第99話 「98話」

な、なんでなんでェ!?

俺達の別に何もしてないのにっ! 単に街に寄ろうとしただけでこの仕打ち、酷くない??



はっ……ま、まさか……実はものすっごく治安の悪い街で、この門番も俺達から金を巻き上げるのが目的で……?



「ニャ」



……とか何とかアホなこと考えてたら、タマさんさっさとギルド証を門番に差し出してました。泣きたい。 タマさん、ちょっとそのお腹貸してくれませんか? あ、爪は結構です。



「金……? タ、タマさん!?」


「どうぞ! お通り下さい!」


門番共め。

ギルド証みた途端に手のひら返しおってからに……。


まあ、あれだ。

普通に仕事しているだけなんだろう、たぶん。


何か見たこと無い奴が近付いてきたから囲んで武器を突きつけただけ……やっぱ酷くないデスカ?


「ウッドも早く見せるニャ」


「あっ……はい、どうぞ」


おう、そうだったそうだった。

俺のギルド証も見せないとね。これを見せればきっと門番も俺は怪しい奴じゃないと分かってくれるだろう。


さあ、手のひらくるっくる回すと良いのです。


「鉄の3……本物だな、通っていい」


すっごい普通の反応されたぞ!?

タマさんの時と態度違いすぎない?


……まあタマさんはギルド証が金だし、可愛いし。


うむ、しょうがないな!可愛いし!



とまあ納得したところで街に入りますかね。

昼飯食べてー……ぶらっと街中見るのもいいなあ。 何か面白そうなものあったら買ってもいいしね。



「…………」


って、あれ?

さあ街に入るぞーと思ったら、何やら門番の一人が手招きをしてるぞ。なんでしょな?


「……お前さん、街中ではその兜付けない様にな? 騒ぎになっても知らんぞ。後は街に近付くときは速度を落とすように……てっきりモンスターが近付いてきてるのかと思ったぞ」



…………そうだった!!


兜の見た目がやばいことになってるんだった! 浮かれててすっかり忘れてたよ……桃食べたもんで体が全体的にぶっとくなってるし、それに加えてこの兜。 遠目では人間の様には見えないだろうね。


……それと結構な速度で走ってたし、土煙とか雪煙とかすごかったと思う。モンスターが襲撃に来た!?とか思われても仕方ないかも知れない。


「……すんません。 以後気を付けます……」


俺はちゃんと反省する奴なのだ。

いや、本当。 もう初めて行く街で兜被ったりしません。


今回は何とかなったけど、最悪刺されたりしょっ引かれたりしかねないからね。



とりあえず街に行こう。

ご飯食って買い物するのだ。


あ、ちゃんと兜は荷物の中にしまったからねー、ご安心を。




「おー」


門をくぐるとそこはメインストリートだ。

一番ぶっとい道だけあって人通りも多いし並んでいるお店も多い。

ちょっと田舎っぽい感じがするけど、これはこれで良いと思います。


……とまあ街中はそんな感じなんだけど。


「…………ねえタマさん」


「ニャ?」


「すっげえ見られてるんですけど」


歩いているとすっごい見られるの。

老若男女問わず、すれ違う人みんな振り返る。


店先にいる店員さんなんかもガン見してくるし、あれ絶対客を見る目じゃないぞ。


「タマもだけどウッドも目立つニャ。 諦めろニャ」


「うん……一応自覚あったけど、こんなに見られること無かったのになあ……」


目立つとは確かに思う。

でもたまーに知らない人がジロジロ見てくるぐらいだったんだけどなー。


それに今は兜だって付けてない訳だしー……。


これが見られて興奮する人だったらただのご褒美だろうけど、あいにく俺は違うのだ。 ……違うよ?



「あっちはもう慣れてるからニャー」


慣れか。

まあ、確かにそりゃそうだ。

ちょっと変わった見た目だろうが毎日見てりゃそりゃ慣れるよね。

てか、この街の人は俺のこと初めて見るわけじゃん。そりゃジロジロ見るよね!


でも俺ってそんなジロジロ見るような外見なのだろうか? あの兜はあれだけど、今は付けてないし遠目ならともかく間近で見てそれは…………いや、待て。待つんだ俺。


俺も自分の姿に慣れすぎているのでは無いだろうか?

赤の他人から見ればちょっと変わっている、そんな程度では無いのかも知れないぞ。



……ちょと改めて自分の姿を冷静に考えてみよう。

体の半分ぐらいは外套で見えない、でもよく見ると腕から木の部分や蔦やらが見え隠れしている。 それに首筋あたりも目立ちそう。 普通じゃ無いのはすぐ分かる。


あとは異様に体ごっついし、異形ってのも見ればすぐ分かると思う。顔以外モンスターですね……うん、ダメじゃん。


これでうっかり根っこやら蔦をニョロニョロっと出したら、討伐対象になること間違いなし。笑えないデス。


「……どうしよ。 ご飯食べたら買い物とか考えてたんだけど……」


あまりジロジロ見られながら買い物するのはねー?


「ニャ。 帰りに寄ればいいニャ。 今より大分ましになってるはずニャ」


さすがタマさんやで。

一回みたらちょっとは慣れるよね。 よしよしそうしよう、帰りによって何かお土産になるもの探そう。うん、それがいい。



てな訳で今回はご飯だけささっと食べて、街を出ることにしたよ。

ご飯はそれなりに客が居て、良い匂いするところにぶらっと入ることに。



「ギルドの方がメニュー豊富だったなあ」


お店に入ってメニューをざっと見てみたけど、ギルドの方がメニューが豊富なのは一体どういうことなの。

てかギルドがメニュー豊富っておかしい気がしなくもない。 あそこお店が本業じゃないでしょーに。


「あっちは客も店員も多いからニャー」


客は確かに多い。

ギルドに来た人の半分ぐらいは何かしら飲み食いしてるイメージだし。


とりあえず日替わり定食てきな物と2~3品気になった物を注文してみる。


そして待つことしばし、料理を乗せた皿を両手に抱えて店員さんがやって来た。


「お待たせしましたー!」


あら、可愛い。

看板娘ってやつだね、いいねいいね。


ギルドも見習って欲しいものである、あそこ何でおっさんしかおらんのだろう……。


「あ、美味しいね」


「ニャ」


料理はすごく美味しい。

この世界は本当に料理が美味しいのよね。今のところ食べて不味かった事はないし。


……てかタマさん。


「タマさん野菜……ぶれないね」


俺の視線をまったく気にすること無く、野菜を俺の皿に移動してる。

最初の頃は気付かないように移動してたと思ったんだけどなー……。


んまあ、それだけ仲良くなったと言うことだろう。ぐへへ。

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