国王と大臣〜疑念〜

 ここは首都アザレア。一方その頃、国王ラボンシルト=B=アザレアは城の執務室で、他の側近の者と話をしていた。


 だが、侍女からハンスがここに向かっていると聞きラボンシルトは話をやめ、側近の者は執務室を後にした。



 ラボンシルト=B=アザレア、年齢は35歳、紫と緑のメッシュがまだらに入った銀色の癖毛で短めの髪。前髪は眉毛にかかる程度で纏まりがない。琥珀色の瞳で目は若干細く右目の下に小さなホクロがある。


 幼少の頃からラボンシルトは、高慢な父親の姿をみて育った為、自分は誰よりも優れていると思うようになった。


 そして、感情の起伏が激しく自我、独占欲が強く、表と裏の顔を持ち、その性格は国色にも現れている。


 表向きは国民の為の政治を行い、観光地を設けたり魔法兵器や魔道具を開発し製造した物を売って利益を上げているが、これらは全て程度の低い物であり、裏では闇取引が行われている。


 そして、高度な魔法兵器や魔道具などを開発し製造した物を売り捌さばいており、莫大な利益を得ている。



 ラボンシルトは執務室の玉座に座りながら、ハンスが来るのを待っていた。


 すると、扉が開きハンスが執務室の中に入って来た。


 そして、ハンスはラボンシルトの前まで来ると一礼をしルナソルから聞いた事を報告した。


「ハンス!それはどういう事だ!?」


 その報告を聞きラボンシルトは怒りを露わにしていた。


 本来なら、龍の里の封印が成功した後、邪魔なドラゴナードを始末するはずだった。


 だが、ドラゴナードの討伐に向かったはずの四天王のネフロスとラゴスが、ルトルシニア国の四天王ガディスに倒された。


 その後、ラザリオとルナソルがガディスの足取りを追い倒そうとしたが、ガディスとドラゴナードにラザリオがやられ、ルナソルも怪我を負い城に逃げ戻って来た。


 ラボンシルトはその事に対し腹を立てていた。


「陛下、申し訳ありません。しかしながら、ルナソルの話では、あの場を切り抜ける為には、ああする他に手立てがなかったとの事です」


「私が言いたいのは、その事だけではない!クッ、ルナソルの報告では、今回の件でルトルシニアがドラゴナードと手を結ぶ……いや、それだけではない。何故だ?龍の山里は結界を張り封印したはずだ。それなのにドラゴナードの者が魔法を使っていたと、そうルナソルが言っていたんだったな」


「はい、ドラゴナードは龍がいなければ魔法が使えないはず。それなのに使えたと……それと、これは先にルナソルから聞いていた話なのですが。ルドバ付近の森でネフロスとラゴスがガディスに凍らされていた件で、腑に落ちない点がいくつかあると」


「腑に落ちないとは?」


「それは、ネフロスとラゴスの凍らされ方が、普通の状態ではなかったとの事。そして、先程聞いた話では、ラザリオとルドバ付近の森を調べた結果、ドラゴナードが魔法を使った痕跡こんせきがあったとの事。それだけではなく……」


「ハンス、どうした?」


「……ああ、いえ申し訳ありません、あまりにも信じられないような話でしたので。……ルナソルは、ラザリオと話をしていて、凍らされていたネフロスの攻撃の体勢がおかしく、まるで攻撃を仕掛ける前に、時が止められていたように、不自然な体勢だったとの事です」


「今、何と言った?時が……だが、そんな芸当が出来る者といえば!龍神バルロスしかいないはずだ!」


「はい、ですので、信じられないのです。あの場にドラゴナードの者を助ける為、龍神バルロスが現れたのであれば、その周辺に配置していた配下の者や兵達が気付いていてもおかしくないはず。ですが、その事に付いて聞いても誰も龍神バルロスの姿を目撃した者はおりませんでした」


「うむ、それは確かに変だ。……ルナソルは他に何か言っていなかったのか?」


「いえ、その他の事に付いては何も聞いてはいません。ただ、ラザリオを診断した医師から報告があり。ラザリオの身体の一部から闇属性の魔力?のような痕跡が微量に感じられたとの事です」


「闇属性!?ドラゴナードの者の中に闇魔法を操る者がいたと言うのか?」


「それは、分かりません。ですが、ルナソルの報告では、闇魔法を操る者の事に付いては聞いておりません。それにその医師は不思議な事を言っておりました。ラザリオから感じられる闇属性は魔力ではないかもしれないと」


「それはどういう事だ?魔力ではない……そうなると、他の闇属性の力という事か?」


「断言は出来ませんが、恐らくはそうかもしれません……そういえばルナソルが、ガディスやユリナシア達以外にも、見慣れない2人の男女が一緒にいたと言っておりました」


「ほう、なるほど。その2人に付いて詳しく聞きたいと思うが」


「陛下、申し訳ありません。その2人の事に付いてはただその場にいたとしかルナソルから聞いておりません」


「うむ、それは変だ。何故ルナソルはその2人の事に付いて話さない……まるでその2人の事に付いて知っていてわざと話さないように思えるのだが」


「まさか、ルナソルが……」


「ルナソルがその事に付いて、ただ単に報告する必要がないと判断したのか。でなければ……」


「しかし、ルナソルがわざとその2人の事を話さないなどあり得ましょうか?それに、この国を裏切るなど……」


「そうでない事を祈りたいが。だが、あながちあり得ない事ではない。ハンス、その2人の事を早急にルナソルに聞いて来い。いいな!」


 ラボンシルトがそう言うと、ハンスはその場で一礼しルナソルがいる救護室へと向かった。


 そしてラボンシルトはそれを確認すると執務室を出て王の書斎へと向かった。

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