォーレス:前、頭がよくなる薬でエライ目に遭ったから

ロベリア :ああ・・・あれは計算が少しズレてたからね・・


ロベリア、机の引き出しから小瓶を取り出し、軽く揺らす。


ロベリア :あの後何度か調整して、より安全な試薬は出来てるんだ。そっちにする?

ウォーレス:どっちも嫌です

ロベリア :あの時のような騒ぎは起きないよ

ウォーレス:前も安全だって言ってたよね?

ロベリア :間違ってないでしょ。無事だったんだから

ウォーレス:あれを無事というのか!?

ロベリア :頼むよ、良い子だからお願いを聞いておくれ。君が大好きなチョコレートケーキをご馳走するから

ウォーレス:お前教師だろ!生徒を実験台にしようとするなよ。あと買収すな

ロベリア :ウォーレス、今何時だと思う?

ウォーレス:え?8時過ぎ・・

ロベリア :そう、就業時間はとっくに過ぎてるの。つまり今の私と君は教師と生徒じゃなく、ただの従弟同士

ウォーレス:いや、教師はいつだって教師だろ

ロベリア :私は教師である前に、薬学者なんだ

ウォーレス:薬学者である前に教師であれよ!


ウォーレス、一つ大きな溜息を吐く。


ウォーレス:それさあ、自分で試してみた?

ロベリア :いや?


暫し、無言が続く。


ロベリア :私は客観的にデータを採りたいんだよ

ウォーレス:客観的、ねぇ・・・じゃあ、あの東洋人に頼めばいいじゃん。最近よく一緒にいるらしいけど

ロベリア :ツカサのこと?いやぁ・・それはちょっとね

ウォーレス:なんで?

ロベリア :生徒を実験台にするわけにはいかないだろ?

ウォーレス:オレは!?


ウォーレス、思わず立ち上がる。


ロベリア :ウォーレス・・君は生徒である前に従弟じゃないか

ウォーレス:従弟であると同時に生徒だよ!

ロベリア :悲しいなあ・・・幼いころはよく頼ってくれたのに・・・。近所の悪ガキにいじめられる度に『助けて、ロベえも~ん!』と泣きついてきたというのに・・・

ウォーレス:ロベえもんてなんだよ。誰だよ。そんなこと言ってないよ?


ウォーレス、言いながら座る。


ロベリア :液体になっても、体がまだら模様になっても私を頼り続けてくれたのに、どうしてこうなってしまったの?

ウォーレス:流石のオレだって100回近くも酷い目に遭えば学ぶよ!

ロベリア :まだ64度目だよ。相変わらず数に弱いね。いや、数に限った話ではないか・・

ウォーレス:どうでもいいよ!あと軽く酷いんだけど

ロベリア :しょうがない・・じゃあまあ、お菓子でも食べていきなさい

ウォーレス:とか言って、お菓子に薬混ぜる気だろ


ロベリア、一瞬止まる。


ロベリア :・・まさか。学者が同意もなしに実験なんてするわけないじゃない

ウォーレス:今の間は?絶対やる気だったな?

ロベリア :いつからそんなに疑り深くなったの?

ウォーレス:ロベリアさあ・・人を騙そうとする時だけ女らしくなるの気付いてる?


ロベリア、返事に窮する。


ロベリア :私はいつも同じだけれど?

ウォーレス:気付いてなかったのか・・・

ウォーレス(小声):言わなきゃよかった・・

ロベリア :はあ・・・仕方ない・・この手だけは使いたくなかったけど・・

ウォーレス:え・・何?何すんの?怖いんだけど

ロベリア :ウォーレス・・・

ウォーレス:じ、じりじり寄ってくるなよ・・・お、オレやっぱもう行くわ!じゃ!


ウォーレス、立ち上がり扉へ向かう。


ロベリア :待ちなさい・・・


ロベリア、立ち上がり追いかける。

ウォーレス、扉を開けようとする。


ウォーレス:じゃあね、ロベリア!・・・って、あれ?ちょ、開かないんだけど・・

ロベリア :ウォーレス


ロベリア、ウォーレスに近づく。


ウォーレス:ひっ、こっちくんなよ・・!な、なんなんだよ


ロベリア、何かを差し出す。


ウォーレス:こ・・これは・・・

ロベリア :4000ディタでどう?

ウォーレス:結局買収かよ!




ウォーレス:5000ならやる

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