暗闇のぬくもり
小桜あゐ
暗闇のぬくもり
声劇台本
人数 4:3
時間 約40分
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【登場人物】
〇魔王/男/ウィルバート・ヘレンビア
〇姫/アイリーン・アヴァンス
〇?/ピエロのロピエ
〇勇者カイル
〇黒魔導士リオン
〇パラディンギル
〇白魔導士エリス
〇王妃(リオンと兼役)
〇国王(ギルと兼役)
〇傭兵長(ロピエと兼役)
〇魔物(ギルと兼役)
〇N(エリスと兼役)
【コピペ用↓】
暗闇のぬくもり
作者:小桜あゐ
♂魔王/男:
♀姫:
♂?/ロピエ/傭兵長:
♂カイル:
♀リオン/王妃:
♂ギル/国王/魔物:
♀エリス/N:
ここから本編↓
—――—――—――—――—――—――—
N 昔々あるところに国を滅ぼそうとする魔王とその魔王に誘拐された姫がおりました。姫は暗く冷たい牢屋に閉じ込められ毎日不安な気持ちでいっぱいでした。ところが…。
(SE:足音)
姫 「……足音……。」
男 「………。」
姫 「あの…?」
男 「…腹は減ってないか…?」
姫 「…え??」
N 暗い暗い牢屋に閉じ込められて以来こうやって一日に何度か見に来ては少し声をかけて戻っていく男がいるのです。姿も顔も全く分かりませんでしたが、優しい声色の男性でした。最初こそ恐怖に
男 「寒くは…ないか…?」
姫 「…大丈夫です…」
男 「そうか…」
姫 「…あの」
男 「…………」
姫 「あなたはだれですか?」
男 「…………」
姫 「……………」
男 「見ないほうがいい」
姫 「…え…。」
男 「また来る」
N そう言ってまた男は去ってしまいました。いままで質問されたことに答えるだけだったアイリーンでしたが、初めてこの日、少しだけ距離が近くなったように感じました。質問に対する答えが帰ってくるだけで彼女の心は踊りました。
姫 …見ない方がいいって…外見にコンプレックスがあるのかしら?極度の人見知り…?
N アイリーンの妄想はむくむくと膨らみました。その声色からはどうしても悪い人ではないように思えたのです。そして次の日、また次の日も、アイリーンは毎日自分から少しずつ話してみるようにしてみました。
姫 「ねえ、あなたの血液型はなに型?」
男 「………。」
姫 「私はA型なの。見た目と合いすぎてつまんないって言われるの。ふふ。でも結構大雑把なのよ?こう見えて。部屋がきれいなのはお手伝いさんたちのおかげだし…私はなにもしてないもの。ふふふ。」
N 次の日も…
姫 「今日はお互いの好きな食べ物について話しましょう?
あなたの好きな食べ物はなに?」
男 「………」
姫 「私はお母様の作ったカボチャのプリンが大好きなの!
