崩れた法則性
『また、殺人事件です。本日、埼玉県の
ピンポーン、となだらかな音が自身の部屋に鳴った。僕は新聞の社会面を折りたたみ、テレビを消して玄関に向かう。
「誰だろ……」
そう呟きながら、玄関の扉を開いた。
「えっ……」
「よぉ、タカシ。ちょっと入れさせてくれ」
「えっ、ちょっとま……」
制止するまもなく、ダイスケが入っていった。しかし、それはダイスケだとは一目で分からなかった。いや、信じたくなかったのかもしれない。
ふぅーと、僕のソファーに腰下すダイスケは赤いジャンパーに、黒のスニーカーという恰好だった。
「おい、まさか……」
「なぁ、ちょっと金貸してくんね」
「え? なんでいきなり」
「必要なんだよ。なぁ、友達のよしみだろ」
「友達って、もう何年も会ってないじゃないか
「つべこべいわずにさぁ。どこに金あんのか。ここか。ここか?」
ダイスケはそういいながら、部屋を精査する。座布団の上を覗いたり、ソファーの下を確認したり。やがて、窓側のクローゼットに近づいた。
「あ、そこは――」僕は叫んだ。
「へっ。ここだな。よいしょっと」
クローゼットを開け放った瞬間、ダイスケが不思議そうな顔をした。
「あれ? 赤いジャンパーと黒いスニーカー……」
僕は持っていたハンマーで、彼の頭を叩いた。
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