夜の散歩道

最近になって、ようやく幽霊の体にも慣れた。アリルによると、もう外出しても大丈夫だそうだ。しかし、夜の間だけ。

あと半年もすれば一日中外に出られるらしいが、今は夜だけでも充分だ。


「いい?12時くらいには引き返しなさいよ。下手したら間に合わなくなるわよ。」

「わかりました。気をつけます」

「それと、私の話し相手がいなくなるから早めに帰ってきてよ。」

「わ、わかりました」

全くこの人は。

「じゃあ、行ってきまーす!」

「行ってらっしゃーい。」


はー、外に出るのって何ヶ月ぶりなんだろう。


僕は今、昔良く来ていた公園にいる。

外の空気が気持ちいい。

夜中だけあって、ここを通る人間も少ない。まぁ、元々ここあんまり人来ないんだけど。


?何か泣き声が聞こえるぞ……?


泣いていた子供に近づいてみる。

「どうかしたの?」

意味が無い事は分かっていた。せめてもの気休めだ。

「うーん……君、誰?」

!?この子、僕が見えるらしい。

「僕は、そこの屋敷の幽霊さ。君は?」

すると、途端に泣き声が止んだ。

「ふふふ……

君、あそこの屋敷の幽霊なんだ……」

なんだか様子がおかしい。

「じゃあ、今から死んでもらうよ!!」

「何っ!?」

突然の出来事だった。可愛らしい子供の姿は、いつのまにか憎悪を持った黒い影となった。


「ふふふふふ……君はバカだねぇ。

幽霊が見える者を信用するなんてさぁ!」

途切れなく襲ってくる。

「うわっ!?」

「あの屋敷には色々と恨みがあるんだ。そこの幽霊だとすれば一人残らず消えてもらうよ!」

こいつ……!


ふと後ろを振り返る。するとそこには—

「その手を離せ!さっさと成仏しろ!」

そう言うと、少年らしき幽霊が、光る矢を黒い影に向かって射った。


「な、なんだお前!お前もあそこの幽霊か!!」

「僕はあそこの幽霊ではないよ。ただ、道を通りすがった幽霊さ。」

少年がそう言い放った後、黒い影は跡形もなく消えてるいた。

「大丈夫?怪我はない?」

少年は僕の方を向いて言った。

「う、うん。大丈夫。」

「よかった。僕は晴翔。つい最近幽霊になったんだ。」

「ぼ、僕はエイル。僕も、最近幽霊になったばかりなんだ。と言っても人間から転生したんだけどね。」

「そうか。転生か。

僕はちょっと色々あってね……」

すぐそこにベンチがあったので、そこに二人で座ることにした。


「『龍使いの少女』?」

「そう。名前はメリアって言うんだけど。」

メリア、聞き覚えのある名前だ。

「僕は毎日、金縛りに悩まされていたんだ。それで、近所の怪しい家に行って、二度と金縛りにあいませんようにってお願いしたんだけどね。

その時、その少女が現れて、僕をこんな姿にしたって訳。」

「その少女って、今も居るの?」

「多分いる筈。」

メリアについて後でアリルに聞いとかなきゃな——


「さて、僕はそろそろ行かなきゃいけない。

エイル、一つだけお願いしてもいい?」

「いいよ。何?」

「僕の代わりに、メリアを倒して。

そしたら、僕は安心して成仏できる。」

「安心しな。僕と屋敷の愉快な仲間たちが、きっと、メリアを倒す。」

「ありがとう、エイル。

そうだ、君にこれを渡しておくよ。」

晴翔は僕に何かを渡した。

「これは、『ライトリボルバー』の欠片。

この辺りで拾ったから、探せばあと2つがある筈。」

「何から何までありがとう。」

「じゃあね。」

「うん。」

晴翔は闇へ消えていった。


「帰りましたよー」

「あーお帰り。意外に早かったわね。」

「それが、ちょっと色々あってですね…」

アリルに今日の成り行きを話した。

「そうか。メリアにやられたのか…」

「そう言えばメリアって誰なんです?」

「メリアは、私の妹よ。

最近悪さばっかりしていると聞いたけど、これほどまでとはね…」

アリルに妹なんて居たんだ。

「それと、これをもらってきたんです。」

「これは、確か『ライトリボルバー』だったわね。幽霊にだけ効く光の銃よ。

確かピル爺がもう一つ欠片を持っていた筈だから、今度言っておくわ。」

「ありがとうございます。」

「さ、あとは私の話しに付き合ってもらうわよ!」

「はいはい(萎え)」


僕の(幽霊としての)初外出は、こんな感じで終わった。

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