第3夜 真夏の肝試し大会
ねがいごと
「どういう事!?仮面男があの屋敷に寝返った!?」
「ええ。そういう事でございます。」
メリアの部下の閑古鳥兼人間の執事が言う。
「全く、どいつもこいつも役立たずね。」
「左様であります。このままだと、私達の計画が失敗に終わります。何か手を打ちましょう。」
「もういい。私が直接いくわ。今年のハロウィンに決行よ。」
「と言いますと、あと約3ヶ月後でございますね。
何故今決行しないのです?」
「だって夏って暑いじゃん!
やる気出ないし!」
これには執事も呆れたようだ。
「……わかりました。では、私共でできる限りのお手伝いをさせていただきます。」
「それと、夏は人間が多いから気をつけてね。」
「わかりました。」
執事は鳥となり、去っていった。
「てか、なんで夏ってこんなに暑いのよ!!!!」
—————————————————
事件から1カ月あまりが過ぎた。
雅和には「レイジ」と言う名が付けられ、この屋敷で僕ら幽霊の仲間として過ごしている。本人は僕を殺そうなんて気などもうないらしい。
今日は七夕。幽霊になってから日付なんてすっかり狂っていたが、夜中に街を出歩く時にちょくちょく日付を見ていた。
「七夕ねぇ………」
アリルが呟く。
「ロクな思い出ないのよね。願い事しても結局無駄だし。」
「はぁ………」
この屋敷に七夕の文化なんてあったんだ。そういえば玄関に笹が飾ってあった。多分七夕用だろう。
「エイル、あなたは何か願い事をするの?」
「強いて言えば、『健康でいられますように』くらいですかね。」
「幽霊に健康もないでしょ」
まぁ、そうですけども。気持ちの問題でしょ。
「レイジ、あなたは?」
「僕は特にないっす」
「つまらないわねぇ。でも、それだけ現状に満足してるって事ねぇ。」
幽霊になってるのに、現状もクソもないと思うんだけど……
「それにしても、今夜は星が綺麗ね〜。」
「流れ星でも来るんじゃないですか?」
七夕の夜に相応しい、快晴の夜となった。天の川もしっかり見える。
「あ、流れ星!」
レイジが指を指し言う。
「本当だ!何か願い事言わなきゃ!」
アリルが興奮気味に言う。
流れ星が流れている時に、3回言えば願いが叶うと言われているが、流れ星はすぐ消えるから、そんなの到底不可能だ。
「あれ?この流れ星、遅くない?」
「え?」
流れ星を見てみる。目の錯覚と思いたいほど、遅かった。
「まさかとは思いますけど、大きくなって見えません?」
「違う、あれは—」
こっちに向かってきている!
「みんな!逃げろっ!!!!」
その後、大きな轟音が聞こえた。
恐らく中庭に激突している。
恐る恐る中庭に行く。
「まさか、宇宙人とかじゃないでしょうね!!」
宇宙人だとしたらすごい。でも、現実にそんな話ってある?
予想通り、中庭に激突していた。
白い煙で、激突したものが見えない。
「だれかいるのー?」
その時。
プシュッ。
何かが開く音がした。
「はぁあぁ。まーたやっちゃった。」
!?煙の中から声が聞こえる。
まさか本当に宇宙人!?!?
一斉に武器を構える。
「あんた誰よ!出てきなさい!」
「まmm待って下さい!!
決して貴方達の敵ではありません!」
宇宙人(?)は焦った声で言う。
「煙で見えないわ。こっちへ出てきて」
「驚かせてすみません。私、彦星の幽霊です。」
はぁ????
「は?」
「は??」
「彦星の幽霊ぃ?」
「はい。天の川のとある星に住んでいて、時々地球に遊びに来るんですけど、去年も同じ事しちゃって。」
彦星と名乗る幽霊は照れ臭そうに笑う。
「まじか………」
「彦星って実在したのね……」
「屋敷をこんなめちゃくちゃにしてしまったので、3人の願い事を叶えてあげましょう。」
「まじで!やった〜!」
願いが無い筈のレイジが喜んでいる。
「じゃあ、まずは私からね。」
いや、何でだよ。
「この屋敷を戻してちょうだい」
「はいはい、お安い御用ですよ。」
パチン、と彦星が指を鳴らす。
すると、さっきまであった瓦礫が消え、宇宙船らしきものが見えるようになった。
「ありがとー。これ直すの面倒なのよね〜。」
「じゃあ次、僕でいいすか」
レイジが言う。お前願い事なんかないんじゃ無いの!?
「やっぱ無いっす」
は?そこは何とか言えよ。
「そうか。君はじゃあ仕方ないけど、また来年と言うことで。」
また来年も来るつもりか。またこんな登場の仕方されたらたまったもんじゃ無い。
「君は?」
目線が僕に向けられた。
「ぼ、僕ですか?
僕は、とりあえずもうちょっと運動ができる体にして欲しいです。」
「はいはい、安すぎる御用〜」
は?何言ってんのこいつ。
「はい、少しは運動神経上がった筈だよ。」
「ありがとうございます。」
「さて、そろそろ僕は帰るとしましょうかね。
この度はお騒がせしてすみませんでしたね。」
「お騒がせ過ぎよ。」
「じゃあ、また来年もよろしくお願いしますねー」
そう言って彦星は空に帰って行った。
「そういえば、彦星ってリア充だよな?」
「そうね。年に一回織姫とイチャイチャしてるし。」
何の話をしてるんだこの人達は。
「おい、エイル。リボルバー貸せ。」
「いいけど、何で?」
リボルバーを手渡す。
「リア充は○ね!」
バン、と音が街に響く。
その弾は、彦星が乗っている船に当たってしまった。
「亜」
「おつかれ、、、」
その後、話を聞くと、どこかの民家に墜落したらしい。
僕がやった訳では無いけど、本当に申し訳ない。
この賠償はいつかします。いつか……
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