療養と不安

 ここは鉱山の街エルラスタ。あれから涼香達5人は破壊され崩れた鉱山付近で少し休んでいた。その後ユリナシアが、近くの衛兵を呼びに行きクルテルとガディスを屋敷に運ばせた。


 その後、屋敷に着くなりユリナシアは直ぐに医師を呼びクルテルの治療をさせた。


 そして医師はユリナシアに、ガディスの治療をどうするのかと聞いた。


「ユリナシア様。このガディスはルトルシニア国の者ですが、如何いたしましょう?」


 そう言われユリナシアは少し考えたが医師にガディスの治療もするように言った。


 その後、医師は2人の治療を終えると、しばらくは動かず安静にしているようにと、ガディスとクルテルと近くにいたユリナシアに言った。


 そしてガディスとクルテルは、ここでしばらく療養する事になった。



 翌日、ガディスはかなり無理をしていたせいで、昼近くまで眠っていた。


 そしてガディスは、目を覚まし起きると辺りを見渡してみた。


「ん?そうか、ここはユリナシアの屋敷だったな」


(それにしても、良く眠っていた。魔力だけではなく体力の方も、かなり消耗していたらしい。だが……クッ、不甲斐ない。もっと俺に力があれば)


 そう思いながらガディスは右の掌を見ていた。



 一方、クルテルはベットに横になりながら色々と考えていた。


(ふぅ、ラザリオとの戦闘により、かねてよりたくわえていた魔力が、消耗してしまいました。魔力が回復したとしても、体内に魔力が蓄積ちくせきするまでには、かなり時間がかかるでしょう)


 そう思いながらクルテルは起き上がり、


(涼香や要の事とガディスの事。そして、ルトルシニアが私達種族と手を組むかもしれないという事を、ルナソルは国に戻り、恐らくそれら全てを話したでしょう。ですがユリナシア様の、あの時の判断は間違ってはいなかったはず)


 そう思いながらクルテルはベットに座り靴を履いた。


「ここでこんな事を考えていても、気が滅入めいるだけですね。さてさて、全然動けない訳でもありませんし、お腹も空いてきましたので、何か軽く食べてきますか」


 そう言いながらクルテルは立ち上がり、まだちゃんと歩けない為、ゆっくりゆっくりと歩き食堂へと向かった。



 場所は変わり、ここはシルヴァが寝ている部屋。ユリナシアと涼香と要は、シルヴァとゲラに鉱山で何があったのかを説明していた。


「……この街の数ヶ所にあるアクアリュウムの鉱山の内、最も街と隣接している方の鉱山が破壊され崩れてしまった。という事か」


 シルヴァは真剣な面持おももちでユリナシア達を見ながらそう言った。


「シルヴァ。鉱山はまだ数ヶ所、残っています。ですので、それは何とかなります。問題は、そこではないのです」


「ユリナシア様。その問題とは、ブレグラン国の四天王の2人の事でしょうか?」


「ゲラ。ええ、恐らくあの2人はネフロスとラゴスの件でガディスを追いここまで来て、偶然あの鉱山でガディスと私達を見つけ、後を付けたのだと思います」


「ユリナシア、多分そうなのだろう。その話を聞く限り、その状況下ではルナソルとラザリオを逃すしか、他に手立てはなかったのだろうな。だがしかし、2人を逃した事で、これから我々がやろうとしている事と、こちらの今の状況を何処まで知られたかは分からないが、ルナソルがその事を国に報告するのは間違いない」


「そうですね。恐らくブレグランはルナソルからその話を聞き、直ぐにでも何かしらの手を打ってくるかもしれません。ですので、こちらも何か策を考えなければと思ったのですが」


「確かに、その方がいいだろう。……ふぅ、涼香。申し訳ない。バルロス様と話がしたいのだが」


「分かりました。待ってて下さいね」


 そう言うと顔が一変し涼香とバルロスが入れ替わった。


「シルヴァ。今の話は聞いていた。それで?」


「バルロス様。確認したい事があるのですが。本来ならルトルシニアは我が種族にとって最も因縁のある国」


「ん?因縁があるって、どういう事なんだ?」


 要は不思議に思い聞くと、涼香バルロスはそう聞かれ考えていたが少し間を置き話し出した。


「うむ。要に涼香。この事に付いてお前達は、何も知らないのであったな」


 そう言うと要はその場で頷き涼香は心の中で頷き、涼香バルロスはその事に付いて重い口を開き話し始めた。


「ルトルシニアとの因縁とは……」

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