第8話 泣きつつ眠る

 稲宮は長い回想から覚めると、紅いノートを閉じて、すぐに清川へ会いにいくこと、すなわち、ここで眠ることを決めた。

 様々な不安が彼の心で渦巻いていた。

 自分の精神は己の望む場所に現れるだろうか。また、その精神を現実の意思を以って動かせるだろうか。そのような思いが彼の心をぎゅうぎゅうと締め付け、暗くさせていたのだ。

 だが、稲宮はそんな心の暗闇の片隅に、小さな光を見た。左手を伸ばして拾い上げると、果てのない温かさが心を満たした

 彼は顔を両手で押さえ、溢れ出る涙で袖を濡れるがままにさせながら、机に上半身を預けて、ゆっくりと瞼を閉じたのだった。

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