第2夜 ガラクタ人形の晩餐会

猫の落し物

その日は早く起こされた(と言ってもPM5時くらい)。

幽霊になってから1ヶ月半、夜の活動にも慣れてきた。

僕は自分の部屋をもらった。八畳程で、ベッドと机だけのシンプルな部屋だ。


アリルは隣の部屋にいるらしい。僕を起こす時、早くおいで、としか言われなかった。何か余程の事が起きたのだろう。


「起こしちゃってごめんなさいね。

あなたにやってもらいたい事があるの。」

やってもらいたい事?虫退治か?

「ちょっと暇だから話に付き合ってよ」

は????

そんな用事で僕を起こしたんですか?

「あの…寝不足なんですけど…」

「他にもあたったけど、起きてくれたのは君だけなのよ。」

えぇ……

「わ、わかりました。」

その後、2時間ほど僕が人間だった頃の話をした。

「へぇー、その初恋の相手、引っ越して以来会ってないんだー」

「もう5年目くらいですかね」

その後もしばらく雑談をしていた。


—————————————————


どうやら寝落ちしていたようだ。余程眠かったのだろう。

アリルも隣で寝ていた。起こさないよう、ゆっくり部屋から出た。

みんなもうそろそろ起きているはずだ。1人だと流石に暇。だれか起きててほしいな〜

そんな事を考えながら廊下を歩いていると、目の前に白い箱が落ちているのを見つけた。丁寧に紐まで結んでいる。

何これ?


「これは、『猫の落し物』ね。」

猫の落し物?こんなプレゼントみたいな箱が?

「猫って、あの野良とかの?」

「違う。そこら辺の猫じゃなくて、猫人間の物だと思う。」

「猫人間???」

「最近この辺をうろついてるから、その時に落としたものよ。この屋敷はセキュリティが甘いわね…」

セキュリティって言葉、こっちにも伝わってたのか。

「とにかく、持ち主が現れるまでこの屋敷に保管しときましょ。どこかに金庫があった筈よ。」

しまう場所は、三階の空き部屋になった。金庫の鍵は僕の部屋にしまう事に(何故か)なった。

「とりあえず屋敷の門番をどうにかしなきゃね…」

「ていうか、扉に鍵かけてるんですか?」

「あ、その手があったか。面倒だったから外してたのよ。」

「面倒で外していいものじゃありませんよ!?」

アリルはしばらく笑っていた。


誰も気づいていないが、この落し物は後に重大な役割を果たす事になる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る