少年が持つ不思議な力

「…偵察は終わりました。あとは攻めるだけです。」

男が言う。

「ご苦労。こっちからは捨て駒を送るわ。せいぜい死なないように、ね。」

少女が不気味な笑い声を立てる。

「はい。あの幽霊屋敷の『宝』は、もうあなた様の物同然です。私にお任せ下さいませ。」

「ふふふ…あの幽霊屋敷も、もうすぐ私の物よ…」

そう言って男は部屋を出た。


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「もっと早く!!」

「わかってますけどー⤵︎」

訓練用マネキンが立ち並ぶ。ここは幽霊屋敷の能力訓練室だ。もらったばかりの能力の訓練をしている。戦いなんてしたことないから、慣れない。

「もっと早く走れないのー?」

アリルが言う。無茶だ。人間(過去形)には限界がある。

「これでも僕、50m8秒なんですよ〜!?」

「50mって何ー?」

よくよく考えたら知ってる方がおかしかった。


そんなこんなで30分が経った。僕の体力はもう限界だ。

「そんなんじゃ、敵に追いつかれるわよ。」

「わ、わかってますけども、そ、そんなに人間は、早く走れないんですよ、はぁ、はぁ。」

「うーん、そうね。確かにあなたつい最近まで人間だったものね。」

今更かよ。

「まぁとにかく、危なくなったら必死に逃げること、いいね。」

僕は疲れながらも頷いた。


次はいよいよ模擬戦だ。あれだけ武器を使う練習をしたから、怖いものなしだ。

「あのマネキン10体を、30秒以内に全て壊して。そしたら合格よ」

30秒、微妙。

「それじゃあ、始め!」


一瞬僕のまわりが白くなった。と同時に目を開けると、そこには驚きの光景があった。


なんと、マネキンが破壊されているのだ!しかも10体全て。


「!!?大丈夫!?」

アリルの声が聞こえる。

「は、はい!なんとか」

「ちょっとちょっと待ってよ!もしかしたら君、特異能力者かもしれない!」

そんな事言われても、僕には何があったのかわからない。

「な、何があったんですか!?」

「あのねー、君が一瞬にしてマネキン10体を粉々にしてた!」

意識がない間にそんな事が起こっていたのか。

「詳しく話をするから、部屋に戻って頂戴。休憩がてらお茶を飲みましょ。」

相変わらずこの人は。


「——特異能力者っていうのはね、極一部の幽霊だけが持つ不思議な力が、自分の能力と結び付く事で生まれるのよ。あなた、やはり他の幽霊とは違うと思っていたけど、まさか特異能力者だったとはね。」

カップのお茶を飲みながら彼女が言う。

「ぼ、僕にそんな力があったとは、知りませんでした。僕は人間界でもなんて事ない普通の人間だったはずですが。」

「特異能力ってのはね、自覚しなくても生まれるから、大体の幽霊が持っているのよ。だけど、それを操れるのはほんの一部だけ。この前のスケルトンとか、あと私とか。」

「そうなんですね。でも、僕はその能力を使ってる時、意識が遠のきました。」

「それは、これから訓練で自由に操れるようになる。だから、まだ危険だから実戦では使わないように、ね。」

「わかりました。」

すると、彼女は立ち上がり、背伸びをした。

「さぁー!訓練を続けるわよ!」

「はーい」


その時だった。屋敷内のどこかで、大きな音がした。

「何事ですか!?!?」

屋敷内の色がおかしい。

「こ、これは……!」


廊下に出る。すると、黒いコートを着た謎の男が立っていた。不気味な笑い声が聞こえる。


「さぁ、ショータイムだ!」

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