第2話

体を動かそうとしましたが、体中が痺れて動けません。

どこか痛い気もします。

それでも、その人は立ち上がって、ずるずると体を引き摺り歩いていきました。


自宅前に辿り着いて、漸く、自分が鍵を持ってないことに気がつきました。

だんだんと目の前が、くらくらしてきました。

漸く、ここで死ねる、と思った矢先、ビックリして足を止める人の気配に気づきました。

「どうしたんですか?」

「大丈夫ですか?」

声が聞こえます。

その人は、しまったと感じました。

早朝の誰もいない時間帯に、誰にも見咎められることなく死んでいこうと決めていました。

なのに今、善良な赤の他人に見つかってしまったのです。

善良な赤の他人は、その人が、家族と一緒に住んでいたのを知っていましたから、ピンポンとチャイムを鳴らしました。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る