第6話「星の一」
スターライトがロンドサーク大陸の最南端、ニクスに到着したのはそれから一時間後の事だった。
途中、空をロンドサーク大陸の空軍のグライダーが飛んでいった。おそらく空賊の所へと向かっていたのだろう。幸いな事に、あの後は特に空賊たちが追って来る事はなかった。
ちなみにスターライトの方はと言うと、穴の開いた場所はやはり修理に出す事になるそうで、ニクスについてから該当の車両が切り離されている。
「ふう」
少しだけ短くなったスターライトから一歩足を踏み出すとホームの冷たい石の感触を感じてカナリは息を吐いた。
「いろいろとお世話になりました」
振り返ってカナリは言う。
そこにはオルソンとエドワードが見送っていた。
「いえ、こちらこそ」
「また乗れよっ!」
エドワードは元気に言う。
そして案の定黒皮のファイルで殴られた。
「お客様に何て口の利き方だ!」
「いてぇよ!」
ぎゃいぎゃいと喧嘩を始める二人。
賑やかな乗務員たちのやり取りに、カナリは表情を緩めた。
「ええ、必ず」
その言葉に二人はいったん喧嘩を止めて笑う。
「ウッドワース様」
オルソンはカナリに向かって一枚の人差し指程の長さの長方形の紙切れを差し出した。
受け取って見ると、普通の紙よりも厚めでしっかりしている。
表には『星の一』と書かれていた。
「これは?」
「スターライトの特等席の切符です。使用期限はございませんので次回お使い下さい」
カナリは嬉しそうに笑ってそれを仕舞った。
ポーッと汽笛が鳴り響く。
「お二方、そして皆さんもお元気で」
「ああ、そっちもな」
「旅の幸運を祈っています」
右手で敬礼するエドワードとオルソン。
ガタン、ガタンとゆっくりスターライトは動き出す。
だんだんと遠ざかっていく列車と乗務員たちにカナリは大きく手を振った。
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