すっごく甘くて濃厚でね!私もあんな風に作れたらいいんだけど…
お母様が作るからおいしいのよね~これが愛情ってやつかしら?」
N その次の日も…。
姫 「今日は私の子供のころの思い出について話すわ。あなたは聞いていてくれるだけでいいの。私ね、子供のころタンスの隙間に物が入っちゃってね。一生懸命取ろうとするんだけど取れなくて、お母様に頭を使いなさいって言われて隙間に頭をねじ込もうとしたのよ。そしたらメイドも執事もお父様もお母さまも大爆笑!ふふふ…おかしいでしょ?ふふふっ」
N 男はアイリーンの話に耳を傾けるだけで自分の話を全くしませんでしたが
次第にアイリーンは無言の中にある彼の感情が何となく読めるようになってきていました。少なくとも彼は自分の話を楽しんで聞いてくれていると思いました。
姫 「ここにきてどのくらい経つのかしら…」
男 「………」
姫 「真っ暗で昼も夜も今が何月なのかもわからない…」
男 「……」
姫 「あなたは外から来たの?それとも一緒に捕まって働かされているの?」
男 「……」
姫 「もしかして…あなたが」
男 「よく」
姫 「……?」
男 「よくしゃべるんだな」
姫 「……。…だって…寂しいんだもの。」
男 「そうか」
姫 「盲目の人ってこんな感じなのかしらね。耳だけが頼りってすごく不安だわ」
男 「だろうな。」
姫 「いつも明るい話して元気にふるまっているけれど本当はすごく怖いのよ」
男 「……。」
姫 「明るくふるまっていればなんだか気が紛れる気がして。」
男 「………。」
姫 「自己満足だからあなたにとってはつまんないかもしれないけどね」
男 「そんなことはない。…たのしい。」
姫 「………。ふふ…」
男 「…??」
姫 「ううん、ごめんなさい。あなたがこんなに私の話に返事をしてくれるなんてことがないから、うれしくて」
男 「すまない」
姫 「いえ、いいのよ。話すのがあまり得意じゃない人だっていますから。」
男 「そうじゃないんだ」
姫 「……」
男 「私は君をきっと怖がらせてしまう」
姫 「どうして?」
男 「それは言えない。でも、怖がられたくないんだ。君の話はとても楽しくて、私の心が浄化されていくようなんだ。」
姫 「…そう…なんだ…。」
男 「……あ、すまない。今のはなかったことにしてくれ」
姫 「………。」
男 「………。」
姫 「私。」
男 「………。」
姫 「もっとあなたが知りたい」
男 「……………。」
姫 「だからあなたが自分のことを話したいって思ってくれるまで、私はあなたに話しかけ続けるわ」
男 「……………。」
姫 「あなたの名前…教えてほしいの」
男 「…………。」
姫 「あ、人に名前を尋ねるときはまず自分から、だったわね。私はアイリーン。アイリーン・アヴァンスよ。」
男 「…ウ。」
姫 「…ん?」
男 「ウィルバート」
姫 「ウィルバート…いい名前ね。」
男 「ウィルでいい。」
姫 「…ウィル。…ねえ、ウィル。あなたはどこの国の人?」
男 「………」
姫 「………。ふふ。………。私はアヴァンスから来たの。知ってる?とてもきれいな街なのよ。高い塀に囲まれていて外側からはなかなか見えないんだけど、たくさんのお花が咲いていてね、(次第に涙声に)…人も優しくて、いつもお散歩に出かけるとお隣の馬小屋のおばあさんがこんにちはって話しかけてくれるの…。」
男 「……」
姫 「ああ、もちろんお散歩に無断で出かけるとお父様とお母様がカンカンになって私を探すための兵をよこすんだけど…それでも私は…この国が好きで…みんなとかかわりたくて…ついつい散歩に出かけてしまって…。………お父様………お母様………。…………みんな…………。みんな………。」
男 「…………」
姫 「…ご、ごめんなさい。こんな話をするために話したんじゃなかったのに…。なんだろう…あなたの声を聴いて安心したのかな、急に…思い出しちゃって…。」
男 「いい。」
姫 「……。」
男 「べつに…。いい。」
