遭遇した知人










「そんな難しいことじゃないだろ。……いやだからそこまで心配する必要ないって……え? ……だからさぁ、田中の代理で来たって……いや、分かるでしょ? ……うん、うん、そうそうトッピングに赤まむしね。うん、そう、そいつをぶっかければ……そうだよ、そうそう」




「あれ……あれって……」



「ん? ……あ、ああ、あとよろしくな」



「ん……いや、違うかな……」



「あれ、あいつ……どこかで見たことあるような無いような……」



「あっ」



「あっ」



「おー! 久しぶりじゃん!」



「おー! 久しぶり! 何してるんだよこんなところで」



「そっちこそ、何してんだよ」



「俺? 俺は、大学がすぐそこだから」



「え、田中どこ行ったんだっけ」



「東京チョモランマ香港大学」



「おお、スゲーじゃん! いいなぁ」



「なんのなんの。どうせそっちもいいとこ行ったんだろ?」



「いや、俺はね、歌舞伎町大学止まりだったわ」



「うわっ! お前も十分いいとこじゃねえかよ。このぉ!」



「あはは。やっぱ今さ、ちょっと後悔しててさ」



「え、どこが?」



「だって、ウチの大学ほとんどが男子だぜ? いても気持ち悪い女しかいねえしさあ。早稲田蹴ったのマジで失敗したわー」



「ああ、そっちの大学はそうかもね。でも、ウチもそれほどだよ」



「ほんとか?」



「ほんとだって。なんか、こう……むさ苦しい女子しかいないっていうのかな。清楚な娘がいない」



「あー、それもキツそうだね」



「だろ? だからさ、付き合ったところでね、アレよ……ちょっと損した気持ちにならない?」



「分かるわ。どうせ付き合うならね、かわいい子がいいよね」


「やっぱ出会いの場が大事かもな。サークルとか」



「いや、サークル行っても同じ大学なんだから変わらないだろw」



「そうだったww」



「やっぱバイトとかしたほうがいいのかね」



「かもね。コンビニ店員とか、美女いる確率結構高くね?」



「それな。ウチの近所のコンビニでもいるわ。まず、店入るじゃん」



「うん」



「でさ、そんときにチラッとレジの方見るやろ?」



「あー、男の獣の習性でね」



「そうそうw それでさ、ある時いつも通りにチラッて目を上げたら『あ、かわいい!』って脳が反応すんのよ。でも、いつも通りのルーティーンに抗えないから下げるやろ?」



「せやね」



「その次の瞬間に、グワッと! 一秒も掛からずに首を上げてさ。しっかりその可愛さを確認したわw」



「はははww その速度だと、首がもげてもしょうがないねw」



「本当にそれよw あの首の上下運動は、音速越したんじゃないかね」



「マジか。ヤバww」



「二度見の本能には理性が効かないね……あ、すまん、俺もう行かないとだわ」



「ああ、そうか。じゃ、また」



「また」



「電話しろよ」



「そっちもなw」



「おうw」




…………






「(誰だあいつ。え、ええ? 気持ち悪。いや、マジでこっちは知らないのに、急に久しぶりとかいってくるから、つい乗っちゃったけど……。やっぱ、赤の他人だよなぁ……てか、なんで俺の名前知ってんの……? 怖……)」



「(うわうわうわうわうわ、誰誰誰誰誰誰誰本当気色悪いんですけどー! なんで知り合いじゃないのに、あんなに話しちゃってんのー! てか、普通向こう気づくよね? 会話の途中で絶対違和感とか感じるじゃん。あの田中ってヤロー、反射神経麻酔掛けられてんじゃないの? マジで無理だわー。友達的にマジ無理やわー。はよ帰ろ)」


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