"あの"部屋

あの部屋というのはそう、『取調室』だ。

 前にネットで私人逮捕をしても逮捕された人がケガをしていたらそれは傷害罪として自分も逮捕されると聞いたことがある。あの押し倒した時にそれが適用されたのか...不安がよぎる中刑事の方と思われる人が中に入ってきた。

「いや~すみませんねぇ。応接室がすべて使用中になってましてここ使わせてもらったんだあ」

「えっ、あっ、そうだったんですか...てっきり逮捕でもされたのかと思いまして...」

この後も事件の概要などを聞かれあっという間に一日が終わってしまった。聞かれている途中もコミュ障を発揮しており、担当の刑事の方にその挙動不審さから少し怪しまれていたみたいだが話していくうちにそれもなくなっていった。事情聴取も終わりに差し掛かったところで刑事さんからこのような提案をされた。

「被害者の女性がぜひお礼をしたいと言っておられるので連れてきてもいいかな?」

「ええ...はい、わ、わかりました」

一瞬戸惑ったが断われないタイプということにも影響され了承してしまった。

「じゃあ呼んでくるからここで待っててね」

そう言うと鉄の無機質なドアを開け取調室から出ていった。

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