姫 「…………」
男 「泣きたいときに泣いておけばいい。君は…一人じゃない。」
姫 「………っ…っく…ふっ…。うぅ…うわあああああああん」
N 姫は誘拐されて以来初めて大声で思い切り泣きました。声が枯れてでなくなって。もしこの部屋に鏡があるのならきっと今の自分の顔は涙でぐちゃぐちゃで、とても見れたような顔じゃなかったでしょう。牢屋の隙間から伸びてきた大きなウィルバートの手がアイリーンの頭を撫でました。それが暖かくて。胸の奥が苦しくて。アイリーンは初めて目の前の見えない相手に恋をしました。
相変わらず自分のことを話そうとはしなかったけどそれでも少し口数は増えた気がします。
―朝―
姫 「ん…。私…眠っていたのかしら…。っ…。
なにこの光…。あんなところに天窓なんてあったのね…。
なんてまぶしいの…。
? 「おはよう。姫さん。」
姫 「ひっ!?」
? 「くくく…驚いた?」
姫 「…仮面…?」
? 「ああ。」
姫 「あなたが私を誘拐した魔王?」
? 「魔王…?ふふふ…どうだろうね?」
姫 「はっきり言いなさいよ」
? 「まあまあ怒らないで」
姫 「…………。」
? 「それよりさ、君にとっていい話を持ってきたんだ。聞きたくない?」
姫 「いい情報?」
? 「ああ、ここから出ることができる…」
姫 「………出してくれるの?」
? 「ふふ…タダじゃないよ。条件がある」
姫 「条件…。」
? 「ああ…。」
姫 「その前に…あなたはだれなの…?」
? 「僕?僕は…そうだな、”ロピエ”とでも名乗っておこう」
姫 「ロピエ…。」
ロピエ 「ああ、そうだ。くくく…ピエロのロピエ…くくく…」
姫 「…条件をいいなさいよ」
ロピエ 「まあそんな焦らなくてもいいさ。」
姫 「…………」
ロピエ 「条件は2つ。1つ目は勇者たちとパーティーを組み魔王を倒すこと。ああ、そうそう、トドメは君が刺さなきゃいけないよ?じゃないと意味ないからね。」
姫 「え…。でも私にはそんな力…」
ロピエ 「大丈夫。君にしかできないんだ。」
姫 「どういうこと…?」
ロピエ 「ん~、ヒントを与えるとするなら~。魔王は君のことをなめているから」
姫 「ふざけないで」
ロピエ 「ふざけてないよ?力を持たない君のほうがいいのさ。効率がいいんだよ…くくっ」
姫 「なんの話…??」
ロピエ 「おっと、アンサーは自分で見つけな?」
姫 「…………」
ロピエ「条件2つ目。魔王を倒したときに得られる果実を僕によこすんだ」
姫 「戦利品…てこと?」
ロピエ 「その通り。その果実は体内から出てくるんだ。心臓のとこ、な。あ、トドメは心臓以外で頼むよ?果実はきれいなままほしい。君にとっては安いだろ?君は帰ることができるんだから」
姫 「え、ええ。」
ロピエ 「なんだか不満そうだねえ???」
姫 「………そんなこと………。」
ロピエ 「…あ~、わかったあ~」
姫 「………」
ロピエ 「あの男が気になるんでしょう?」
姫 「……っ」
ロピエ 「くくくくくく…図星みたいだねえ…」
姫 「あの人は何者なの?」
ロピエ 「うーん。………何者……。ただの弱虫な男…かね?あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」
姫 「……………」
ロピエ 「はあ…。…で?…もちろん条件を飲むよね?君に損になることはなにもないんだから。」
姫 「その話、信じていいのね?」
ロピエ 「ああもちろんだとも。まーだ僕を疑ってるんだあ?ふうん…」
姫 「………」
ロピエ 「じゃあこうしよう!君を勇者のところまで案内してあげよう!」
(SE:ガシャン!と牢屋の鍵が開く)
姫 「あ…」
ロピエ「僕はこの牢屋の番人。ロピエ。勇者カイルの元までご案内しますそのかわり…条件を破って外に出た日には……。」
姫 「………」
ロピエ「あなたの国が滅びます」
姫「……………」
ロピエ「あひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!!!」
