第98話 「97話」

ま、まあとりあえず挨拶しよう……あまりにも酔っぱらってる様なら退散かな。

そこまで正気を失っているところ見たこと無いし、たぶん大丈夫だとは思うけど。


「おーウッド! どこか出かけるのかあ?」


「ベロンベロンじゃないですか……」


いつにも増して陽気ですねゴリさん。

……ゴリさんの前に並んでるボトル、相当度数高いやつだと思ったんだけど……5本あるんですが。


普通に致死量な気がするんですが、ゴリさん肝臓強すぎない?

吐いた息に火付けたら燃えるんじゃないのこれ。


……ま、まあ。高レベルの人は内臓も強いんだろう。たぶん。

とりあえずお出かけすることを伝えないと。


「ええっと、タマさんの故郷までお出かけですね」


「おーそうかそうか! まあ、気ぃつけて行けや」


わー、思ってたより軽い反応!

まあタマさんの故郷行くだけだしね……遠いと行っても気合入れて走れば1日で着いちゃう距離だしー。


「お土産よろしくー」


「何か面白いものがいいわねえ」


お、お土産……毛玉でいい?


いや、まあ冗談だけど……うーん、面白いもの面白いもの……ネタに走り過ぎてもあれだし、難しいぞ!


「……まあ気にせず行ってこい」


おう……ベルトラムさん、一人だけ素面だぞ!

皆と同じぐらい飲んでるけど素面だぞ! どういうことなの……とりあえずお言葉に甘えてここはささっと退散しちゃおう。


お土産は……お酒か何かで良いんじゃないかなと思います。

お酒なければおつまみか何か……たぶん喜ぶと思う。皆お酒好きだし。



「それじゃ行ってきますー!」


ゴリさん達に手を振ってギルドを抜け出す俺とタマさん。

このまま街の外に出て街道をひたすら走る……と思ってたんだけど、何か行き先が違うような?


「……あ、あれ」


街の外と言うよりこっちって……。


「タマさんこっちってダンジョンじゃ……」


ダンジョンに向かう道だこれ。


「ニャ。 桃作って食べてから行くニャ。 そっちの方が早く着くニャー」


「あー、なるほどね」


桃を作るのはたぶん1時間も掛からないだろうし、そのぐらい遅れたとしても上がる身体能力を考えれば桃を作ってから行ったほうが早い。 と、思う。


んで、例によってゴブリン大量発生する岩についたんだけど……。


「どんだけ連打するのっ!?」


てしてしてししってレベルじゃないぞタマさん。

そして音でけえっ!? これ、このフロア中のゴブリン集まるんじゃない……?




まじで来たわ!

まあでも何とかなっちゃうんだけどね。


いやー、最初の頃が嘘のようだ。

寄ってくるゴブリンを刺して吸って投げて、そしてまた刺してと繰り返し桃を育てていく。


この間みたいに地面から根っこを槍の様に突き出して、一気にやってるもんでサクサク進みますなあ。



「ひぃ…………っ」


ただ、問題と言うか気になる点としてはやっぱ見た目やばいよねってことで。

この光景を見た人がどう感じるのか……さっきこっち見て顔真っ青にして駆けていった子が居たけど、たぶん俺のことあまり知らない人が見たら皆ああなるんでしょうなあ。 ハハハ。



あれ、たぶんギルドに報告しに行ったんだろうなあ。

……よし、桃作って逃げよう。 たぶんリタさんがフォローしてくれるじゃろっ!



さくっと桃を作ってバクゥッと食べる。

大量に残ったゴブリンはタマさんが魔法で全部吹っ飛ばした。


ダンジョンから出たのは目撃されてから10分後とかそんなもんだね。これならまだ騒ぎにはなってないでしょ。



つーわけで走るのです。


「とりあえずお昼まで走るニャ。 ペースはウッドにまかせるニャー」


「あいさ」


バテない程度に速度を調整して街道を爆走する俺とタマさん。

森と違って障害がないから走りやすいぞう。


景色がぐんぐん後ろに流れて行きますなあ……これ何キロ出てるんだろね?


後ろをちらっと見れば街はもう地平線の向こうだ。

ちょこっと見えてるのがたぶん世界樹だろうね。 いやあ、早い早い。




進んで行くにつれ、小さめの街?村?がちょこちょこあったけど、たぶんあれって宿場町ってやつじゃないかなあ?


普通は宿場町で休んで、翌日に次の宿場町に行くっ……って感じで進んで行くんだろうけど、もうそんなのお構いなしである。


お。また前方に宿場町が……ぬ?


「……? 街かな?」


宿場町にしてはでっかい。

壁もあるし、門番ぽいのも居るし。これ普通の街っぽいなあ。


さてどーしよ。

とりあえずタマさんに相談かな。


「タマさんどーする? よってく?」


「ちょうどお昼だし、何か食べていくニャ」


「あいさ」


ずっと走っててお腹も空いてきたし丁度良いね。

夜は野宿だろうし、お昼は街中で食べちゃおう。


野宿で野外料理ってのも良い物だけどね。



「んー?」


街に近付くと何か様子がおかしい事に気が付いた。

最初門番二人だけだったのが、門の奥からワラワラと出て来て……皆武器持ってるぞう。 何かあったんかね?



「と、止まれぇっ!」


「何者だ!」


門の前まで来たので速度を落とす俺とタマさん。

そんな俺達に門番達は声を上げると一斉に武器を向けてきた。


…………これ俺達を警戒して出て来たんかい!



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