第5話 名前が好きだ

「あのさ。佐藤ありがとう。嬉しいよ。だけど俺、恥ずかしいや」 

「えっ」


 私は大地からぱっと離れた。

 大地も私も顔が赤くなって下を向いていた。


「なあ佐藤のこと菜保子って呼んでもいいか?」

 

 私はベンチに置いたバッグを持ち上げながら「私、自分の名前好きじゃないんだ」と返事をした。


「知ってる。だけど俺は佐藤の名前好きだよ」

「えっ?」


 大地が私の名前を好きだって言ってくれた。


 私は飛び上がるほど嬉しかった。


 名前だけじゃなくて私のことも大地に「好きだ」って言ってもらえた気がした。

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