蜘蛛と雲と

遂に本格的な夏がやって来た。

やってきて欲しくもなかったけど……


この時期増えるのが「虫」。

都会に住む人々には厄介な存在である。(僕も嫌いだった)

その中でもこの屋敷で猛威を振るうのが、そう、「蜘蛛」である。

この屋敷は、幽霊がいるとはいえ至る所に蜘蛛の巣が張ってある。

てか、この屋敷に来た当初から何も変わってない。余程掃除してないんだな。


「蜘蛛ねぇ……

この時期はよく出るのよねぇ。」

いつも通りアリルの部屋で喋っている。

「蜘蛛は嫌いです。足が多くて気持ち悪いし。」

実はレイジ、かなりの虫嫌いなのである。蚊でさえも無理だと言う。

「しかも、蜘蛛の長が毎年この時期に来るし、色々と面倒なのよねえ。」

なんか、最近幽霊屋敷じゃなくて妖怪屋敷と化してる気がするんですけど……


その日の夜中。(と言っても幽霊にとっては昼みたいなもん)

自分の部屋にいると、微かに物音がした。


カサカサ……


これは、虫だ。

いつも通り虫殺し用の短剣を手に取る。

何処にいるんだ……?


すると、足元に小さな蜘蛛が現れた。

踏みつぶそうとしたその時。


「動かないで」

そう声が聞こえた。

「それ以上動くと殺すわよ」

なんか、とてつもなく嫌な予感がするんですけど……

冷や汗が僕の喉を通る。

「何処にいるんです?出て来てください」

僕は恐る恐る言った。

「わかったわ。その代わりその子を潰さないで。」

それはもう本当に申し訳ありません。

完全に僕が悪いです。

その場から離れる。

「私は、女郎蜘蛛のフルアよ。

この辺の蜘蛛の巣を守ってる。」

「僕はエイル。この屋敷の新入り幽霊です」

「あー、新入りね。

じゃあ初めましてだね。」

フルアが手を差し出してくる。僕も手を出す。

「よろしくね。」


「なーんでまた来たのよ。

する事も欲しい物もないのに。」

「暇になったからつい……」

例の如くリビングで茶を飲んでいる。

「いいわ。毎年の事でしょ。

それより、今年の、あなたどうするつもりなの?」

「肝試し大会って何です?」

レイジがすかさず聞く。

「あー、あなた達には説明してなかったわね。

毎年この時期に、近所の子供達が肝試しをしに近くの森に行くのよ。それを私たちで盛りあげるっていう、恒例の行事よ。

毎回ほとんどの子が泣いて帰ってるわ。」

肝試し、か。

僕もよくやったな。

「も、もしかして、僕らも…?」

「当たり前じゃない。この辺の幽霊全員参加よ。」

はいー追加案件入りましたーーー。

「私は、とりあえずいつも通りタランチュラを呼ぶわ。私が脅かそうとしてもそんな驚かなそうだし。」

「あの蜘蛛、私でさえたまに驚くもの。よくもあんな適役がいたわねぇ」

「この辺の蜘蛛の中では、ダントツに怖いらしいよ。」


「あのー、僕らって何するんすか……」

「あー。君達は初参加だから、明後日の集会に出て貰うわ。私の代わりにね☆」

「まじすか……」

「うわーまじやばたにえーん!」

レイジ君、殺していいですかね?


そんなこんなでまた面倒事に巻き込まれたとさ。めでたしめでt(ry

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