第126話 「125話」
なんだこの変質者は!?
とか何とか思っていたら、その変質者はタマさんの元へとにじり寄ると手をワキワキしだした。 やだまじ怖い。
「私っ、嬉しいです! まさかタマさんとご一緒出来るなんて……あの触っても良いですか??」
「だめニャ」
変質者はそうタマさんに言うがあっさりと却下される。
てかむっちゃうーって唸ってる。ちょう警戒してる。
まあ、そりゃそーだよね。
あんなハァハァいいながら目を血走らせてるんだもん、タマさんじゃなくてもドン引きですわ。
……しかし、あの人……俺の勘が正しければおそらく――。
「……ケモナー?」
――そう、ケモナーだろう。
あの頬を赤く染めて興奮した様子は、ただ猫が好きって感じじゃない、間違いない。ケモナーだ。
まさか組んだパーティーにケモナーがいるなんて、タマさんの身が危ないっ。
こりゃ、迂闊にタマさんの側から離れたりしないほうが良さそうだ。
この遠征中はずっとタマさんの側にいないとだね。ぐへへ。
「タマさん達も来たようですね」
タマさんの身は俺が守る!キリッ。
そんな感じで俺が決意を新たにしていると、いつの間にかリタさんが近くまで来ていた。
リタさんは名簿か何かだろうか、書類を見ながらこの場に集まった人を数えていき、軽く頷くと俺たちに向けて声をかける。
「皆さんお揃いですね。出発前に顔合わせと……念の為今回の遠征について説明を行いますので皆さんどうぞこちらの部屋へ」
あ、やっぱこれで全員なのね。
半分ぐらいは知ってるけど、残りは知らないから顔合わせはありがたいね。
……ってあれ? よくみたらキンバリーさん居るじゃん。
あの人も高レベルな人だったんだねぇ。手振っとこ。
「ではまず……未踏破領域を発見したパーティー『不滅』のリーダー、グランさんです」
おう……久しぶりにこう、全身がむず痒くなるような感覚が襲ってきたぞ。
やっぱどこのパーティーもどこかあれな名前なんだなあ。
俺たちのパーティーに名前は無いけど、もしつけていたら名乗るたびにこの感覚に襲われることになってただろう。
良かった、相方がタマさんで。
「よろしく、つっても大概の連中は知り合いだがな……ええと、そこのタマさんの隣に居る……そう、あんた。 新顔だよな?」
え、なになに?
あれなパーティー名で悶えていたからあまり話し聞いてなかったぞ!
タマさんの隣って俺だよね……なんだべ。なんかご指名されとるけど。
「ええ、この街に来てそんな経ってはいないですね」
とりあえず正直に答えておきませう。
見栄張ってベテランぶっても良いことないし。
正直が一番ですぜ。へっへっへ。
「じゃあ他の連中はお互いのこと知ってるからさ、簡単に挨拶頼むわ。 で、終わったら早く説明に移ろうぜ」
全員の前で一人だけとか、これなんて罰ゲーム。
……いや、だがこれは良い機会か?
ケモナーへの牽制の為にも、ここは俺がタマさんの相方であることをアピールすべきではないだろうか。
そして遠征中に俺とタマさんの仲良しっぷりを見せつける、ほっぺすりすりとか……うむ、すばらしい。
よし、やってやんよー!
「それじゃ手短に。 ウッドです、タマさんと二人でパーティーやってます。 この腕見て分かると思いますが、半身が木になってまして……キンバリーさん見たいにちょいと特殊な能力あります。 よろしくお願いします」
二人でパーティーのあたりを強調しておく。
タマさんには相方がもうおるんじゃぞ?とね。
やだ、ケモナーさんちょう怖い顔でこっちみてる。
視線で射殺せそうな感じなんですけど? てかこれ殺気漏れてません??
うなじのあたりがチリチリするんですけどっ!?
やべえ、やべえよ。
そういや相手のレベルとか知らないし、下手すりゃ俺ころ……タ、タマのそばから絶対離れんぞ!
「タマさんと…………あんがとな。 じゃ、簡単に説明するが……リタさんするかい?」
ちょっとそんなあっさり流さないでっ!
そこに、あなたの背後に殺気巻き散らかしてる人いるからっ。
「いえ、グランさんにお任せします」
リタさんもスルーだし。
てか、リタさんが説明するんじゃなかったんかーい。
「あいよ。 それじゃ――」
……とりあえず事前に聞いた話とたいして変わりはなかった。
最下層で未知の領域を発見、敵が多すぎて引き返したと……奥まで見られなかったので小部屋かどうかは不明、ただ見られた範囲だけで考えるなら、もし小部屋だとしたらかなりの広さである、とのことだ。
お宝いっぱいだね、ひゃっほい。
殺気がすごすぎて話が頭に入ってきないぜ、ふっふー。
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