場転
カイル「あ~、この城広すぎる!!」
リオン「カイルは方向音痴だもんねえ~」
カイル「リオンに言われたくない」
エリス「でもここまでレベル上げしてきてよかったですね」
カイル「ほんとだな!うようよしている魔物がみんな逃げてくって…雑魚キャラってことだろ?案外魔王もサクッと倒せちゃったりしてな?」
ギル「油断は禁物だぞ。ほら、ちゃんとこまめにステータスチェックしろ。魔王の城ってことはトラップなんかも仕掛けられてる可能性があるんだからな?」
カイル「わーってるよ。」
エリス「さっきみたいに宝箱の底を押すと一部の窓が開く~みたいなプラスの仕掛けもあるかもしれないですし、周りもよく見ないとですね」
リオン「さっきのすごかったよね!天窓が3か所開いて隠し扉が見つかったんだから!」
ギル「我々の目は明るいほうがよく見えるからな。こういう仕掛けは優しいよな。」
エリス「今までのダンジョン見てきてもなんだかたどり着くために作られたダンジョンが多かったです。もちろん嫌な仕掛けもありました。敵が入ってこないようになんだなーっていうのはわかりました。でも敵を助けるような仕掛けって何か意味があるんでしょうか」
ギル「お、いい質問だな。エリス。それに関しては考えられることが2つ。1つはダンジョンに挑戦するものが出てくるように。難しすぎるダンジョンは誰も挑戦しない。まあ、挑戦してみてほしいという願いを込めてダンジョンを作るんだろうな。もう一つは…」
リオン「もう一つは?」
ギル「中の魔物が我々をおびき寄せているか…だ。」
リオン「………。」
エリス「………。」
カイル「おーーーーーい!なにやってんだよーーーー!はやくこいよ!」
ギル「おう!なにか見つけたのかー?」
リオン「…ギルって物知りだけど…たまに…たまにこわいよね」
エリス「そうですね…」
カイル「ここになんか書いてあんだよ、これって」
ギル「なになに…??………あーーー。これは…。リオン」
リオン「はいはーい!」
ギル「ここに向かってファイア放ってみてくれ」
リオン「ん?うん!……ファイア!!!」
(SE:ファイア)
(SE:ガシャン!と鍵の外れる音と…)
姫「(上から落ちてくる姫)きゃーーーーーーーー!?」
パーティー全員「わああああああああああ?!」
(SE:ドスン!!)
姫「いったたた……」
パーティー全員「姫?!(姫さん?!姫様!?など口々に。)」
姫「なんなのよあのピエロ…」
カイル「アイリーン姫!!!」
姫「勇者カイル…。」
リオン「アイリーン姫!あたしもいるよ!アヴァンスの魔法使いといえば、このリオンよね!」
ギル「俺ははじめましてだな。アイリーン姫。君のお父さんとお母さんにはよくしてもらっているよ。パラディンのギルだ。」
エリス「私のことは…」
姫「自己紹介なんて不要よ。白魔導士のエリス。…ところで…。」
カイル「…?」
姫「今何月かしら?」
リオン「え?」
エリス「無理もないです。ずっと外に出ていないのですから…。時間の感覚がなくなってしまいます。今は10月。姫が誘拐されてから4か月は経っています。」
姫「4か月…。そんなに。」
カイル「なあ。」
リオン「ん?」
カイル「姫帰ってきたんだし。これ…魔王倒さなくていいんじゃね?」
ギル「ふむ。たしかに。姫を危険にさらすわけにはいかないしな。」
リオン「こんなあっさり姫が返ってくると思わなかったなあ」
エリス「無事でよかったです」
カイル「よし、じゃあ、帰ろう!!」
姫「え…え、ちょっと…」
~回想~
ロピエ「僕はこの牢屋の番人。ロピエ。勇者カイルの元までご案内しますそのかわり…条件を破って外に出た日には……。」
姫 「………」
ロピエ「あなたの国が滅びます」
~回想終了~
姫「だ、だめです!!!」
カイル「え??」
リオン「ダメって…なんで??」
姫「魔王を倒さないとアヴァンスの町が危ないんです」
ギル「…なにかわけがありそうだな」
