第7話 知歌の嘘

 今日はどんよりとした休日だ。


 私は見てしまった。


 学校で菜保子なほこと大地君が抱き合ってた。


 同じバスケ部のユニホームを着てる二人。

 お似合い。

 私は運動が苦手だからバスケ部なんて入らなかった。

 菜保子なほこと大地君はクラスも一緒なんだよ?


 いつでも離れない二人が羨ましかった。


 私は美術部の部室で課題の仕上げをしながら体育館から出て来る菜保子なほこを見かけた。

 一緒に帰りたくて声を掛けようと部室を出た。


菜保子なほこ


 ショックだった。

 二人の顔つきから私は大地君が菜保子に告白したんじゃないかな? と思った。


 小学生の時から二人は仲が良かった。

 私はいつも遠くから見ていた。


 私は菜保子と大地君の間には入れない。


 何度も、渡り廊下で抱き合う二人の姿がはっきりと浮かんできて私の胸が苦しくなる。


 嫉妬で狂いそうになる。


 私は、菜保子と大地君と私の三人が良い。

 私だけ仲間はずれなんてイヤだ。


 菜保子は苦しそうだった。


 たぶん大地君からの告白を断ったんだ。


 二人には付き合って欲しくなくて私は先手を打ったの。

 私がこう言えば菜保子は大地君から告白されたって断るだろうと思ってた。

 お人好しで可愛い菜保子。

 菜保子の性格ならたぶん大地君とは付き合わない。

 私はそう思ったから。



 ちょっと前に学校からの帰り道で私は菜保子に告げた。

『菜保子。私の好きな人を教えてあげるよ。大地君だよ』

知歌ちかは大地のことが好きだったの?』

『うん! 大好きだよ』


 菜保子は泣きそうな顔をしてた。


 私は菜保子からちゃんと聞いたことはなかったけれど菜保子が大地君を好きなことはバレバレ。菜保子は素直すぎるから顔に出ちゃってるの。


 菜保子の哀しそうな顔を思い出して心が痛い。


「私が大地君を好きだって嘘をついたからだ」


 あれは嘘だ。


「私は大地君を好きなんじゃない」


 好きな人は他にいる。


 突然鳴り出した激しい雷雨の音に外を見ると、朝を迎えたはずなのに真っ暗で稲光が光っていた。

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