一継ぎの町ニクス

第7話「ロンドサーク大陸の最南端」


 技術大陸と名高い、ロンドサーク大陸の最南端の町『ニクス』。

 『一継ぎの町』という別名を持つニクスは、ガラス細工の工芸品で有名な町だった。

 大陸間を繋ぐ海上列車スターライトの駅のホームには、その特徴が色濃く出ており、ホームには色付きガラスで作られた見事なステンドグラスが輝いている。

 そのステンドグラスにつられてカナリが天井を見上げると、そこにも細く伸ばしたガラスを組み合わせて作られた巨大な『絵』があった。まるで大樹が生えているかのように、大きく枝葉が伸ばされている。何だか大樹の木陰にいるみたい。

 そんな風に思いながらカナリは、思わず零れた感嘆のため息を隠すことなく、しばらくそれを見続けていた。

 なんて素敵な。

 カナリは素直にそう思った。

 そうしてしばし眺めていると、気が付いた頃にはすでにホームにはほとんど人がいなくなっていた。

 いつまでもこうしているわけにはいかない。

 スターライトのホームから出たカナリは、今度はお隣の大陸列車のホームへと向かった。こちらはロンドサーク大陸内を走る列車のホームである。

 同じくステンドグラスやガラス細工の美しい建物内を堪能しながら、カナリは列車の時刻表を探した。

 少しして、目的の者を見つけ、近づく。

 列車の到着・出発時間を順番に見て行くと、ちょうど真ん中に目的のものを見つけた。


――――ダスパール行き、十三時


 出発時間を確認すると、カナリは近くにある時計を見上げる。 

 その針は、十一時を少し回った所だった。


「あと二時間くらいか……」


 呟いてカナリはその場を離れる。

 時間はあるが、とりあえず切符だけは先に買っておこうと思ったからだ。

 案内板の通りに進んでいくと、その先に駅の窓口がある。運良く他に人がおらず、カナリはそのまま近づいた。


「すみません、ダスパール行きを一枚をお願いします」

「ダスパールですね。十二リブルになります」


 駅員はニコリと笑ってそう言った。

 カナリは頷くと鞄の中から財布を取り出し、言われた金額を支払う。

 駅員は丁寧にそれを確認すると一枚の切符を差し出した。


「ダスパール行きは十三時の出発になりますので」

「はい。ありがとうございます」


 カナリは切符を受け取ると、財布と一緒に大事にカバンにしまう。

 そのまま窓口を離れ、ホームを歩き、外へ向かう。

 さすがに二時間、駅の中で待っているというのも暇である。それにそろそろ昼時だ、お腹も空いて来た。ゆっくり食事でもして待てば、二時間など直ぐだろう。

 そう思いながらカナリはホームの外へ、靴音高く踏み出した。

 明るい日差しが視界いっぱいに広がる。

 ああ、良い天気だ。この上ないくらいに。

 晴れた青空を眩しそうに見上げてから、カナリはニクスの町を歩き出した。

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