エリス「聞きましょうか」
姫「実は…」
場転
ロピエ「あ~あ。ついに合流しちゃったね」
男(?)「……。」
ロピエ「いいの~?狙ってたんでしょ?」
男(?)「…べつに」
ロピエ「素直じゃないなあ。」
男(?)「帰りたがってたんだから…。それに…私といても…」
ロピエ「嘘つき。それ、鏡見てから言ったら??顔がもうほしいって言ってるよ?人間が食べたい、襲いたい、殺したいって、ほらあ。憎いだろお?お前の両親を殺したのは人間だ…。」
男(?)「ふ…う…。……フーーーーーーー。」
ロピエ「くくくくくくくく…面白いねえ…。人間を見ると襲いたくなっちゃうんでしょ?我慢しなくていいんだよ?さあ、さあ、暴れようよ…ほらあ…」
男(?)「…ああああ…あああああああああああああ!!!!!」
ロピエ「くはははははははは!!!もっと怒れ!!もっとだ!さあ、、勇者カイルが君の元へたどりつくまで少し遊んでようよお、ねえ?…魔王ウィルバート?」
魔王「ふ…ふふふふふふふふふ…ふはははははははははは!!!!!おもしれえじゃねえの…。くくく…ふはははははははははは!!!!!」
場転
エリス「なるほど…」
リオン「それは帰るわけにはいかないわね」
カイル「要するに魔王を倒せってことだよな!」
ギル「カイル、油断はするんじゃないぞ。魔王はともかくそのロピエって男…気になる。」
姫「ええ。」
カイル「とにかく!こんなところでうだうだ話してても仕方ない!進もう!」
ギル「そうだな、カイルの言う通りだ。」
カイル「勇者の勘ではもうすぐ魔王の間だと思うんだよな…」
エリス「勇者の勘て…。当たるのですか?」
カイル「おう!勇者ってのは神がついてるからな!」
エリス「アイリーン…?大丈夫ですか?」
姫「…ええ。」
エリス「お体の具合でも…?顔色が優れませんが…。」
姫「違うの…。なにかいやな予感がする…。」
ギル「なあ?これ、なんだ?」
カイル「またなんかみつけたのか?」
ギル「ああ、なんか…ここだけ壁が違うような…うお!?」
カイル「ギル!?」
エリス「ど、どうしたのですか!?」
カイル「わからない。壁を触った瞬間壁に吸い込まれて…」
エリス「さわってもなにも起きませんね…」
姫「ね、ねえエリス…さっきからリオンも見当たらないのだけれど…」
エリス「!?」
カイル「リオンも!?おーーーーい!!リオン!!!!」
エリス「これは…バラバラにさせられる流れかもしれません。」
姫「そんな…。」
カイル「アイリーン姫、離れるんじゃないぞ。」
エリス「そうね。アイリーン姫。私とカイルの間にいてください。」
姫「…はい。」
カイル「アイリーン姫。」
姫「はい」
カイル「姫は牢屋にいたということでいいんだよな?」
姫「ええ。」
カイル「牢屋はどの辺だ?」
姫「え?」
カイル「単純に考えて人質というのはそんなに遠くにはおかないはずだ。」
姫「あ…」
カイル「ということは牢屋の場所がわかれば魔王の間は遠くないはず」
姫「…えっと私は上から落ちてき」
魔物「ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
(SE:牙が体に刺さるような。血しぶきでも可。)
エリス「うっ…。」
姫「ひい!?え、エリス!?」
エリス「に、、逃げ…」
カイル「お前…姫をかばって」
エリス「姫を…お願いします。私は大丈夫です。…神のご加護を受けております…」
カイル「っ…。」
姫「私のせいで…」
エリス「それは…ちがい…ま…す。みんなあなたの帰りを…まって…ます…。早く魔王の元に行って倒して帰らないと…私たちも…」
カイル「もうしゃべるな!!」
エリス「カイル…信じています。アイリーン…を…。」
魔物「ぐぎゃああああああああああああああ!!!!」
姫「い、いやああああああああああああああああああああああ!!!!!」
カイル「ちっ…。行くぞ姫!!!」(姫の手を引き走り出す)
姫「か、カイルっ…」
