第4夜 悪夢の夜へようこそ
鬼に金棒、幽霊に暗闇
10月に入り、日の入りも早くなってきた。
夜の時間が長くなった事もあり、僕達幽霊は暇を持て余している。
「ぁぁぁあーーー!!!暇よ暇!!!」
「そうですねー、やる事もないですし」
幽霊の仕事のピークはやはり夏である。夏が過ぎ、仕事も格段に減ったのである。
「ねー、なんかやる事ないのー?」
「なんで僕に聞くんですか……」
「だって今君しかいないじゃん。レイジは散歩行っちゃったしさ」
「まじかよ……あいつ次会ったら粉々にしてやる……」
幽霊の身体には慣れてきたものの、まだ12時以降の外出は出来ない。
しかしレイジはもう僕より前に幽霊になっていたので、昼夜問わず外出する事が出来る。
「おいお前ら!まさか私の存在を忘れているんじゃ無かろうな!」
出たハイテンション猫。てかどっから出てきたよ。
「なんでミーさんまで………」
「いやー、最近魔術師としての仕事が減ったもんで……」
「あー、僕らと同類ですか。」
「失礼な!!!」
とにかく、幽霊にとって秋とは憂鬱でしかない。
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”異変”はいつも突如として起こる。
「エイルー、私の部屋からほうき持ってきてー」
「自分で行ってくださいよ……」
とは言うものの、行かなければ色々文句を言われてしまうので結局行く事になるのである。
最近になってようやく屋敷の部屋全ての位置を覚える事が出来た。何度も思うがこの屋敷は広い。
部屋に入る。電気は付かないので、手持ちのカンテラに灯りをともす。
えっとほうきは確か……お、あった。
長く使われていないせいか、埃を被っていた。
さて、戻るとしよう──
そう思ったその時だった。
部屋の隅が妙に暗い。
カンテラを近づけてみる。すると、影でも無い、暗い何かがあった。
何だろ、これ。
とりあえずアリルに報告しよう。
「……」
アリルは黙り込んでいる。
「まさか、まさかとは思うけど……」
「……」
「電気つけてなかっただけじゃないの?」
……は?
「いやあの、今そういうのいらないんで。真面目な話。そもそも電気通ってないでしょ。」
「真面目に聞いてるわよ。面倒だから行きたくないだけ」
…レイジより先にこっちを粉々にしたい。
「とにかく調べてみなきゃね。ミー、あなたの出番よ。」
「え、ええぇ!!?」
「面倒なのよ。お願いね。」
「わかりましたよぉ、行けばいいんでしょ行けばー」
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「確かこの辺にあったんだけど……」
先程までは確かに存在した”暗い何か”が見当たらない。
「消えちゃったのかな?」
「そんなことは……」
すると、突如”暗い何か”が近寄ってきた。
「ミーさん、う、後ろ!!!」
「ん?」
「これ……さっき見たやつだ!!ミーさん見えますか!?」
「これだな!ちょっと待ってろ……」
そう言うとミーは魔術書をめくり、
「あった!!『ライト』!!これで少し明るくなるよ!」
ミーが叫ぶと、辺りは明るくなった。
すると、”暗い何か”がハッキリと見えるようになった。
ミーがそれを捕まえる。
「こいつだな、暗闇の正体は。」
なんだこれ。虫みたい。
「これは何ですか?」
「『暗虫』。暗闇を作り出す虫だよ。」
何それ、初耳。
「とりあえずアリルさんの所に持っていきましょう。」
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「あー、こいつね。君がさっき言ってた暗闇ってのは。」
アリルは暗虫を見つめている。
「……!!!」
「どうしたんですか?」
「こいつ、まさか……」
よく見ると、何か文字のようなものが刻まれているのが分かる。
──メリアの使いね。ここまで力が強いのは初めて見た。」
メリアって、この屋敷の”宝”を狙ってる……
「……早めに手を打たないと、手遅れになるわ。」
ここからが”悪夢”の始まりだ。
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