第2話 地方ではホステスも列車通勤なのだ

同じくその家出の列車である。広島から門司までの夜行列車では、バーの勤めが引けた、それと分かる感じの二人の女性が私の席の向かいに乗ってきた。一人は背が高く細長い顔で、もう一人は小柄の丸顔で、年のころなら、高いほうが40、小さいほうが30ぐらい。高校生の僕には大人の女性の歳は正確には判断できかねたが、それでも20代でないことは分かる。

 地方ではホステスも列車通勤なのだ。高校生の僕に安心したのか、客の話をし出した。誰と誰が出来ているとか、お金に絡んだ話しも出てきた。これから入っていく大人の世界の一端を垣間見るようだった。そんな不安な気持ちを乗せて、夜の町を汽車は走り過ぎて行く。


熊本に着いたのは、昼を過ぎ、まだ夕方と言うには早い時間だった思う。駅前は意外にも寂しく、町の中心に向かって路面電車が出ていて、そこには熊本城があり、デパートもあり、繁華街になっているということだった。

 ともかく電車に乗った。しばらく行って、白川という川にかかった大きな橋を過ぎ、カーブしたところで、『貸間・下宿斡旋』という不動産屋の看板が目に入った。次の停留所で降りた。中心の繁華街で降りても、また広島のように泊めて貰えないかも知れないと思ったのだ。結果としてその不動屋さんの家族に帰るまでの2ヶ月お世話になるのである。(この話はいずれまた別の機会に)


嫁がした娘に会いに行く二人連れ、私のまだ知らない生活の匂いを漂わせたホステスの二人連れ、いつまでも私の脳裏に焼き付いている。

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