カイル「あいつの思いを無駄にする気か!!それに、リオンもギルもいない今俺だけで姫を守れる自信なんてない!俺の役目は姫!君を守りぬいて帰還することなんだ!!!」
姫「っ!!!」
場転
カイル「はあ、はあ、はあ、はあ…。」
姫「はあ、はあ、はあ、はあ…」
カイル「………もう…追ってこないか…?」
姫「………はあ………はあ………」
カイル「ごめん、逃げて」
姫「………。」
カイル「こうするしかなかったんだ」
姫「……………」
カイル「エリス…。リオン…。ギル…。」
姫「許せません…」
カイル「…………。」
姫「魔王が、、魔王が許せません!!!」
カイル「姫…」
姫「国を崩壊させ私を誘拐し私たちを一人ずつ引きはがし殺していく」
カイル「………。」
姫「なんのために…?なんのためにこんなことを…?!わたしには全然理解できません!!」
カイル「俺も」
姫「魔王は…魔王は私が倒します。」
カイル「……うん」
姫「カイル。行きましょう。魔王の元へ」
場転
ロピエ「だってよ魔王様あ~」
魔王「ふははははは、だれが来ても蹴散らすのみ。」
ロピエ「魔法使いとパラディンと白魔導士の養分はおいしいですかー?」
魔王「ああ、実に美味だ…」
ロピエ「ふふふ…。こうやって生きたまま養分を吸い取れるんだから僕ってばすごくない??」
魔王「ふふふふ。今におまえも養分になる用意をしておけ」
ロピエ「え?……くくく面白いことをおっしゃるんですね?あなたは僕の支配下に過ぎないことをお忘れですか?すべてその姿にしたもの、力を与えたのもこの僕。」
魔王「どうかな?ふふふふふふははははははは。力がみなぎってくるのだよ。」
ロピエ「あまり調子に乗らないことですよ」
魔王「…ん?ニンゲンのニオイ…」
ロピエ「やっとお二方のご到着じゃないですか??マオウサマ??」
(SE:扉開く)
カイル「またせたな!!魔王!!!」
魔王「遅かったではないか小僧!!!」
姫「絶対…ゆるさない…」
カイル「…あっ!??あれって…!?」
姫「な…!??」
ロピエ「ふっふふ…驚いた?お仲間さんたちが宙に浮いている…。そして魔王につながれている。」
カイル「お前ら…こいつらになにをした…!?」
ロピエ「なあんにも?うーん?マオウサマの食事中って言ったらいい?」
カイル「なん…だと…」
魔王「こいつらは我の養分になってくれているのだ」
カイル「そんな…」
ロピエ「大丈夫、君ももうすぐこっち側」
姫「そうはさせないわ!!!」
ロピエ「ふうん…ずいぶん勇敢になったじゃない?姫?」
姫「………。」
ロピエ「暗闇でずいぶんと泣いていたのにねえ?」
姫「………」
ロピエ「なんで知っているのかって顔…。言ったじゃん。僕は牢屋の番人…。なんでも見ているよ。」
カイル「ふざけるなああああああ!!!」
魔王「フっ…。」
カイル「あがっ!?」
姫「カイル!!!」
カイル「ダメだ…!今までの敵とはけた違いに強い!!なんだ…どこからこんなパワーが…!?」
ロピエ「そりゃあそうさ。勇者御一行様の力も入っているんだから。」
魔王「おとなしく我の血となり肉となるのだ…!!!」
姫「やめてええーーーーー!!!!」
魔王「ふははははははは!!!これで4人揃った。」
ロピエ「魔王様あ、そっちの小娘はいいんですか??」
魔王「ん?そっちのは力がないんだろう?養分吸っても意味がないと思うのだが…?まあなにはともあれ私は強くなった。さあ?仮面の小僧…お前の養分ももらおうぞ…」
ロピエ「ええー?もう?つまんねえなあ。今じゃねえんだよ。しょうがねえなあ。ちょっと時間稼ぎだ…。姫さん、ご褒美タイムだぞ。」
姫「え!?」
(SE:バン!!!とブレーカー落ちる音のような)
魔王「なっ…小僧…!よくも…!!!」
姫「何考えてるのよ!!このピエロ!!」
魔王「……………」
姫「魔王。あんた魔王なんでしょ。なんとかしなさいよ!」
魔王「………」
姫「ねえ!?聞いてるの!?なにも見えないじゃない!!!」
魔王「あ~、よくしゃべる人間だな」
