ガラクタ人形と仮面男の遊戯会 ③
僕は、人間の時の事を思い出しかけた。
しかし、本能的にそれを拒否した。
よくよく考えれば、僕はあの時元々自殺しようとしていたんだ。
もう僕は、こんな人生が嫌だった。
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「はぁ………
もういい加減終わりにしましょう。
あなた方がさっさと死ねばいいんです。」
仮面男の声から苛立ちが感じられる。
それもそのはず、さっきから騙されたりと散々な目にあっている。苛立つのも無理がないか。
「早く終わらせたいんです。さっさとかたをつけましょう。」
「その前に、1つだけ聞いてもいい?」
「はぁ。なんでしょうか。」
「君の通っていた小学校は、何処?」
どうしても聴いておきたかった。僕の人間の時の名前を知っているから、僕の知り合いの可能性が高いからだ。
「………」
「小学校って何????」
アリル、お願いだから邪魔しないでくれ。
「私の通っていた小学校は、葛ノ宮第一小学校です。」
!!
「君は………!」
「過去の事を気にしても仕方ありません。
さぁ、行きますよ!」
やめてくれ。僕の昔の友達とやりあうなんて、とても正気の沙汰でない。
それでも彼は容赦なく襲ってくる。
彼の目には、殺意が宿っていた。
そう。彼は、もう昔の事など忘れていたのだ。
もう、やめてくれ……!
「エイル!プレゼントよ!」
受け取ったのは、完成したライトリボルバーだった。咄嗟に彼に銃口を向ける。
「もう、終わりにしよう。
最終的には、君か僕が、いずれにしよどちらかが死ぬ。」
「…」
彼は無言を貫いたままだ。
「君は、誰だ?」
「………
仕方ないですね。」
彼は仮面を取る。
その顔は、見覚えのある顔だった。
「君は……、雅和?」
「よくわかったね。あの頃から会ってないはずなのに。」
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彼は、小学生の頃、いじめを受けていた。
詳しいことは覚えていないが、クラス中でいじめられていたのは確かだ。
そんな彼が唯一頼りにしていたのは、僕だった。
しかし、ある時そんな関係は崩れた。
「なんで…僕を助けてくれないんだよ!?
見てたろ!?あいつら、僕の持ち物全部奪って行ったんだぞ!?」
相手は、クラスの中でボス的な存在になっている奴だった。そんな奴に手を出しても、僕が真っ先に死ぬだけだ。
「なんかいえよ!!
それとも、あいつらとグルだったのか!?」
僕は、何も言えなかった。
「そうかそうか。もうこんな学校やめてやる!」
その翌日、彼の席は空だった。
それ以来、全く学校に来ていない。中学校にも。
ちょうど中3の頃、彼が自殺したと言うニュースを見た。
僕は、なんで助けてやれなかったんだろうと、ずっと思っていた。
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「…あの時は、本当にごめん。」
そんな言葉が僕の口から出てきた。
すると彼は、笑顔を見せ、こう言った。
「もう過去の事なんて忘れなよ。」
僕は、その場に泣き崩れた。あの事を気にしても仕方ない、未来に目を向けろ、そんな事を感じた。
「僕は、しばらくここにいることにするよ。ここで君に会えたのも、何かの運命かもね。」
朝日が昇ってきた。2人の瞳は、朝日に輝いていた。
第2夜 ガラクタ人形の晩餐会 完
アリル「ところで小学校って何よ?」
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