第6話 神田さんのシンクロニシティ その1
遠のいていく意識の中で、俺は変な夢を見ていた。
「........きら........な.......で.....。」
さっきから俺は直立不動状態だ。
辺りは真っ暗闇でよく見えないし、体も思うように動かない。それでも微かに聞こえてくる声は優しく、なんだか安心していられる。
この声は女性によるものだろうか。それに、以前どこかで聞いたことのある声だ。
どこで聞いたんだっけ。
思い出そうとしても思い出せない。ここ最近のことは鮮明に覚えているのに、なんていうか記憶にモヤのようなものがかかっていてそれ以上先に入り込めない。
「........きらめ..........いで.....。」
その間、景色は色を取り戻しつつあり、先程から聞こえてくる声も徐々に鮮明になっていく。
ふわっと暖かい風が吹く
その風とともに、気付けばいちめんがきれいな草むらになっていて、向こう側に人影が見える。
先程から誰かを呼んでいる女性だろうか。白のワンピースにおしゃれなハイソックスを身にまとい、手には日傘を持っている。それに、よく見ると翼のようなものまではえていて、肩まで伸びている金髪が美しい。
ただ、顔は黒い霧のようなもので覆われていて、先程思い出そうとした記憶同様はっきりと見ることができない。
そんな彼女は一筋の迷いなく俺に近づいて来る。そして目の前に来た瞬間....
俺の頬にくちずけをした。
いや、不可抗力だからねこれ。ホントに。俺、直立不動状態だし。
....え?嬉しくなかったんかって?
冗談ゆうなわて。嬉かったに決まっとるやろ。
そんで、彼女は俺の耳にそっと呟いた。
「....諦めないで。これからどんなときも。」
刹那、俺の周りをまばゆい光たちが包み込んでいく。それは、この夢の終わりを告げるチャイムのように....。
「....私がいつも側にいるから。」
別れのように、彼女が一言付け足した。
そして目が覚めた。
🌿🌿🌿🌿🌿🌿
目が覚めると、そこは作法室だった。時間はあまり経っていない。その証拠として、6月なのにこんなにも暑い。
....そういえば神田のうまいお茶飲んで....そんで....。
俺はぬくっと起き上がる
目の前には神田の姿があった。彼女はまたお茶をたて始めている。
そうだ、早崎は!?
俺はさっと隣を見た。そこには、気持ち良さそうに寝ている竹内の姿があった。
....あ。今、目を覚ました。
良かった。無事みたいだな。
俺は安心してささっと立ち上がり、スカートに付いているホコリをおとす。
ここで違和感に気付く。
....あれ?俺スカートなんて履いてたっけ?
さらに、つんつんと突かれたので振り返る。そこには、竹内....いや、俺がいた。
「....もしかして、竹内くん?」
俺がそう言ってきて、恐る恐る俺の腕の方を俺が見ると....ってややこしいな。
まぁそこには、見覚えのある女子用のブレザーと自分のものとは思えない白くてやわらかそうな腕があった。
....どうなっているんだ。
俺が混乱している中、スッと音がした。目の前には、神田がたてたであろうお茶がある。
「お二人とも。事態を飲み込めないことはお察しいたしますが、取り敢えずもう1度このお茶を飲んでいただけませんか。」
「....うん。」
隣にいる俺は、ある程度事態を把握できたらしく、目の前に出されたお茶に手をかけた。
....次から次へとホントにどうなっているんだ。
お察しされても現状を飲み込めない男(?)がここに一人居た。
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