中層:熟睡

私はあなたと逢瀬を重ねる


あなたが見える。いつものように。


遥か、遥か彼方に豆粒くらいの大きさで、されど

“あなた”とはっきりわかる距離に、あなたはいる。


今夜も飽きずに、私はあなたのもとへ。

不明瞭なこの空間をあなたに向かって。



一歩、また一歩と、固い床をコツコツと歩くイメージを保とうとした。



あなたは私に向かったまま、全く動かない。

私はあなたに向かってゆっくり歩き始める。


あなたは床を凍らせて、私を滑らしこかそうとした。

私は床暖房によって氷を溶かし、あなたに向かって歩き続けた。


あなたは私をウォーキングマシーンに乗せ、近づくのを拒んだ。

私はすっとマシーンから降り、あなたに向かって歩き続けた。


あなたは私を海に沈め、溺れさせようとした。

私は浜に上がり波打ち際に沿って、あなたに向かって歩き続けた。


あなたは私を流砂に落とし、足止めを試みた。

私はラクダのこぶにつかまり、あなたに向かって歩き続けた。


あなたは私を遠ざけ続ける。

私はあなたに近づき続ける。


いつから続く逢瀬だろう。

いつまで続く逢瀬だろう。


あなたと私、どちらの想いが強いだろう。

あなたと私、どちらが先に折れるだろう。


昨日も今日も、これからも。

精神力の、尽き果てるまで。


あなたが見える。いつものように。

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