第18話 錬金術のはなし

こちらはかなりお久しぶりです。

書籍化エッセイを、忘れない内に書いていたもので。


昨今、ラノベで人気の錬金術。

もちろん、魔力を籠めれば何でも出来るわけではありません。みんな色々実験して、試行錯誤を繰り返して体を壊していきます。それと知らず、毒を扱ったりしちゃってますので。

当時の最先端化学と言ったところですね。


錬金術・アルケミーは黒い土地の事、つまりエジプト発祥と言われております。

信奉する神はヘルメス・トリスメギストス。「三重に偉大なるヘルメス」です。

目的は非金属を貴金属(金)に変える事。


賢者の石によって、金を作ったり不老になれたりできると思われていました。

賢者の石の作り方。

硫黄(能動的な男性的原理)と、水銀(流動的な女性的原理)、二つを結ぶ哲学者の塩。

これらを加熱したり腐らせたりなんやかんやします。

化学の結婚などと言われますね。

ラノベ的には大問題。盛り上がらない。


賢者の石の作り方を記したとされる、「エメラルド・タブレット」と呼ばれる石板があります。

日本語訳も本に載ってたりしますが、これがまた詩的で、訳によって内容が違って見える(笑)。ぶっちゃけ「作り方、何処で語ってたの?」と思うくらい解らんデス。

かっこいい詩ですね。

「これは、嘘偽りなく真実、確実にしてこのうえなく真正である」

という、一節から始まります。

「上なるものは下なるものの如く、下なるものは上なるものの如く」

と、天と地の照応性を語ったりしてます。


ちなみにパラケルススが「アルカエスト(万物融化液)」という、何でも溶かす液体があると唱えましたが、「全部溶かしたら容器がないやん」と、論破されてしまいました。そりゃそうだ(笑)。

錬金術の本には、惑星を表す記号や金属を表す記号などが書かれていて、関係ない人から隠そうとしていたなあ、という意図が感じられます。

異端と言われると、生きられない時代です。


なぜ非金属が貴金属になると思ったかと言いますと。

全ての物質は同じ一つの物質、「第一質料・プリママテリア」から出来ていると、思われていたからです。

元が同じなら、不完全な非金属が、完全な金になるハズ。

そういう発想です。面白い。


第五元素・エーテル

有名な四大元素、土・水・火・風(大気)に続き、エーテルも提唱されます。

天上界を構成する第五元素。宇宙空間に充満する元素、とも言われます。


四大元素は、

「プリママテリア+四つの性質の内の二つ」から成り立つ。これは錬金術の本なんかに書いてある思想です。

四つの性質とは「冷・温」と、「乾・湿」です。

そして「+」の部分がエーテルだと説明されいます。

宮廷魔導師で使っている設定です。錬金術の思想でもあるし、魔法も職人有利(笑)



有名な人物

サン・ジェルマン伯爵。

不老不死と噂され、古代の出来事をあたかも見て来たように語ったり、多言語を操ったり、数十年経っても同じ姿だったという目撃証言があったり。宝石などにも造詣が深く、錬金術の本でよく紹介されます。

長寿の妙薬を持っていたとか、賢者の石の製法を習得していたとされています。


ジル・ド・レ。

ジャンヌ・ダルクと共に戦った英雄です。

しかし彼はジャンヌが魔女として火炙りに処された後、荒れてしまいます。聖歌隊を着飾らせたり、湯水のように財産を使い、次第にひっ迫していくのです。

そして怪しげな錬金術師にそそのかされ、黒魔術に傾倒していきました。悪魔の生贄として、幼い男の子を凌辱・虐殺していきます。

彼の領地には子を失くした親の嘆きが蔓延しました。被害者は数百とも、それ以上とも。

そして所領をめぐる争いから聖職者を拉致。それから身辺調査され、宗教裁判にかけられて有罪になります。

しかし火刑の際に領民が彼の為に祈りを捧げたという話もありますので、裁判で誇張された面もあるのかも知れません。

殺人鬼、青ひげのモデルと言われる。錬金術師ではなく、悪質な魔術師や錬金術師に騙されて、身を滅ぼした人間として有名って感じですかね…


パラケルススやニュートンも、錬金術に取り組んだと言われております。


さてさて。

錬金術と言うと、蒸留酒を発明したり、薬と言えば薬草だったけど、鉱物も使う様になったり、実験で色々な発明があります。


それ以上に興味があるのが、神秘哲学的な意味合いです。

賢者の石を作る=完全なるものを作る。

完全なるもの、即ち神。

神に至る過程のような思想になるんですよね。

面白いけど余計に難解になっていく。寓話ばかりで出口のない遠回りのような…

物を作る方だけじゃなく、思想も興味深いですよ。以上!

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