第83話 「82話」

皆結構な時間黙って耐えていたけどその沈黙はタマさんの「? なんで被り物してるニャ?」の一言で決壊した。

一人が「ぶふぉっ」と吹き出したの切っ掛けに全員が堰を切ったように笑いだす。


もう、無理。

ゴリさんすっごいキリッて真面目な顔で話してるもんで余計にきつい。 お腹いたい。





あー……久しぶりにものすっごい笑った。

モンスターの群れ相手する前に笑い死にするかと思いましたわ。


「ダンジョンの規模は小さく、わずかに残っていた敵からして指導者を倒すにはレベル75以上必要だとギルドでは考えています」


ゴリさんが説明しても誰も聞けそうにないので変わってリタさんが話を続けている。

てかリタさんすごいな。 一人だけ無表情貫いてたぞ。 すごいな。


……ん? レベル75? まじですか……それゴリさんでも無理じゃないの。

あ、いやタマさんの補助魔法と俺の桃あれば余裕でいけるのか……タマさんと相談しよ。 ゴリさんになら話してもよいと思うのだけどね。


「問題はどの街に来るかです。 いつ指導者がモンスターを引き連れダンジョンを出たかは分かっていません。 急ぎ捜索隊を作り探さなければいけません」


ゴリさんのせいで色々ぶっ飛んだけど、これ結構な緊急事態だよね。

モンスターの群れがいつ出発したか、今どこにいるかも分からない。なのでどの街が襲われるかも分からないし、守りを分散して耐えられるのかどうかとか……色々やばい。


「まずはいくつかの隊に分け、全員総出で捜索します。 発見後の討伐については金ランクの方をメインで行います。 鉄と銀ランクの方は対象となっている街で待機し、抜けてきたモンスターの排除をお願いします。 それで隊の分け方についてですが――」


なるほどねー。

捜索は皆でやってメインの戦闘は金ランクの人がやると。

そりゃ推奨レベル75とかに30とか40とかの人がいってもただ死ぬだけだしねえ。



パーティ分けだけど俺とタマさんはセットで、んでもってゴリさんの要望もあってゴリさんとことも一緒になりました。

大体20人ぐらいのパーティだね。半分ぐらいは知らない人です!


パーティ毎に分かれて顔合わせをすませたあたりでゴリさん達が遅れてやってきた。

どうしたのかなと思ったら、ゴリさんの頭が坊主になっておる。 スキンヘッドまではいかないけど、かなり怖いデス。


ちなみに他の人は無事だったらしい。 ゴリさんだけブレスくらったぽいね。


「おうウッド久しぶりだな。 相変わらず……左半身どうした?」


「ゴリさんお久しぶりです! 左半身はですね、こんなんなってまして」


ゴリさんむっちゃ久しぶりだ。

つっても半年ちょいだけど……ふふふ、貧弱だった左半身が右と同じぐらいになってて驚いてますね?


俺の鍛錬?の成果見せてあげませう。

んじゃ、袖をめくってと……。


「……なるほど、触手か」


ゴリさん、あんたもか。

蔦だってーの蔦ぁ!


カールさんとか笑い転げてるじゃん、もう……。


「こんな形でお前とパーティ組むことになるとはなあ……それにタマさんも。 タマさんも!?」


あ、ゴリさんいま気が付いたのか。

そりゃー半年前から倍近くでかくなってたらビックリするよねー。


「ど、どうしたんですか……その、何と言ったらいいか……随分丸くなったみたいですが」


オブラードに包もうとしてるけど、包めてないような気がする。

でもタマさん気にした様子はないですね。


「果物おいしいニャ」


「ウッドお前なんつーことを……」


「えっ、俺のせい!?」


いや、俺のせいっちゃせいかもだけど!

タマさんが食いすぎたのがいけないのであって俺のせいでは……止めなったのは確かダケド。


「それじゃそろそろ出発しようと思う。 本来であればもう少し荷物補充しないとなんだが……ウッドがいれば食料の心配が減るからな。 助かる」


「あ、作れる種類増えたんで楽しみにしといてくださいよ」


そろそろ出発しないとだね。

食料はお任せあれ。 もちろんゴリさんにはバナナだよね! 10房ぐらい食べさせてあげよう。 きっとものすごく喜んでくれるに違いない。


「お? そいつはいいな……さて、俺たちが向かうのは発見したダンジョンの北側だ。 そっち方面には街がいくつかあるんでな、モンスターの群が向かう可能性が高い……街にはすでに連絡を入れて守りを固めて貰ってはいるが攻められると厳しいだろう」


すっごい今更だけど、ここの街以外のこと一切知らんのよね。

どのへんにあるんだろ。 人口も多いのかなー? ここの街はダンジョンがでかいこともあって数万人規模で居そうだけど。


「そんな訳で斥候が得意な連中は気合いれて頑張ってほしい。 無事にすむかどうかはお前たちの活躍に掛かっているといっても過言じゃないからな」


「あ、ゴリさん。 斥候なら俺も手伝えますよ」


「ん? そりゃ助かるがお前……ああ、あの資料に書かれていたの本当だったのか?」


そうですとも。

ゴリさんの問いに満面の笑みを浮かべて頷いてみせる。


俺の根っこを使った索敵だけど、あれから色々試して結構なことが判明してたりする。


まず索敵範囲は円形だと10キロぐらい、方向を絞ると20キロぐらいまで行ける。

根っこを伸ばさないといけないので、すぐ索敵出来る訳じゃないけど俺が全力で走る速度の3倍ぐらいの速さで展開できるので十分使えると思う。


デメリットとしては根っこ伸ばしまくるもんで結構消耗する……これは伸ばした根っこから吸えば済むからそこまでデメリットでもないかな?


一番のデメリットは根っこが岩とかにぶつかると突き指したみたいな痛みが走ること……多少の障害なら押しのけてくれるんだけどねえ。

あとは根っこを展開したら戻さないといけないんだよね、これも展開したのと同じぐらいの時間が掛かる。

引っこ抜くって手もあるけど、地味に痛い……今回みたいな緊急の場合は引っこ抜くしかないだろうね。


まあ、とにかく結構使える、というかタマさん曰く反則レベルだそうだからかなり有用である。


「そうかそうか、そりゃ助かる」


期待してていいよ!

そして上手くいったら褒めて褒めて。 俺って褒められると伸びるから!


「まずはダンジョンまで行く。 かなり強行軍になるが各自きつくなったら申告してくれ。 ……ウッド、詳細については道中教えてくれ」


「はいっす」


強行軍……まあダンジョンまで走るってことだろうね、相当な距離があるはずだろうけどダンジョンで鍛え上げた肉体がそれを可能にする。

荷物は最低限持ったし、出発するとしますか。

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