姫「!?」
~回想~
男 「よくしゃべるんだな」
姫 「……。…だって…寂しいんだもの。」
男 「そうか」
姫 「盲目の人ってこんな感じなのかしらね。耳だけが頼りってすごく不安だわ」
姫 「私。」
男 「………。」
姫 「もっとあなたが知りたい」
男 「……………。」
姫 「だからあなたが自分のことを話したいって思ってくれるまで、私はあなたに話かけ続けるわ」
男 「……………。」
姫 「あなたの名前…教えてほしいの」
男 「…………。」
姫 「あ、人に名前を尋ねるときはまず自分からって教わったわ。私はアイリーン。アイリーン・アヴァンスよ。」
男「う…」
姫「…ん?」
男「ウィルバート」
~回想終了~
姫「その声…ウィルバート…?」
魔王「…………。」
姫「ウィルバート…」
魔王?男?「アイリーン…」
姫「あなたは…魔王…だったの?」
~回想~
男 「私は君をきっと怖がらせてしまう」
~回想終了~
姫「ウィル…。」
魔王「アイリーン…。アイリーン。私の話を聞いてほしい。」
姫「………。」
魔王「私は…傭兵だったんだ。アヴァンスの。」
姫「っ!あ、アヴァンス…の…?」
魔王「ああ。まだ若かりし18の時だな。私は傭兵になるために田舎のシュタルクの村を出てアヴァンスに向かったんだ。そこで無事に傭兵になり働いていた。まだ小さな仕事を地道にこなすような仕事しかもらえなった私は田舎町が襲われた際の救出担当兵であった。地元も田舎だったし何かあれば駆け付けられるだろうと思っていたんだ。」
姫「………。」
魔王「しかし、実際に魔物に襲われたとき上から出された命令は待機命令。」
姫「え…?」
魔王「私は抗議したんだけど立場上なにもできなかった。私一人でも助けに行きかったが上は今行けば自分らの国が危ないと予想したんだ。まあ、それは仕方ない。私はそこに所属している人間だ。所属している国を守るのが義務である。しかし若かった私はやはり自分の故郷を見殺しにしたことを後悔し村の様子を見に行くべく、国王に休暇をもらおうとしたんだ。」
姫「お父様…」
魔王「そしたら聞いてしまったんだ。村を見殺しにした本当の理由を。」
姫「………なん…だったの?」
魔王「金。」
姫「か…ね…?」
魔王「見殺しにした指示を出した当時の傭兵長が、襲われた後の村から金を巻き上げてたんだ。田舎だからばれないだろうって。そいつ、絶大な信頼を持っていただけに私が誰に行っても信用されなかった。むしろ協調性がないって私のほうがクビ。恨んだよ。家族も友達の信頼も仕事もすべて奪っていったんだから。」
姫「………」
魔王「そんな時現れたのが…あの仮面男だ。」
姫「ロピエ…」
魔王「あいつはまともじゃない。あいつにもらった果実を食べてから変なんだ。自分をコントロールできなくなる。なんだか麻薬見たいに。」
姫「………。」
魔王「君はここから逃げるんだ」
姫「ウィル…」
ロピエ「逃げられないよ」
姫「…!」
ロピエ「なあ姫?約束…忘れたわけじゃないよなあ??」
姫「…!!!………ウィル…ごめん、逃げられないんだ……」
魔王「約束??」
ロピエ「そうさ。君には、君の手で魔王ウィルバートを倒してもらわなければならない。そしてその実を僕に捧げなければならない…。」
魔王「お、おまえ…」
ロピエ「ふふふふふふ…さあ。姫さんは国を見殺しにするのか。好きな人を自らの手で殺すのか…。」
姫「私は…」
魔王「………」
姫「私はアヴァンスの国、第一王女アイリーン・アヴァンス。国を見殺しにするなんてできない。…でも………ウィルバート。あなたを殺すこともできないわ。」
魔王「アイリーン…」
ロピエ「この闇の時間が終わりあかりがつけば魔王ウィルバートは我を忘れ、姫、お前を襲うだろう。この時間をどう使うかはお前の自由だが…僕は飽きやすいから。いつ明るくするかもわからないよ、どちらにするか、早く決めるこったな。」
姫「……ウィル…。」
魔王「……………」
