コネコのグルメ〜ジャンクご飯編 #コネコビト

ナコ

マクドナルドでてりやきマックバーガーですにゃ!

 コネコは、コネコビト。

 むかしネコだった、そのうちニンゲンになる存在。

 いまは貧乏な本屋さんのシイナさんと一緒に、毎日気ままに暮らしています。

 趣味は、お散歩、ニンゲン観察、グルメ!

 ネコからコネコビトになってこのかた、ニンゲンの食べ物はおいしいのにゃ、これを考えたひとにノーベルコネコビト賞を贈呈だにゃ、とたびたび感じ入っているのです。


 とある休日のお昼はご飯は、シイナさんとふたりでマクドナルドにやってきました。平日だけれど、休日です。

 コネコもシイナさんも、マックが大好き。そして、昨日の夜から無性にマクドナルドが食べたくなってしまって、これは禁断症状というやつです。手が震える前にあわてて、電車に乗ってマクドナルドのある街にやって来ました。

「コネコたちの町にも、マックできてほしいにゃ」

「昔はあったんだけど、潰れちゃったんだよね」

「にゃあ! カサノバのバカ!」

 CEOをディスりながら、列に並んでコネコはご注文を思案中です。


「シイナさんは何にするにゃ?」

「ダブチーかなあ」

 ダブチー、すなわちダブルチーズバーガーはビックマックと双璧を成すマクドナルドの看板商品。

「にゃ」

 ダブチーは鉄板にゃ。でも、期間限定メニューも気になるし、たまにはフィレオフィッシュなんかもいいかなあ、とコネコの心は揺らぎます。

「LLセットにするにゃ?」

「やめといたら」

「にゃ」


「ご注文をどうぞ」

「ダブルチーズバーガーのセットと……」

「てりやきマックバーガーのセットでおねがいしますにゃあ」

「ひとつはポテトSのセットで、もうひとつはポテトMのセットで、飲み物はオレンジジュースとコーラで」

 さすがはシイナさん、流れるようなオーダーは完璧です。

 ポイントカードはありません、店内で食べます、とたたみかけます。

「どうしてコネコがポテトとコーラって分かったにゃ?」

「いつもポテトとコーラだから」

 レシートに大きく印字された数字が頭上のディスプレイにも表示されて、セットがふたつ、できたてあつあつでトレイに乗せられてカウンターから渡されます。

「ケチャップふたつ、付けてください」

 忘れずにケチャップも貰って、席に着いたら、かさかさした包み紙を剥いで、急いでかぶりつきます。


 うん、ジャンク。

 ダブルチーズバーガーもてりやきマックバーガーも、ここにひとつのジャンクフードの極みを体現しています。


 ダブルチーズバーガーには、暴力的なほどの牛肉の味わいとそれを引き立てる塩気、そして少し癖のある色の濃いチーズの主張。口の中がアメリカ合衆国になりそうな勢いです。

 あつあつのポテトを一緒に頬張ると、口の中はアメリカ合衆国アイダホ州の雰囲気。

 目を閉じると広大なジャガイモ畑、その向こうに牛たちが見える気がします。かつて乳を出し、それがチーズとなり、やがてビーフパティとなった牛たち。

 オレンジジュースで口の中をいったん洗い流すと、一瞬カリフォルニア州が現れます。青い空、ビーチ、オープンカー。


 このポテトにケチャップをべったりつけるのも、またアメリカンであると言えます。ポテトは野菜、ケチャップはトマトだから野菜、という考えの国ですから、肉に野菜にパン、すなわち完全食です。ほんとに?

「ポテトは、はじっこの黒くてカリカリしたとこが好きにゃ」

「しんなりしててもおいしいけどね」

「それならシイナさんはしんなりポテトばかり食べてくださいにゃ」


 てりやきマックバーガーといえば、これはアメリカとジャパンの融合した、和でも洋でもない新しいジャンルの食べ物。

 まるで西洋人が考えた日本。江戸幕府の想像した欧米。

 さながらサムライがコンバースを履いているようです。

 こってりした甘辛のソースはどこか懐かしい味わいなのに、みずみずしいレタスや噛みごたえのある肉は、確かにアメリカ生まれ。

 照り焼きソースの奥に潜むかすかなスモーキーさは、下町の焼き鳥屋の煙なのかそれとも、荒野に漂う硝煙の香りか。

 ポテトを途中参戦させると、突然そこはアイダホ州です。

「てりやきのソースをお芋につけて食べるのも好きにゃ」

 途中からマヨネーズソースがてりやきソースの濃厚さを中和してくれるのも良いアクセントです。アイダホ州の荒野のサムライはヒートテックを着ていたのです。

 コーラをひとくち、炭酸の刺激と共に特有のスパイシーな甘さがたちまちのどを通り過ぎます。スカッと爽やか。


「ごちそうさまでした」

「ごちにゃ」

 アメリカの風を感じながら、食べ終わってしまうまではほんの一瞬でした。

 シイナさんは薄まったオレンジジュースを飲みながら、確かな重量感を胃の中に感じています。ポテトをSサイズにしてよかった。しかも、Sサイズのセットは五十円引きなのです。

 コネコはコーラも飲み終わって、小さな氷をばりばり噛み砕いています。


「あいむらびんいっと」

 そういうことです。


《よろしければお好きなハンバーガーの種類またはご感想をご記入下さい。バーガーキングも増えてほしいですよね》

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