姫「私、暗闇で不安でいっぱいだったの。でもあなたが毎日話しかけてくれてとても心強くて、不思議と怖くないって思えたの。私の心の拠り所はあなただけだった
そんなあなたを失いたくない…」
魔王「……うん。」
姫「せっかく姿を見ることができたのに…」
魔王「こんな姿怖いだろう…」
姫「いいえ。」
魔王「……。」
姫「会いたかった。こうやって…触れたかった。」
魔王「…アイリーン…。」
姫「…………。ウィル…あったかいね。」
魔王「アイリーン、ごめん。」
姫「え…?」
魔王「…………………………。」
(SE:グサッっとナイフが体に刺さる音or血しぶき)
姫「!?」
魔王「私は君に出会え…て本当に…よかった」
姫「え…?ちょ…ウィルバート?!ウィル?!」
ロピエ「え?なに?どうゆうこと?電気つけ…」
(SE:あかりつく)
ロピエ「!?」
姫「なんで…っなにしてんのよ!?なんで私がナイフを持って…ウィル…、血が…。」
魔王「君が…僕を殺さなきゃ…意味がないからね…」
姫「もうしゃべちゃだめ!!!!」
魔王「最後に私の…願いを…聞いてほしい」
姫「………さいごなんて…言わないでよ……!!!」
魔王「私の中にある果実まで届くように私は深く自分にナイフを刺したつもりだ。」
姫「…っっ……」
魔王「この果実は今まで貯めた魔力の詰まっている果実。これをやつが食べたらやつの魔力が完全化する仕組みだったんだ…。今…この果実にナイフを刺したことでみんなの魔力は…戻るはずだ…。みんなの力を合わせれば…それほどやつは強くはない…。終わらせてくれ…。君の…手で…。」
姫「ウィル…?ウィル!!」
カイル「………ん…う。」
リオン「アイリーン…。」
ギル「すいません…遅くなりました」
エリス「けがはありませんか?」
姫「みんな…」
カイル 「姫、泣いてるのですか…?」
姫 「つ……………うっ、、うっ、、」
エリス 「私たちはみんな養分を吸い取られながらもあなた達の話を聞いていました」
姫 「エリス…。」
ギル 「アイリーン姫、彼の死を無駄には出来ません」
姫 「ギル…。」
リオン 「大丈夫、あたしらがいればあいつを倒せるよ。そいつの仇、打とう…!」
姫 「リオン…。」
カイル 「さあ、行きますよ姫…。」
姫 「…っ、、ええ。」
カイル「(あくび)よっくもやってくれたなーー!?このピエロやろー!!」
ロピエ「げ。」
リオン「4人パーティー揃えば最強なんだからね!?」
ギル「いや。今は…5人かもな」
エリス「ええ。アイリーンもいます。」
姫「………………」
カイル「アイリーン姫」
姫「…ええ。行くわよ。…………いっけえええええ!!!!!」
エリス「覚悟しなさーーーーい!!!」
ギル「くらえーーーーーーーー!!!」
リオン「いっけええええええええ!!!!」
カイル「おりゃーーーーーーー!!!!」
姫「これで…終わりよーーーーーーー!!!!!」
ロピエ「うがあああああああああああああああああああ!!!!」
場転
王妃「アイリーン!!」
国王「お帰り愛娘よ!!」
姫「お父様!お母様!!」
王妃「きっと帰ってくるって信じてた」
国王「勇者たちも…魔王を倒してくれてありがとう」
カイル「…………。」
姫「……違うよお父様」
国王「え?」
姫「魔王様はとてもやさしくてかっこよくて…そしてとてもいい人だったよ」
国王「あ、アイリーン…」
王妃「…まあ……。………ふふ。」
国王「お前…」
王妃「まあいいじゃない。あなた。私にはわかるわ。後でゆっくり聞かせてね」
傭兵長「国王様。ご報告があります。今回新しく傭兵部隊に入りたいとの男が来ております」
国王「おお、入りたまえ」
男「本日をもってアヴァンス国第一傭兵部隊に所属することになりました。ウィルバート・ヘレンビアです。どうぞよろしく。………アイリーン姫。」
END
暗闇のぬくもり 小桜あゐ @kozakura_ai
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